10話 現実 そうだ、ランニングをしよう
コーヒーミルの音が響く音で目が覚めた。
カリカリ削る音とモーターの音はあまり好きではないけれど、削れたコーヒー豆の匂いが後から漂ってくるのは嫌いじゃない。
今日は休みだから、父さんがコーヒーを手間をかけて作っているのだろう。牛乳と半分で割って飲むの、好きなんだ。
カーテンの隙間から差し込む朝日で朝だと気がつく。
ゲームや漫画本が散らばった床を見て、現実に戻ったのだの理解した。
楽しかった、と思う反面、目覚めなければ良かったとガッカリする。猫の宴会はそれほど楽しい時間だったのだと、自覚してしまった。
枕をチラリと見るととうもろこしのようなヒゲが数本あった。こんなゴミまで入り込んでいるなんて……。寝ぼけまなこのまま僕はゴミ箱に、その金色のとうもろこしのヒゲのようなものを捨てた。
普通、とうもろこしのヒゲなんてベッドから出てくるものじゃない。
部屋が汚すぎるんだ。
部屋を見渡せば、床には漫画本、コードが絡まってゲーム機、机にはライトノベルの山と勉強道具、学校から渡された二度とみないだろう授業で配られたプリントの数々。
今日は休みだし、部屋を掃除しよう。
ゴミ袋に次々といらないものを捨てていく。
一年以上見ないもの、着ないものは以後使うことはないらしい。だから、どんどん捨てることにした。
ライトノベルも漫画も紙のページをめくるのが好きなのだけど、かさばる。増えれば当然重いし場所も取る。次から電子書籍にしよう。
そう思いながら作業していると1時間で見るに耐えない部屋がすっきりとした。
今度からこまめに掃除しよう、そう思いながら遅い朝食を食べた。
思い立ったら吉日だ。
昔の人はそう言った。
ランニングをしよう。
デブの三日坊主だろう、と通り過ぎる人は思うかもしれない。でも、今のままではいけない、というのは僕が一番よく知っている。
古今東西、ダイエットはいろいろあるけれど、ランニングに勝るダイエットはない。どんなダイエット食品や薬品のCMも小さく目立たない白い字で、適切な食事管理や適度な運動をしています、と書いているのだ。食事管理は食べ過ぎに注意して、運動だ。運動でカロリーを消費するには持久走だ。筋肉も増やせばさらに消費カロリーを増やせる。
僕はジャージに着替えて、運動靴をきつめに履いた。
学校の持久走は3キロ、あれと同じ距離をゆっくり走ろう。
肌が焼けるような暑さになる手前なのに、胸のあたりがひんやりしていた。
玄関の扉を閉め、ひとつ深呼吸してから歩き出す。自分からランニングするなんて、初めての事だ。
最初の数百メートルは、いつもどおり息が上がった。太ももが張って、脇腹が軽く痛む。
けれど、不思議なことに、そこから先は、体が急に軽くなった。
日の照りを防ぐ街路樹、街の喧騒、人の話し声、それらが少しずつ遠くに感じた。
気がつけば三キロ走りきっていた。
汗は流れているのに、妙に心地いい。
明日も、走れるかもしれない
そんなことを思えた自分に少し驚きながら、家へと戻った。
夏休みまであと少し。
続けられる気が、今日は不思議とした。
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今日はこれでおしまいです。
明日からは1話ずつ投稿になります。時間は21時を予定しています。




