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僕の命をきみに捧げるまでの一週間  作者: 葉方萌生
第二話 初めての経験
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目覚め

「うぅ……あたま、いたい」


 目が覚めた瞬間に頭痛に襲われるのは、よくあることだった。

 もともと低気圧に弱いのもあって、今日は雨かな、なんて思いながら瞼を持ち上げる。


「……て、え?」


 目が覚めて私が目にしたのは、見慣れた部屋の黄色い花柄の壁紙——ではなく、無機質な白い壁だった。見間違いかと思って、何度も目をぱちぱちと瞬かせる。でも、状況は変わらない。私はなぜか、知らない部屋にいた。


「どういうこと……?」


 誰もいない部屋に響く、当然の疑問。本当に、何がどうしたっていうの? これは夢? そうじゃないと、説明がつかないよ。

 混乱する頭で部屋を見回すと、なんとなくこの部屋が男の子の部屋なんじゃないかって気がしてきた。まず一番に目についたのは、大きな木製の本棚だ。床から天井まで、ずどーんと壁に沿って鎮座している。棚に収められているのは雑多な文庫本や単行本の数々。近づいてタイトルを見てみると、どれも小説のようだった。


「すごい読書家なんだなあ……」


 って、感心してる場合じゃない。

 えっと、他に何か特徴的なものは……。

 ぐるりと部屋を見回しても、どこにでもありそうな普通の子供部屋だとしか感想がない。勉強机は私が使っているのと同じように、小学生の時に買ってもらったようなお馴染みの木の机だ。机の棚には「数学I」「数学A」「国語」「物理」「英語」「化学」の教科書と参考書が置かれている。あ、これも私の部屋にあるやつだ。教科書の出版社は違うけど、どうやらこの部屋の主も高校生らしいということが分かった。

 部屋の中にはテレビなどはなく、テレビゲームはしない派なのかな? と勝手に予想。といっても、ただ部屋にないだけでリビングのテレビではしてるのかもしれないけど。

 なんて、勝手に部屋の主について妄想を繰り広げる。なんで私、ちょっと冷静なんだろう。

 もしかしたらまだ自分が夢の中にいるって思ってるのかな。だとしたらいい加減、これが現実だってことを認めなくちゃいけない。


「さっきまで何してたんだっけ」


 少しずつ頭が冴えて来たところで、部屋の観察よりも自らの行動について振り返ってみる。

 もしかして、男の子の友達の家で遊んでて眠りこけちゃった……? と一瞬不埒な想像をしたが、そんな記憶はない。第一、高校に入学してから男の子の友達なんてまだできていない。


「中学は……途中まで行けてなかったし」


 ふと頭をよぎる過去の記憶を、無理やり遠くへと押し込めた。あまり思い出したいことではない。とにかく私には、仲の良い男友達なんていないのだ。


「じゃあ、もしかして、連れてこられた……!?」


 もはや止まらない妄想はとんでもない結論へと私を導き始める。自分の足で他人の家に来た記憶がないのなら、誰かに強引に連れてこられたと考えるのが妥当だが、それすらも何も記憶がない。たとえばほら、サスペンスドラマでよくあるような、学校帰りに、黒ずくめの男から口に布を押し当てられて意識を失う、みたいな。


「いやあ、ないない。ありえない。誰かに口を押さえられた記憶もないし」


 さっきからどうして独り言を言っているのだろうかと疑問に思われるかもしれないが、こうでもしないと、とても冷静でいられないからだ。

 ……ふう。

 一度頭を冷やそう。

 目を閉じて、自分の今の状況を整理してみる。


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