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吸い込まれる

 誰かと人生を入れ替えたいと思ったことはあるだろうか。

 僕は何度も、願ってきた。

 自分じゃない誰かになりたい。

 教室で楽しそうに笑うあの人は、背中から羽が生えたように自由に人生を飛び回っている。

 まだ会ったことのない、性別も違う誰かになって、今までやれなかったことをやってみたい。

 僕が僕であるゆえんがこの身体にあるのだとすれば、誰かの身体を借りて、新しい自分に生まれ変わりたい。

 僕はまだ何者でもないはずだから、誰にだってなれるはずだ。

 明日はきみと、入れ替わっているかもしれないと思うと、僕の心は想像するだけでふわりと軽くなる。

 僕は、無理して僕を続けなくていい。

 それだけで救われることがある。

 だから僕は、今日も誰かの人生と、少しだけ入れ替わろうと思う。

 晴れた日にさらさらと流れていく川を橋の上から眺めながら、目を閉じて、強く強く、請い願う。

 どうか僕に、別の人生をくださいっ!

 男でも女でも、子供でも大人でもいい。

 もう一度、新しい日々に連れて行ってください。

 まばゆい光に包まれて、水が流れる音が、ふいに断ち切られる。

 ホワイトアウトする視界の中で、僕の身体がにょいいいんと引き伸ばされるような感覚がして。

 僕はまっすぐに、きみの身体へと吸い込まれていった。


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