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連載目指したいやつ

異世界に来た底辺作家〜スキル【小説家になろう】でポイント無双するまで〜

作者: マルジン
掲載日:2024/08/30

人気出たら連載版にするお試し版です。

「おけおけ。恋愛モノがキテると」


バリボリとポテチを食べながら、小説家になろうの攻略法を読み漁る日々。

もちろん、書いてます。

書いてますとも、ええ。


だが読まれないのだ。

PV?

パノラマビューの略かな?


ブクマ?

……ぶ、ぶくぶく太ったマラソンランナーの略かな?


とにかく読まれないから、攻略法を探しつつ、小説をちまちまと投稿しているわけだ。



さて、小説家になろうのランキング踏破法は、完璧にインストールできた。


まずは、人の多い時間帯めがけて予約投稿をしてだな……。


「あれ、あんだ、これ」


PCモニターの異常かとも思ったが、これはヤバいかもしれない。

視界がぐにゃぐにゃするだけでなく、体に力が入らない。


ガシャン――。


キーボードに頭を打ち付けた。

背筋をのばすこともできないし、前を見ることもできない。


ヤバい、これはなんかおかしい。


そう思ったら普通はスマホを探すだろう?


チッチッチッ、甘いな。

底辺作家歴5年ともなれば、マウスを握るのだ。

画面が見えないけど、適当に左クリックを連打して、なんとか予約投稿しようと試みる。


そして……意識を失った。




「おい(あん)ちゃん、おい」


横っ腹を小突かれるような違和感を覚え、ハッと目を覚ました。


「おーい」


声の方に視線をやると、そこにはおじさんがいた。

叔父ではなく、おじさんだ。

髪がボサボサで、無精髭で……革の胸当てに剣!?


「おいったら」


ガスッ――。


おじさんに脇腹を蹴られ、体がへの字に曲がった。

どうしてだか俺は、地面に膝をついて座り込んでいる。


たしか、PCの前にいたはずなのに。


「頭イッテんのか?」


「いえ、正常です」


「おお、喋った」


また蹴られそうだったので正常だと答えたが、本当に正常なのか?


俺は辺りを見回した。

アスファルト舗装されてない、むき出しの道。

酒場やら商店やら雑多に配置された店店。

そして目の前の建物の上には、()()()()とこう書かれている。


「冒険者ギルド」


「あ?ああ、そうよ、ギルドの前だぜ。邪魔だからどっか行きな」


ここはさしずめ、ナーロッパ。

小説家になろうにおける、テンプレでありお約束の一つ。

ナーロッパじゃないか。


「もしやアナタは冒険者さんですか?」


「ああそうだ」


「やはり。その胸当て、使い込まれた剣、血のついたブーツに、いかめしい顔。C級冒険者ですね!?」


「……な、なんで分かった」


B級以上から、だいたい品性が良くなる。

見た目にも気を使い始め、やさぐれから、遊び人風にシフトチェンジしてくもんだ。


なろうってのは、そういうものなんだ。


ふむ、ここは小説家になろうにおける、異世界テンプレを踏襲しているわけだ。


であれば、俺にはあるはず。


転生・転移者特典の神託スキルがな!


俺は駆け出した。

すべて分かる、手に取るように分かるぞ。


冒険者ギルドにて、鑑定を行う。

それから俺のスキルに全員が腰を抜かして、なんか無双を始める。

意表をついたパターンなら、貧相な鑑定結果になるだろうが、その場合はおおよそ、俺がスキル開発をすればいいのだ。


なろう底辺作家歴5年を、ナメてもらっちゃあ困るね!


バタンッ――。


「鑑定お願いしますッ!」


俺は受付へと勇み行く。

ギルド内の視線を一身に浴びながら、主人公然とした態度でな。


「か、鑑定ですか、どうぞ」


受付嬢が差し出したのは、これまたド定番の水晶玉だった。


よし、これで俺のスキルがわかるぞ。


ソっと手を乗せてみると、水晶玉がボヤーと光る。

そして……ん?特に何も起きないだと?


