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「……そうだね、別れようか」
そう言って私は彼の別れ話を受け入れた。
「ごめんね、そうしよう。君にはきっと他に素敵な人が見つかると思うよ」
「今まで、ありがとう」
私には見つかるかは分からないけれど、あなたにはすぐに見つかると思う。
「あ、そうだ、ごめん。あと1つ、君に嘘をついてたことがある。僕は一人っ子って言ってたけど本当は弟が1人いたんだ。5つ下の……そう、君と同じくらいの歳だ。死んでもう、この世にはいないんだけどね」
「僕と違ってね、小さかった。高校生だというのに、身長が160㎝程しかなかった。それを理由にいじめられてねー」
「小さいって理由だけで弟はいじめられた。かわいそうに」
「弟は、大きくなるために牛乳をたくさん飲んでいたし、背が伸びるストレッチなんてのもやっていた。身長が分けられるのなら弟に分けてあげたかった。身長が高ければ弟はいじめられなかったかもしれない」
「あ、ごめんね。関係のない話を長々と……」
「本当にごめんね、今までありがとうね」
そう言って彼は必要最低限の荷物を持つと、笑顔で私の前から去っていった。
3ヶ月たった今も、時々、彼の最後の笑顔を思い出す。その度に私は罪悪感というものを感じて仕方がないのです。