第2話 「引き継ぎってレベルじゃない」
「じゃ、引き継ぎ始めるか」
軽い。
とんでもなく軽い。
絶対神ゼアスは、腰をさすりながらあくび混じりに言った。
「え……あの……引き継ぎって……
ど、どれくらい時間かかるんですか……?」
オチルは恐る恐る手を挙げた。
声が完全に震えている。
「んー?
そうだなぁ……」
ゼアスは少し考える素振りを見せてから、笑顔で言った。
「無限」
「無限!?」
その瞬間、オチルの視界が歪んだ。
「まずは天候管理な」
パチン、とゼアスが指を鳴らす。
目の前に広がるのは、
雲・雨量・気圧・台風・雷・雪・砂嵐――
世界中の天気を示す立体映像。
「雨降らせたり止めたりするだけだ。簡単だろ?」
「ど、どこがですかぁ!?」
オチルはすでに半泣きだ。
「えーと……この国に……雨を……」
ポチ。
次の瞬間、別の大陸で豪雨警報が鳴り響いた。
「あ、あれ!?違う所に……」
「細かい事は気にするな」
ゼアスは爽やかに親指を立てた。
「次、宇宙監視」
さらに映像が切り替わる。
銀河、星雲、惑星、彗星、隕石――
気が遠くなるほどの宇宙。
「神スコープで常に見張っとけ。
隕石が来たら、ちょっと進路ずらすだけだ」
「ちょっとってどのくらいですか……?」
「ミリ単位」
「無理ですぅ!!」
「はい次、魂」
ズラァッと並ぶ無数の魂。
「これは天国、これは地獄。
悩んだら地獄でいい」
「そんな雑でいいんですか!?」
「だいたい合ってる」
オチルの倫理観が、音を立てて崩れた。
「で、クレーム対応」
映像が切り替わると、
世界中から飛び交う“祈り”と“文句”。
《神様どうなってるんですか》 《最近世界おかしくない?》 《雨降りすぎ》
「全部読む必要あるんですか……?」
「読むだけだ。返事はしなくていい」
「読む意味とは……」
「最後」
ゼアスが、妙に楽しそうな顔で言った。
「進退管理な」
「し、進退……?」
「生物の進化を管理する部署だ。
基本暇だから安心しろ」
そう言って、ゼアスは一本のステッキを渡した。
進退ステッキ
「変な生物を見つけたら、
進めるか、戻すか、消すか選ぶだけ」
「え……これ……
僕が……?」
「神だからな」
オチルはステッキを持った瞬間、悟った。
(これ……
世界……壊せるやつだ……)
「じゃ、説明終わり」
「えっ!?」
「腰が限界なんでな。あとはよろしく」
ゼアスは立ち上がり、振り返りもせずに言った。
「安心しろ。
最初は誰でも失敗する」
「失敗の規模がデカすぎますよぉ!!」
その叫びは、誰にも届かなかった。
こうして――
ヘタレな神・オチルの激務初日が始まった。
世界が、静かに。
しかし確実に、めちゃくちゃになる兆しを見せながら。




