4話 現実 夢を見てひどい筋肉痛になるはずがない
湿った布団の中で目を覚ます。
厚い遮光カーテンは全く光を通さず、まだ深夜かもしれないという気さえするが、携帯電話の時計を見ると朝6時。もう起きる時間だ。いつもより、少し早いが……
そして、全身を襲う痛みに、思わず悲鳴を上げる。
誰かにやられたか?
殴られた? 車にはねられたか?
頭の中でいくつもの仮説が弾けては消える。
結局、わからないまま、湿った空気が肺の奥に沈み込んでくる。
息苦しさに耐えかねて、カーテンを引き、窓を開けた。
朝の風が部屋に流れ込む。
冷たい空気が頬を撫で、頭の奥まで澄んでいく。
外には、いつも通りの街並みがあった。ビル、一軒家、騒がしい車の音。
変わらない日常のはずなのに、何故か世界が少しだけ鮮やかに見えた。
ただ風を入れただけなのに、胸の奥が軽くなる。
それがなぜだか、自分でもわからなかった
家族と朝食を食べる。隣の妹のハルカはいつも通り、キャミソールにパンツ一枚のズボラな格好だ。
その妹が横目で僕の顔をじっと見て、
「お兄ちゃん、なんかニキビ減った?」
と言った。
食事前に顔を洗った時はいつも通りのニキビ顔だった。特にニキビなんて減ってないと思うと伝えると、少し妹は納得が少しいかないような顔をしていたが、また食事をとり始めた。
だけど、言われてみれば肌が少しだけ滑らかになった気もする。まあ、妹にニキビ減ったんじゃないかと言われたからそう感じただけだろう。
食事を終えた後も体の痛みに耐えかねて市販の鎮痛剤を飲み学校に向かった。
学校での昼休み、クラスメイトの雑談が耳に入る。
「知ってる? 催眠状態の人に“これは熱したはんだごてだ”って言って、ただのペンを押しつけたら、本当にやけどの跡ができたんだって」
オカルト雑誌で有名な月刊ムーンを片手に笑いながらクラスメイトが話していた。
けれど、その言葉に、夢の中での息を切らし、手を赤くしながらやったどぶさらいの記憶が鮮やかに蘇る。
昨日の夢のどぶさらいは、実際の体を動かしてやったと勘違いして筋肉痛を起こしたのでは?
まさか。
そんな非科学的なこと、あるわけがない。
そう否定しながらも、心のどこかで『あり得る』、いや『そうであってほしい』と思っている自分がいた。
家に帰ると、なんとなく体重計に乗ってみた。
数字は69.5キロ。
昨日より、少しだけ減っている。
現実では何もしていないのに。
まるで、夢の中で一生懸命運動した分だけ、こっちの体がそれを反映するように。
誤差なのかもしれないが、夢の中と同様に運動をしていると体が勘違いして、運動したかのような筋肉痛を起こしているのかもしれない。そうであってほしいな、と自分の2段腹の肉を掴む。
感想など頂けると今後の参考になりますので助かります。
本日はこれで終わりです。
明日、21時ころに投稿します
追記
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