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「次の日に、担任が朝礼で、△△さんのお父さんが亡くなったとクラス全員に話した。事務的な要件を伝えるように淡々としていた。まあ、あの先生に情なんてものはないと思っていたけどやっぱりか」
「死因は、自殺だったらしい……」
「職場でいじめを受けてたんだって。あくまで噂だけれど」
「△△さんは以降、学校に来ることはなかった。母方の祖母の家に引っ越したらしく、皆とろくにお別れもせずにの転校だった」
「リーダー格だった△△さんがいなくなったことで、○○さんに対するいじめはなくなった。同じようにいじめていた人間も△△さんが怖かったから、自分がターゲットにされるのが嫌だったから仕方なくいじめていたと被害者面」
「結果的にいじめはなくなったから、○○さんにとってはよかったのかな……」
「よかったのかもしれないけど、よくない。誰かの幸せは誰かの不幸せだという言葉を実感したよ」
「因果応報って言葉で片付ければ、それまでなのかも知れない。勿論、△△さんはやってはいけないことをやっていたわけだけど」
「願いどおり、○○さんへのいじめはなくなった。だけど僕は怖くなった……」
「僕が願ったからかな? だから、△△さんのお父さんは自殺してしまったのかもしれない」
「ああ……僕は、人殺しなんだ」
「これが僕さ、僕という人間は自分で行動はしないくせに他人に任せっきり」
「最終的には、僕の願いで人を殺してしまった」
「そ、それって、関係なくない?」
私はやっと口を開けた。今まで、相槌を打つタイミングを見失っていた。
「君以外にも同じ願いをした人がいるかもしれないし、そんな言霊ってアニメじゃあるまいし、君のせいではない」
「そう。僕の願いが直接影響していない可能性もある。少しばかり僕もそうは思うよ。だけどね、僕がいじめをなくして欲しいと願ったのは事実。願ったついでに、△△さんも少しくらい痛い目に合えとも思った」
彼の行動は彼の優しさ上の行動だし、私は彼は責められるようなことは何もしてないとは思うけれど……
「他人の不幸を願うようなんだ僕は。だから、ごめんね」
彼が私と別れたい理由はそれであった。私のことを嫌いになったとかではないらしい。