14.戸惑い②
「やっぱり……だめ…?」
「……いいよ」
本当に、甘いな俺も。
大会の日、あのバスの中でした会話を思い出す。
これは確かに秀弥に指摘されるわ。
自覚はある。彼女に甘いことも何よりも気にかけてしまっている自覚も。
普段は大人っぽい表情を浮かべる彼女が、俺の言葉や行動で子どもらしく笑ってくれることがたまらなく嬉しくてもっと色々な表情を見たいと思ってしまう。
もっと笑顔を見せて。もっと幸せだと感じて。できることならずっと俺の隣で。
これはきっと、ただの庇護欲。
たまたま弟と年齢が一緒で、何かと気にかけていたら彼女も俺に懐いてくれて。
実の弟は甘えることなんか滅多にないからそれも新鮮で。
そんな些細な偶然の積み重なり。
サラリ、閉じられた瞼にかかる前髪をそっと退かす。
規則正しい寝息をたてて俺のベッドで眠る桜ちゃん。限界が近かったのだろうか、ベットに横になった途端眠ってしまった。
「安心しきった顔してさぁ……」
それなりの時間を彼女と過ごしてきたつもりでいるけれど、寝顔を見たのは初めてな気がする。
寝顔はまだしっかり幼い。
誰かに甘えたい歳だろうに……。
「寂しい、か」
その感情を吐き出せるようになったことを喜ぶべきか、そう感じさせてしまった俺の行動を悔やむべきか。
明日は土曜日。母さんも仕事はないと言っていたし、桜ちゃんも京香も保育園はお休み。今夜もう少し頑張れば明日一日自由に過ごせるくらいの時間は作れる。
そうと決まればあと少しだけ頑張ろうか。
その夜の布団は寒さなんて感じないくらい暖かかった。




