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5話 夢の中 僕はどぶさらいマスターになる

 読みに来ていただきありがとうございます。

 むくりと起きる。

 いつもの湿った布団ではなく、白く清潔なシーツの柔らかさを感じた。そして、見慣れない木の壁。壁紙はなく、節の浮いた木目が素朴に光を返している。

 白カーテンが揺らぐ窓の奥には、静かで古い街並みがあり、それに戸惑い、ああ、昨日の夢の続きなのか、と気がつく。

 窓を開くと、冷たい朝の風が頬を撫でた。

 どこか甘い香りが混じっていて、それだけで胸の奥が静かに落ち着いていく。

 昨日、あの泥だらけの格好はその日覚えたばかりの生活魔法のクリーンで全身の汚れを取っていた。その魔法の効果は服だけではなく、体もまるで温泉に入った後のようにすべすべになって、匂いまで消える。

 初めての魔法に感動をするとともに急激な疲れで、服を脱ぎ捨てて寝てしまっていた。

 クリーンに使うMPは10くらいなのだろうか。自分のMPが10しかなく、ゼロになったことで酷い疲労を感じたのだろう。その上、どぶさらいの疲れもある。

 ポップアップ表示が現れる。


特殊クエスト終了

MP切れを体験し、限界から成長する

+30exp、MP+12、魔力+3


「……は?」


 一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

 だが次の瞬間、胸の奥に込み上げるような喜びがあった。

 このゲームみたいな仕様に笑みがこぼれる。

 頑張れば、目に見えて成長する。MPがゼロになったのは偶然だけど。でも、限界から成長すると書かれているということは、限界まで頑張れば成長するということだ。


 さて、今日は何をしようか。


 思わず口元が緩む。

 ただの夢のはずなのに、胸の奥が期待で熱くなる。


 軽く伸びをしてベッドから立ち上がる。

 木の床がひんやりとして心地よい。

 昨日脱ぎ捨てた服を拾いながら、僕は小さく息を整えた。

 新しい何かを経験、それもいい。

 でも、あえて、昨日と同じどぶさらいをしたい。

 上がったステータスでどれだけ変わったのか。それと、いきなりどこかに行ってモンスターにやられて死にたくもないので、もう少しステータスを上げたい。


 食事を終えて支度をする。

 宿屋を出ると、受付の女の子が手を振ってくれたので振り返す。異性に手を振りかえすだなんて、いったいいつぶりだろう。まあ、今は同性なんだけど。


 冒険者ギルドの受付に再度どぶさらいの依頼を受けると話をすると、目を丸くして


「筋肉痛とか疲れはないんですか?」


と心配された。

 貸し出された道具を持って、指定された範囲の側溝にスコップを入れて掘り出す。不思議と昨日よりも疲れは少なく、スコップも軽く感じた。

 昨日のようにまた限界まで頑張ろう、装備や不要な服を脱ぎ捨て、力を振り絞った。

 夢の中にまで来てどぶさらいとか、夢も希望もない。でも、僕にはそのどぶさらいの果てになんとも言い難い素敵な何かが隠れているような、そんな気さえした。


 依頼を終えてギルドへ戻ると、受付嬢が目をむいた。

 下着姿で泥まみれの僕を見て、頬を引きつらせる。


「……ちょ、ちょっと! いい加減にしなさい! あなた、女の子なんですよ!」

「え、ああ……すみません」

「すみませんじゃありません! 分かるまで、どぶさらい禁止です!」


 そう怒られながら、僕は思わず笑ってしまった。

 怒鳴られたのに、不思議と嬉しかった。

 誰かに心配されるのが、こんなに温かいことなんだ。いや、本当は誰かに心配されていたことを気づけなかっただけなんだろう……。


クエスト終了

冒険者ギルドのどぶさらい作業の規定量を超える

報酬 +50exp、HP +4、筋力+1、敏捷+1、5000ゴールド、生活魔法[水生成]を覚えた


特殊クエスト終了

頑張った末に冒険者ギルドの受付嬢に怒られる

報酬 精神耐性Lv1


「……精神耐性って、こんな風に付くものなのか」


 肩をすくめながらも、どこか楽しかった。

 いい世界じゃないか。

 感想など頂けると今後の参考になりますので助かります。

 今日は3話分投稿します。

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