パートムと陛下
「じゃあ2人とも入ってくれ。」
「わかったよ。」
「わかったー!」
(入って、中から見てもやはり1人暮らしでは、持て余すくらいの広さがあるな。)
「じゃあ、改めて自己紹介するか。
俺はパートム、王都のただの兵士だ。」
「本当に?」
「ハハッ!今の階級は、ただの兵士だ。」
「今は、ね。」
「まぁ、昔は、近衛兵だったな。」
(パートムには、悪いけどちゃんと聞いておかないとね。)
「なんで辞めたの。」
「さっきも言ったけど、家族を守ることが出来なかったことで人を守るという事を考える事が嫌になったんだ。」
「近衛兵ってことは、王家を守ってたの?」
「あぁ。俺は、前の国王陛下を守っていた。」
「国王陛下には、忠誠を誓ってたんだよね。」
「そうだな。誓ってたな、あの時まではな。その後は、誓えなくなった。別に陛下のせいでは、全くないし、逆に門番の仕事を用意してもらったから、感謝してはいるがな。」
(王家について聞いたらどうなるかな?)
「陛下が亡くなったのは、どう思ってるの。」
「それは、残念だな。本当に。」
「じゃあきついこと言うけどさ、陛下は、パートムがいれば今もいたと思う?」
(さすがに近衛兵だったと嘘つくことはないだろうけど。情報は出来る限り聞きたいからね。)
「………2人を巻き込みかねないぞ。ただでさえ狙われてもおかしくないのに。」
「まぁ、今更だとは思うけどね。それにそうだとは、思ってたけどね。」
「…今更ではあるか。まぁちゃんと言うと病気には、なってなかったな。」
「やっぱりそうだよね。どこか分かってるの?」
「分からない。ただどの貴族や集団も準備出来ていなかった。」
(外国かぁ。攻めて来ないかな?場所によっては、マーキー達の方が危なくなるかもしれないなぁ)
「どの方向からか、分かる?」
「西の方ではないからそこは、安心するといい。どちらかと言うと東の方だな。」
(人間の勢力の東の端がこの国だったはず。)
「どんなのがいるの?」
「吸血鬼や、オーガなどがいるが他にもあるし、西はないだろうが、北と南の場合は人間が関わってる可能性もありえるからな。」
「集団で攻めてくると思う?」
「無い、とは言えないな。とはいえ王都は、仮にも国の都。領土の端からは、離れてるから、もし突然来るとしてもそれは、1部の種族に限られるだろう。」
「1部って?」
「人間に化けることのできる、吸血鬼などだな。とはいえ、王都を落とせたとしても周囲は囲まれるからないと思うがな。」
「それなら一旦頭の端の方に置いておいて、自己紹介するよ。」
「俺は、リーソル。シルバードの兄だね。学校が目的だから、所属とかはないよ。」
「私は、シルバード。お兄ちゃんの妹だよ!所属はないよ!」
「あと俺達は、血が繋がってないよ。」
「何があったんだ?」
「1年くらい前に町の近くで倒れてねそこをシルのお父さんに助けられたんだけど、自分に関わる記憶がなくなったんだよね。それで心配してくれて、一緒に住まないかって話になってそこから、養子になったんだよ。」
「マジか?」
「そうだよ。」
「そのお父さんの名前ったなんだ?」
「マーキーだよ。医者をしてたね。」
「あー、まぁそれならそうなるかもなぁー。」
「お父さんを知ってるの?」
「まぁ医療の魔法が貴重だからな。知ってるな。」
「え?お父さんは、町に他にもいるって言ってたけど。」
「あの町くらいの規模で複数いるのはほぼないんだよなぁ、」
「ここには、どのくらい、いるの?」
「ここでも、3人だけだな。まぁ表に出てるのは、だけどな。人口は100倍あってもおかしくないのにな。まぁここが少ないのは、あるけどな。」
(それよりも空間魔法の方が貴重って言ってたよな。これは、今までより言えなくなったな。)
「それと、その娘も知ってる人はある程度あると思うぞ。」
「どんな理由で?」
「色々と天才的だとかなんとかで。」
「まぁそうか。うん。不思議じゃないね。」
「本当なんだな。まっ、今のこの国の状況でたどり着いた時点でただの子どもな訳ないが。」
「そういえば、来る途中で異質な存在と戦ったんだけど何かわかる?」
「どんなんだ?」
「えっと、道を歩いて移動していて、すれ違った際に剣で斬りつけてきたり、魔法を切ったり、武器を本当に持ってるのか、と思うくらい速く動いたり、大岩を頭上から落としても倒せなかったりしたんだけど。」
「正直分からんが、候補としては、どっかの貴族の兵とかか?どこらへんで出会った?」
「ルーゼンから歩いて、1ヶ月くらいのところかな。」
「そこら辺なら、違う種族の可能性は低いしなぁ、でも大岩落として、倒せなかったんだろ?迎撃せず耐えるのは、人間には、きついと思うがなぁ。」
「分からんなぁなにかの実験体か?悪いが分からんな。」
「大丈夫だよ、少しでも候補が出てきたのは、ありがたいしね。」
「そいつは、どうなった?」