水晶玉が光った後は、特に何も起きなかった。

これでは、ぼんやりと明るい玉を触ってるだけの、いきがった変な男になってしまうじゃないか。


水晶玉から手を離すタイミングもわからないし、とりあえず黙って受付嬢を見つめていると、べべーッと変な音がした。


なんかファックスみたいな音だなあと懐かしく思ってたら、受付嬢は手元をゴソゴソして、何かをビリッと破り、俺に差し出してきた。


それは、文字が書かれた1枚の紙だった。


「鑑定が終わりました。あの、もう離していいですよ」


「……はい」


俺が手を離すと、急いで水晶玉が回収された。

泥棒だとでも思われたのだろうか。


気を取り直して、受付に置かれたレシートみたいな紙に目を通す。


そこに書かれていたのは、ステータス表だった。

体力やら年齢やら名前やら色々書かれてて、その一番下には……あった!


「スキル【小説家になろう】か。ふむふむ」


【小説家になろう】ねえ。


そんなスキル、あったっけ?


普通は【剣聖】とか【大賢者】とかそんなんでしょ。


なんだ【小説家になろう】って。

ただのサイト名じゃないか。


「スキルの説明なら、すぐ下にありますよ」


困った顔をしていたら、受付嬢が助け舟を出してくれた。

言われた通りにスキルのすぐ下に目をやる。


なるほど、大雑把ではあるがスキルの説明が書かれているな。


内容はと……。


【小説家になろう】


HinaProject Inc.が運営する、投稿型小説サイトを異世界で運営することができる。


システム改変、規約改変はスキルホルダーの自由裁量。


ただし、小説家になろうの運営理念にそぐわない場合は、上記の限りではない。


スキルを使用する場合、魔力を込めて「ログイン」または「なろう」と詠唱する必要がある。


異世界にはインターネット、PC等が存在しないため、スキルホルダーは別の媒体を、決定しなければならない。

別の媒体は、一度決めたら変更不可。



ふむふむ。


「これ、意味わかりますか?」


一応、受付嬢にも確認してみたが、首を傾げている。

やはり分からんよな、だってここ異世界だし。


俺は日本で、5年もの歳月を費やして、なろうと向き合ってきた。

だからほとんどのことは理解できる。

ただ最後がなあ。


PCがないから別媒体を用意しろと言われても。

しかも、一度決めたら変更不可だもんな。


……どうしよう。


「小説家さんなんですか?」


うんうんと唸っていると、受付嬢が質問してきた。

レシートみたいなステータス表を見て、疑問に思ったのだろう。


【小説家になろう】だもんな。

小説家だと思うよなー。


ただの底辺作家なんですよ俺、なんて言いたくないし。


あ、いや待てよ?


底辺でも作家は作家だ。

見向きもされない小説を山のように書いていたわけだが、書いてるってことは作家だよな。


評価されなきゃ小説家とは認めれない、なんて法律ないでしょ?

義務教育でそんなこと習ってないし。


てことは俺、小説家じゃん。


「……まあ、そっすね」


「へえー、それなら冒険者登録は不要ですよね?」


「……え?」


「だって小説家なんですよね?冒険者になるんですか?」


「あー」


たしかに。

冒険者には……ならないっていうより、なれない。

体が頑丈ってわけでもないし、剣は触ったこともないし、喧嘩もしたことないし。


冒険者が不向きってことは、俺が一番良く分かってる。


うーん、てことは必然的に小説家になるしかないよな。


スキル【小説家になろう】だし?

小説書けって言うんなら、いくらでも書ける自信はあるし?評価されるかは別だけど。


「そうですね、冒険者は止めときます」


「はーい」


ポイッ――。


受付嬢は、俺のスキル表を丸めて、ゴミ箱へと放り投げた。

いやいいんだけどさ、なんか切ないわ。

こっそりと捨てたらいいじゃない。

ゴミのように捨てなくても……まあゴミか。


また笑顔を貼り付けてこちらを見ているし、別に悪意があってのことではないだろうからな。

うん。


……うん?


ゴミか、ゴミなのか!


「ちょっと、質問なんですけど」


俺は受付嬢の答えを聞いて、PCやスマホに代わる別の媒体とやらを決めた。


そもそも小説家になろうは、インターネットと、インターネットに流れる情報を出力する装置 (要するにPCとスマホ)によって成り立っている。


それなのに、俺のスキルが【小説家になろう】ということは?

