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序章 デブの僕は夢を見る

 今年の初夢は何を見ましたか?

 

 僕は明晰夢というものに憧れている。

 夢の中であることを自覚した上で自由に、自在にしたいことができる。

 鳥みたいに空を自由に飛び回り、好きな食べ物を好き放題食べれて、告白したこともない好きな子とデートができ、嫌いな奴を簡単に殺すこともできる。


 僕が初めて明晰夢を感じたものは、夢の中なのに重力のしがらみから抜け出せず、疲労は感じ、行き交う人は妙に人間臭いし、好きな子とかそういう以前に僕が女の子になっていて、レベル1のザコキャラみたいな存在だった。

 そうだけど、誰にも期待されず、わがままに動いても気にされず、自由だった。

 その自由がなんとも言えず、清々しかった。



 東屋誠。それが僕の名前だ。

 日本の沢山いる小太りモブキャラの一人だ。

 無難な小学生生活を卒業し、中学生になり、部活に入らず、帰宅部仲間で友達と呼べる人はおらず、放課後は自室にこもりゲーム三昧をし、宿題に追われる日々を過ごしている。

 学校でクラスカーストの上位の人たちを見て、自分もこうなりたいと思ったり、こんな女の子と付き合ってみたいと思ったりすることもあるが、不相応なのはわかっていた。

 身長も150センチメートルで体重は70キロ、ニキビもある。運動は当然苦手。勉強も平均より少し下。いいところとかない。趣味もゲームや漫画に可愛い絵のついたライトノベルの読書。

 クラスメイトからは雑に扱われ、半ばイジメのようなことを言われていた。例えば。掃除当番を一人でやらされていた。


「東屋なら文句言わないだろ」

「デブのダイエットに貢献。俺たち優しいだろ。ハハハ」


 さらには教員から頼まれた雑用は巡って僕がやらされていた。


「お前のダイエットを手伝ってやってんだよ、あぁ? なんか文句あんのか?」


 クラスメイトのカーストの上位で乱暴な鮫島と板垣が筆頭になって、僕をこき使い、そして馬鹿にしていた。

 そんな感じで僕の放課後の時間は潰されて、グラウンドで部活を始めるクラスメイトを教室の窓から見下ろしていた。

 本当はあんな風にみんなと仲良く部活に明け暮れたい。そう思っても、デブの僕には無理な話だった。

 だから、僕はクラスメイトから雑に扱っていい人間だと思われていた。

 そのことについても、自分の容姿や趣味からすれば仕方ないことだ、と思っていた。でも、やりすぎだとは思っているけれど、怖くて、声が出せなかった。


 いつの間にか、こんなに卑屈になってしまった僕は、このまま大きくなったら、ろくな人間にならないような気がした。

 親もそれを気にしたのか、痩せるか、勉強をもっと頑張るかどちらかやりなさいと迫ってきた。なんらかの自信をつけてほしい、そういうことなのだろう。

 ちなみに両親と、二つ下の妹は見た目がいいし、頭も良かった。まあ、妹は僕の2倍の時間勉強をする上にプログラミングも好きで遊びながら勉強していた。

 だから、つまるところ、この体型もこの頭の悪さも僕の怠慢や趣向によるものなのだ。自分のせいなのだ。自信がないからだ。


 ゲームをしながら、思春期の僕は思うのだ。

 親の勧められたレールに従って過ごしたくはない。勉強もダイエットもそうだ。

 でも、結局、この遊びも、誰かのレールに敷かれた遊びに過ぎない。

 コントローラを置いて、外を眺める。行き行く自動車や忙しそうに歩くサラリーマン、そこで生活を営む人々。

 このままでいいのだろうか。

 もっと自由な生活をしてみたい。

 遠くの緑の残る山を見つめて、自給自足のキャンプをする姿を想像し、でも、そういうことではない、と頭の中の考えを散らした。

 うまく言葉にならないけれど、このままではいけないというのだけわかっていた。


 そんな思いが強くなり、季節は夏になる。

 そして、ぼんやりと感じていた夢で、風を感じ、日光の暖かさ、町人の声や小鳥の鳴き声が、しっかり聞こえ、意味を感じ取れた。

 不思議な夢の中で初めて意識を保ったのだ。

 感想など頂けると今後の参考になりますので助かります。

 本日は5話分投稿します。


追記

 内容に加筆、訂正しました。

 ストーリーの大筋が変わるような変更はしておりません。

 評価、ブックマーク、リアクションなどありがとうございます。執筆の原動力になっております。

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