旅の終わりと王都の始まり
(そろそろシルにガチャのことを話して8ヶ月経ったかな?その間特に大きな事は何も起きなかったね。本当に。暇なくらいだったね。危ないよりはマシだけど。)
(王都っていう目的があったからどこかに寄り道するのも難しかったし、いつ何が起きるか分からないから急いで進んできたんだけど…そうしたら1年もかからないくらいで王都が見えてきたね。宿あるかな?まぁあるかな。仮にも王都だからね。)
「予定よりだいぶ早く着いたね。」
「うん!ここまで早いとは思ってなかったよ!」
「俺もそうだよ。結局11ヶ月でここまで来たね。想定よりもだいぶ早いよ。」
「そうなの?」
「うん。」
「お兄ちゃん、試験まであとどのくらいなの?」
「あと4ヶ月くらいだね。」
「それまでどうするの?」
「王都に着いてから考えよっか。まだ見えてるだけで着いてないからね。」
「うん!」
「大きいねー!」
「本当に大きいね。」
(街を囲むように大きな壁があるね。頑丈そうだね。周りに掘立て小屋がある……あったかな?今は残骸ばかりだね。まぁ良いや。)
(壁にはここから見えるだけでも何個も通り道があるね。便利…なのかな?)
(あれは…門番かな?多分だけど。腐っても王都だし流石に門番くらいいるよね。)
「こんにちはー!」
「おぉー。元気だな。子ども2人でどんな用事なんだ?」
「学校の試験を受けるために来たんだけど予定より早く着いたんだよね。」
「うーむ……まだ何ヶ月も待つ必要があるな。どの辺りから来たんだ?」
「ルーゼンって町だよ。」
「ルーゼンか。よくそんな遠くから来たな。」
「来たかったからねー!」
「そうか。」
「うん!!」
「何個か聞いてもいい?」
「良いぞ。どうせ暇だしな。と、話すなら軽く自己紹介するか。俺はパートム。兵士だ。」
「俺はリーソル。でこっちが…」
「シルバードだよ!」
「兄妹か?」
「うん!」
「そうか。」
「それで何が聞きたいんだ?」
「まずは今の王都がどんな状況かだね。」
「最近の王都はなぁ……別に何かあったわけじゃないが出て行く人が多い感じだな。」
「そっか。それじゃあ王都の治安はどうなの?」
「治安か。昼間の大きな道ならともかく、夜や裏路地に行くことは辞めておいた方が良いぞ。まぁ子ども2人でここまで来れてる時点で簡単には負けないとは思うが……何があるか分からないからな。」
「どんなことをしてくるやつが多いの?」
「1番多いのは単純な盗みだが殺してから奪うような奴や誘拐する奴もいるな。」
「うーん…王都だと何をしたら罪なの?反撃で何かあったら困るんだけど。」
「人を自分から殺したり誘拐したりだな。反撃は……本当は言わない方が良いんだが2人なら気にしないでも大丈夫だろうな。」
「…どういうことなの?」
「…子どもの発言は信用されやすいってことだな。勿論他に証拠があればそんなことはないけどな。」
「…兵士がそんなこと言っていいの?冤罪が増えるかもしれないけど?」
「…反撃を躊躇させることを言うのに比べたらマシだからな。」
「…分かったよ。他に王都で多い危険なことはあるの?」
「人身売買は違法ってわけではないから厄介だな。特にシルバードは狙われやすいだろうからな。」
「わかったよ!」
「ただリーソルも狙われてもおかしくないからな。」
「分かったよ。」
「そういえば2人は泊まる場所を決めてるか?」
「まだだね。」
「それなら気をつけた方が良いぞ。場所によっては店主が何かしてくるかもしれんからな。」
「どんな宿が危ないの?」
「正直言って分からん。別に店主がそうじゃなくても単純に侵入しやすいとことかもあるからな。」
「うーん…」
「迷ってるなら俺の家に泊まるか?居るのは俺だけだがな。」
(誘導してるようにも思えるし、ただ優しいだけにも思えるなぁ……少し聞いてみようかな。)
「泊まるとしたら何をすれば良いの?」
「特にこれってのは無いな。1人で過ごすのも寂しいからな。」
(1人で過ごしたことが少ないからどうなんだろ?それだけの理由で何も分からない子ども2人を家に呼ぶもの?うーん…)
「そんなに寂しいの?」
「あぁ。暗い話になるが話してもいいの?」
「俺は良いよ。シルはどう?」
「私もいいよ!」
(この話で信用出来るか分かればいいけど。)
「俺には昔家族がいたんだ。嫁と子供が2人居た。平和で幸せだったがある日俺は仕事で数日間王都を離れてたんだ。そんな数日が終わって、家に帰ったらそこには大量の血の上で倒れていた家族がいた。犯人は分からない。そして、子供がちょうど2人たちくらいの歳だったんだ。だから思い出して少しな。」
(話してる表情と声は本当にしか思えないけど……)
「なんで門番をしてるの?なんとなくだけどもっと上の階級になれたと思うんだけど。」
「こんなこと兵士としてどうかと思うが1番近くの存在を守れなくて、人を守りたいとかそんなことを考えたくなくなったんだ。」
「じゃあなんで門番をしてるの?」
「なんでだろうな。自分でもよく分からないんだ。辞めようかとも思ったが無理だったんだ。本当、どうしてなんだろうな
。」
(うーん、嘘とは思えないけど…)
「犯人の情報は分からないの?」
「一切分からん。分かってたら俺は兵士なんてしてないからな。」
「そっか。うーん……シルはどうしたいとかってある?」
「うーん、私は嘘とは思えないけど、お兄ちゃんはどう思ってるの?」
「俺も同じだよ。シルが泊まるなら俺も泊まるからシルが選んでくれる?どっちでも良いからね。」
「それなら泊めてほしいかな!」
「そういうことみたいだからお願いできる?
「勿論だ。これからよろしくな。」
「よろしくねー!!」
「よろしく。」
「2人とも待たせたな。」
「大丈夫だよ。泊めさせてもらうんだしね。」
「いい場所だね。」
「そうだね!」
「ありがとな。」
(街の中心に近いね。それに1人暮らしって感じの家ではないかな。多分だけど。)
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