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そんなことを言われると、私だって彼に話していないことがある。私も誇れるような人間じゃない。
高校入学してすぐ、私は地元の学校だったってこともあり、中学の頃から仲のいい友だちが多かった。運のいいことに、私の後ろの席は親友だった。
そんな私は、調子に乗っていた。
私の隣の席は小柄で大人しそうな男の子だった。
その男の子に、私は冗談のつもりでこう言った。
「ちっちゃいから、君はチビ太君だね……」
私の発言に親友は大爆笑。他の友だちも同じように笑い、それにつられて周りの子たちも徐々に笑い始めた。
その子と私。お互い注目はされたものの注目のされ方が違う。面白いことを言った私は英雄のような扱い。言われた彼の方はただの笑い者。
彼は、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。彼は遠くから来ていて同じ中学校の子がいなかったらしい。だからか、私に何も言い返してこなかった。
その時の私は、悪いことをしたつもりはなかったから反省することもなく、むしろ、「入学早々 笑い取れて最高!」と上機嫌だった。
私が彼のことをチビ太君と呼んだのはこの1回きりだ。私は、チビ太君と呼ばなかった。
……そう、私は。
男子が面白がって彼のことを「チビ太、チビ太」と呼んで馬鹿にする。彼が言い返さない性格だと分かったからか、徐々に彼らは彼のことをいじるようになった。
アダ名からはじまり、軽いイジりになり、イジりがだんだんエスカレートして、とうとう彼に対するいじめが始まった。
チビ太、チビ太と呼ばれながら、殴られたり蹴られたりする彼。よく物を探す仕草をする彼。おそらく物を隠されたのだろう。
結局、1年間 私は彼がいじめられているのを黙って見ていた。止めもせずにずっと黙って見ていた。
自分がされてるわけじゃないしいいや。
かわいそうだけれど、下手に止めて私がいじめられたら嫌だし。男が女に対するいじめって何をしてくるか分かんないし。彼のために私の人生を棒に振りたくない。
いじめているやつが悪い。止めないやつが悪いわけじゃないし、先生だってきっと気付いているくせに止めない。止めるのって簡単なことじゃないしね。
私のせいで彼はいじめられることになったのかも知れないと心のどこかにはずっとあったけれど、「いじめているやつが悪い、いじめが最低な行為なんだ」そう自分に言い聞かせて自分の行動を正当化した。
私はそんな人間だ。
100%私のせいだとは思わないけれど、私のくだらない冗談のせいで、1人の男の子がいじめられるきっかけを作ったのかも知れない。
だから、あなたよりもずっとか私の方が人間として劣っている。最低な人間は私の方だ。
いじめられていた男の子が、今どうしているかは分からないけれど、その子がいじめを苦に自殺していたら、私こそ犯罪者の1人だと思う。
真っ当じゃない人間はあなたじゃない。
私の方だ。
あなたは傍観者だけど、戦おうとした。他力本願だろうと助けたいという気持ちはあった。だけど私は助けようとしなかった。自分も少しだけ関わったいじめに対して戦おうとしなかった。他力本願だろうと助けたいという気持ちはなかった。