「大岩を落とすとさすがに耐えることに精一杯だったけど、だからといってそのまま潰れそうに思えなかったから、それを2人で挟んで魔法を撃ちまくって倒したよ。死んでたのは、確認してる。」
「そいつが死んでるのは、有難いが数がいないとも限らないしなぁ。まぁ今は、どうしようもないからほっておくか。」
「2人は、なんで王都の学校に?」
「私の将来したいことが旅なんだけど状況が悪くて領地間を自由に行き来できるとも限らないから特権をてにいれにきたんだよ!!」
「特権、そのためにきたのか。リーソルもそうなのか?」
「そうだね。俺もいろいろ見てみたいし、あとシルが心配だからね。」
「確かにあれなら大体の領地を超えることは出来るだろうな。ここから状況が悪化したら、分からんが。」
「状況の悪化ってどんなこと?!」
「特権も拒否できることがあるんだよ。例えば、その家系が戦争中だったりすると拒否できる可能性がある。あとは、そもそもの王家が消えてたら、それ以前の話だしな。」
「パートムは、王家に対してどう思ってるの?」
「正直俺にとって、陛下に仕えていただけで他に仕えていたつもりはない。ただその陛下の大切にしていた、今の王様には、悪いと思ってるな。別に俺が居たら陛下が今も居たかなんてわからないけど、それでも色々思うところはあるんだよなぁ。」
「じゃあもしも、街と今の陛下どっちも同時に襲われて、どちらかしか助けられないとしたらどうする?」
「思うところはあっても、今の俺はただの門番だし、陛下ご自身が自分が死んだとしてもこの街、そしてこの国の民を守りたいと、そして、守ることが義務であると言っておられた。そんな陛下が居なくなったのなら、俺や兵士が守らないといけないからな。」
「今更だが正直今日初めて会った子どもに言うことでもないが俺は、陛下が亡くなったと聞いた時に後悔した。どんなことが起きたか分からないからなんとも言えないが、それでも俺がいたら、ほんの少しだけでも長生きできて、もしかしたら、まだ生きておられたかもしれんからな。その償いではないが、せめて陛下が守ろうとしたこの街そして国を守りたいと思ったんだ。」
「もしも、陛下の亡くなった原因がわかったらどうするの?」
「それはもちろん一択だな。俺がどうなろうと。あぁその時に2人が王都にいたらこの家は、やるけどな。」
「別にもらわないよ。わかったとしても生きて帰らないと、ほかの勢力から、街や、国を守れないからね。」
「今更だけど陛下の側近だったのはわかるけど、どんな立場だったの?」
「陛下の直属の近衛が第1部隊なんだかそこの隊長だった。」
(うわ〜そんなに上だったのか。まじかぁー)
「今は、実際どんな立場なの?」
「実質、兵士の指揮に介入できる。」
(今も上の方なのかよ。まじか。)
「王家の直轄領ってどのくらいあるの?」
「王都とその周辺、あとは、数カ所の伯領くらいだ。」
「なら、王家に従っているところは?」
「王都から近くならある程度は、従っているが離れた場所では、ほぼ従ってないな。あとは、でかい勢力は、王都から見て、南の方が本拠地の公爵とその家系や配下が従っているな。」
(正直言って、キツすぎない?しかも外の勢力もいるのに。)
「王権の強化をするのは、難しくない?今は、力があまりないから、ほっておかれてるけど力をつけそうになったら、攻められそうだけど。」
「確かに難しい。外の敵も考えないといけないしな。」
「一応貴族間で工作をしてるような感じは、あったけど。」
「そこも陛下にとっての民だから複雑だがな。」
「資金や人材、装備ってどうなってるの?」
「資金は、鉱山を抱えてたりするから、多少の余裕はあるが、人も装備も足りないな、仮にどことも戦わなかったとしても王都の治安維持すら、出来てないからな。」
「そっか今、王都の治安って悪化してたね。」
「装備を売る時ってどうすればいいの?」
「物にもよるが俺が窓口になって買い取ろう。」
「数と質どっちが必要?」
「少しは、質の良い物が欲しいがそれ以上に数が足らないから、数で頼む。」
「わかったよ。その代わりに時間のある時に戦闘を教えてよ。」
「時間があるときであればいいぞ。」
(怪しまれるリスクは高くなるけど戦争が起きて参戦したら、pは回収できるし、そもそも王家が弱すぎるのは、目的からして不都合になるからなぁ。
仕方ないかな。まぁ絶対バレたらいけないのは、魂関係だけでガチャは、バレたら面倒で済んだらいいなぁってくらいだから。パートムとは、契約魔法で縛って、物を生み出せるとかの嘘では、ないが正しいとも言えないことでも言った方がいいかもしれないな。)
「まぁ、とりあえず家を案内するぞ。」
「わかったー!」
「まぁ案内と言っても、1階にほとんどのものがあって、2階に個人の部屋があるってだけだけどな。」
その後2階に上がって、俺たちに部屋を案内してくれた。シルの部屋は、隣だった。




