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僕の命をきみに捧げるまでの一週間  作者: 葉方萌生
第五話 いちばん近くて、いちばん遠い
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終わりのひととき

 運動会の一日は、予想もつかないほど盛り上がった。

 小学校や中学校とは全然違う。各ブロックが一体となって競技に取り組む。応援だって盛大で、自分が競技に出ていない時でも、チームの一員として頑張っているという自覚が生まれた。

 一番の見所である応援合戦では、男子の応援団の舞に続き、女子のチアリーディングが運動場に華を咲かせる。瑛奈は、朝の緊張を感じさせないくらい楽しそうに振り切って踊っていた。僕は温かい拍手を送る。今日まで大変だった練習を乗り越えて、踊り輝く彼女がとてもまぶしかった。

 昼休憩を挟み、午後からはいよいよ一年生のダンスの時間がやってきた。

 ブロック関係なしに、全員で一丸となってひとつのダンスを披露する。曲は何曲か組み込まれており、メリハリのある動きもあれば、滑らかな動きが求められる場面もある。

 僕は練習通り、必死に手足を動かした。他の子に比べると多少ぎこちないが、今までで一番上手く踊れたとは思う。

 ダンスが終了した後、会場に響き渡る拍手を聞いて、心底ほっとしていた。

 美雨が苦手な運動を、なんとか最後までやり切ることができた。

 すべてのプログラムが終わり、僕たちが所属している赤ブロックが優勝した時には、クラスのみんなで大盛り上がりした。


「お疲れ美雨。ダンスうまかったよー!」


「ありがとう。瑛奈のチアもすごかった。本当に、たくさん練習したんだね」


「まあね! 本番めちゃくちゃ楽しかったからやって良かった!」


「私、瑛奈のチアこっそり動画撮ったんだ〜」


「え、あんた運動会中にスマホ持ち歩いてたの?」


「うん。普通じゃないかな?」


 くるりと大きな瞳をこちらに向ける和湖は、悪さを知らない子猫のようで末おろそしい。

 このあと、一年一組のみんなで打ち上げに行こうという話になった。

 開始時間は午後六時から。もしかしたら途中で美雨と入れ替わるかもしれない。

 でも、あの花火大会の日と同じように、美雨にもみんなと一緒に運動会の終わりのひとときを満喫してほしかったから、ちょうどいい。

 美雨の弾けるような笑顔がまた頭の中に浮かぶ。

 これからも、少しでも長く美雨と関わり続けたいし、少しでも多く、美雨のことを笑顔にしたい。

 自然と彼女のことを考えている自分が、中学時代に人目を気にしているばかりだった頃と比べると、全然違っていることに気づく。

 僕は変われるんだ。

 他人に嗤われてばかりだった自分でも、こんなふうに誰かを笑顔にしたいと思えている。

 それだけでもう、美雨には伝えきれないほどの感謝をしていた。

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