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「何か、意見ある人はいますか?」
「誰も手を挙げようとはしなかった。こんな所で目立ちたくない。下手なことを言えば、今度は自分がいじめのターゲットになるかも知れないから」
「僕はひっそりといじめている側の人を横目で確認した。反省してるのかな、恥ずかしそうにしているかなと思ったけどそんな風には見えなかった。下を向いて、自分の爪をいじりながら退屈そうにしている。いや、あなたたちが1番関わっている件なのに」
「『なあ、面倒くせーよ。早く終わらせようぜ』
『そうだよ、俺らは、関係ないんだからさ、早く部活に行かせろよ!』そう言って、だんだんイラつく人間も出てきて、解決しようとなんて、ほとんどの人が思っていないから、意見とか出るわけなかった」
「それからも意見は出なくて、委員長も周囲をキョロキョロと見渡すだけで、委員長も進行役として出た以上、誰かを指名したそうにしてたけれど、それはできなかった。いや、教室に流れる空気が、それを許さなかった」
「……結局さ、いじめられてた子がその場に立ち上がって、『私はいじめられてません。この状況の方が私にとってはずっとかいじめです』って言って、解決はしてないけど解決したって結果的になったんだよね」
「いじめてる側にとっても、いじめられている側にとっても、それ以外のクラスメイトにとっても、この時間は何だったんだろう……」
「知らない人はいなかっただろうけど、クラス全員の前でいじめられていることを改めて明かされただけ」
「解決したと、委員長が担任に話しにいくと、担任は、『じゃあ帰っていいぞ』と一言だけ言って僕らは帰ることが許された」
「担任はどのような話し合いが行われ、どのように解決したのかを確かめることなく」
「家に帰ってからも、僕はモヤモヤした気持ちで、自分でも何に対してモヤモヤしてるのか分からなかったんだけれど。担任の行動に対してなのか、いじめている側の態度に対してなのか、あの時間に対してなのか……」
「話し合いが行われたからってモヤモヤしている僕はただの偽善者なのかも知れない。モヤモヤしている、かわいそうだと思いながらもあの場で僕も発言はしなかったのだから」
「勿論、僕のような弱い立場の人間の一言は力を持たなかったと思うよ。軽く流されて、空気読めよと思われ、僕が嫌われて終わりだったと思うけれど。それでも僕は発言しておくべきだった」
「じゃあ、明日改めて、行動すればいいじゃない!過去には戻れないけど取り返すことはできる」
「……そんな勇気、僕は持ち合わせていない。悔しいけど僕はそんな強い人間じゃなかった」
「だから、僕はいるかいないか分からない神様に願った」
「どうか、○○さんがいじめられなくなりますようにってそっと神様にお願いした」
「これもね、人助けで神様に頼んだんじゃない、自分が安心したかっただけだと思う。他力本願、自分で何ひとつ行動していない僕の願いだからか、神様は中途半端にしか、願いを聞いてくれなかった」
「……結果だけ先に言うとね……○○さんに対するいじめはなくなった」
「彼女をいじめていたリーダー格の△△さんがさ、転校したんだ」