インターネットの代わりになるものが、この世界にはちゃんとあるってことだ。


日本にあってこの世界にないもの、この世界にあって日本にないもの。完璧とは言えないが、なんか代替できそうなもの、といえば、恐らく魔力だろう。


では魔力を使って情報を流せたとしよう。

何に流すのか?それが一番重要だ。


PCやスマホは、作家と読者を繋ぐ媒体なのだ。


スマホは常に持ってるし、PCは家に帰ればあるし。

日本にいれば、24時間小説家に()()()に触れることができるわけだ。


それに代わる物は何なのか。


そりゃあ、もう一択しかない。


べべーッ、ビリッ――。


今の音が、まさにそれだ。


やっぱり小説といえば紙だ!


さっき受付嬢に聞いたのは、紙の値段とか普及率だった。

俺の鑑定結果を出力して、それでポイと捨てるぐらいだから、大して貴重でもないんだろうなと思ってら、やっぱりそうだった。


メモ帳とか、塗り絵帳とか、小説だって、みんなが普通に買える値段で売ってるらしい。


だから紙だ。

常にポケットに入れられるし、そして書ける。

小説家になろうの醍醐味は、小説家になれるって夢があるとこだろう。


だから作ろう、俺と同じ底辺作家を。



俺は受付へと赴き、渋い顔で言った。

「紙、もらえますか?」と。

トイレか?後から気づいて、ちょっと恥ずかしかった。


レシートみたいに細い紙を1枚手に入れて、またギルドの端っこへ。


そして、気合を入れて例の呪文を唱える。


『なろう』


すると紙の上に浮かび上がったのは……。


青と白を基調としたデザイン、某声優を全面に押し出したラジオ告知、そして!エロい広告。


「あれ?なんか見切れてるな」


細長いレシート状の紙なので、とてつもなく見切れてるけど、まあ分かる。

これは小説家になろうだ!


で、どうしたらいいんだろう。

と思いながら、細い画面をよくよく見てみると、サイトトップにあるはずの、ランキングが空白になっているではないか。


いつもならここには、えげつないポイントを稼ぐ猛者が軒を連ねているのに……白紙だと!?


今ならランキングの表紙を飾れる……書きたい、今すぐ書きたい。


はやる気持ちを抑え、紙をスクロールしてみると、スマホのように動いてくれた。

んで、ぺージ下部へと流してみるが、ない。


完結作品、更新作品、新着短編、コンテストやら書報やらがない!


これってつまり、日本で書かれた小説はここに掲載されてないということか。


え?

てことは、1から登録者を増やしてかなきゃならないの?


なるほどなるほど。これは燃えるな、燃えてくるなあ!


俺は、小説家になろうの底に溜まってる、泥水をすすって生きてきた男だ。

小説家になろうの仕様は隅々まで把握しているし、これまでに培ってきた作家脳もある。


今この世界で、小説家になろう上で、まともに小説を書けるのは俺しかいないのだ。


つまり、登録者を増やせば増やすだけ、すべてが俺の読者になる。

PV爆上がりの、ブクマと星のランデブーが始まるということだ。


やるしかないな。


俺はまた、受付へ。

今度は受付嬢ではなくて、ギルド内にいる全員へ届くように、声を張り上げた。


「めっちゃ面白い小説を、ただで読みませんかー!」


「……」


全員がキョトンとしていたが、俺はめげない。

この程度、5年間の修行に比べれば屁でもない。


俺のスキルを明かし、俺の持ってる紙を全員に見せて、娯楽の少ないであろう彼らに、色々と吹き込んだ。

ハーレムもの、恋愛、BL、それからちょいエロまで何でもあるよ!とな。


「おっしゃ、登録してやる!」

「俺もだ俺も!」


そしてこの世界で初めての、小説家になろう登録者が誕生した。

しかも20人も。


「んで?小説はどこにあんだ」


もう待ち切れないようだな、C級冒険者おじさんよ。


仕方ない、俺が今すぐ書き上げてやるぜ。


「えーと、タイトルは雪の道。ジャンルは純文学と」


純文学小説をなッ!

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