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里帰り

作者: 柴犬
掲載日:2024/07/07




 クスクス。




 ねえ。

 ねえ。


 知ってる?



 あの噂。



 クスクス。




「何の噂だよ」



 え?


 知らないの?



 クスクス。



 ほら。


 あの噂だよ。



「いや知らないよ何の噂だよ」


 知らないの?


「知らないよ」


 本当に?


「うん」



 なら教えてあげる。

 昔の古い友人や知人に会う方法を。



 今は会えない人。

 古い友人と知り合いに会う方法を。




 クスクス。




 クスクス。




 クスクス。




 その噂を知ったのは偶然だった。

 そう偶然。

 偶然。


 その噂は古い友人から教えてもらった。

 古い友人

 お盆に地元に里帰りした僕は偶然古い友人に会った。

 懐かしい友人。

 その時に偶然今から同窓会をする事を知り急遽出席することにした。


 中学生時代のクラスメイトとの同窓会に。


 同窓会の通知を知らせる葉書を見てない僕は首をひねった。

 という事は実家に葉書が来たのだろうか?


 何も聞いてないのだが?


 通常なら実家から葉書が来たと年老いた父親から連絡が来るはずだが……。

 忘れてたんだろうか?


 母を老衰で失い軽い認知症に罹った父に酷な話だったか?


 先程里帰りしたばかりの僕を放置して何処かに遊びに行っている父に僕は腹が立った。

 知らない間に遊びに行っている父に。

 空き家になった家に里帰りした僕は憤慨した。


 里帰りする事を一年前に連絡していたのに忘れている事に。

 

 実家の鍵を持っていなかったら野宿する羽目になっていた事に。


 母が居ないせいで埃が溜まり異臭が漂い始めている自宅。

 居ない父に呆れる僕。


 限界集落に留まり続ける頑固者。

 偏屈で口下手。

 口より手が出るのが速い時代錯誤の馬鹿。


 僕が地元を離れる要因の一つになった父。

 父は地元の厄介者だった。

 母が居なければ地元を追われていただろう。



 そんな父に関わりたくないとばかりに姿を現さない近隣の住人。

 

 放置気味の畑の管理を思い出したかのようにやる近隣の住人。

 というか放置しすぎて荒れ地になっている畑に彷徨う住人。

 夜明けと共に起き日没に合わせ就寝する田舎の住人。


 この集落を見捨て上京した僕を嫌悪する住人。


 里帰りする気はなかった。


 だが先の長くない父の顔を見たくなりお盆に帰ると連絡した。

 里帰りした僕に対する此の仕打ち。


 普通に腹が立った。


 これを機に今後里帰りをするのを止めようと考えていた時に会った。

 古い友人に。

 中学時代の古い友人に。

 古い友人に会った僕は同窓会の席で噂を知った。


 そう。


 噂を。



 会えなくなった友人と知人に再会出来る噂を。

 古い友人と知人に会えるという噂を。



 古い友人と知人に会える方法を。


 教えてもらった。

 酒の席での出鱈目を。

 嘘の方法を。


 話半分に聞いた。


 僕は地元に残り続けた友人にお礼を言った。

 

 白髪交じりの古い友人に。

 顔や手に多くの皺が増えた友人に。


「気にしないでくれ」



 ニヤニヤと嗤いながら首を振る友人に奇妙な感覚を覚えた。

 怖気にも似た感覚を。



 

 なぜか。




 古い友人や知人に会う方法を帰りに試すことにした。

 方法は簡単だった。



  深夜一時から三時。


 お盆のみに到着する深夜一時から三時に来る特別な最終電車。

 それに古い友人や知人が乗ってくるらしい。



 あまりにも簡単だった。

 というかあからさまな嘘だと分った。



 しかし物は試しとやってみた。

 笑い話のネタになるだろうと思い。


 そうして僕はお盆の駅で電車を待った。

 無人駅の待合室で待つこと暫し。



「え?」



 警報が鳴り始める。



「まさか本当に?」



 今から電車が来る。


 

 友人が教えてくれた事は本当だった。



 僕は電車を見ようと駅の待合室から出る。

 


 電車が来る

 

 電車が。



 ガタン、ガタン。



 遠くにもかかわらず電車の中で告げられるアナウンスが聞こえる。

 奇妙な事に。




 ガタン、ガタン。



「次は~~きさらぎ~~最終きさらぎ駅です~~」



 見える。

 見えるぞ。


 電車に居る人間が。

 多くの友人や知人が。


 懐かしい……。




「え?」




 その中に父が居た。



 今帰って来たのかよ。

 そう思った。


 その時に父の隣に見知った女性が居た。

 見知った女性。


 正確に言えば生まれた時から知ってる女性。



 母だ。



 死んだはずの母が居た。



 それに先程同窓会で別れた友人の顔が見える……。


 これは……。



 

 



 

 翌朝。


 無人集落の駅で一人の老人の死体が発見された。

 集落最後の住人の。

 


 里帰りすると周囲に告げていた老人の死体が発見された。

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― 新着の感想 ―
コロン様の「酒祭り」企画より読ませていただきました。 おお、きさらぎ駅ですね。 怖かったです。 だいたいホラーって導かれるんですよね〜。 そっちはダメ〜と思いつつ、いかなきゃ話が進まみません。 主人…
[一言] 人生の「終末トレインどこへいく?」 良いアニメですよ~♪ ラストの「老人」は二人? とか考えていた私が通りますよwww
[良い点] 以前拝見した『きさらぎ系』のリメイク? 今回は完成度が高いなぁーと。 [気になる点] >無人集落の駅で一人の老人の死体が発見された。集落最後の住人の。里帰りすると周囲に告げていた老人の死体…
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