ソルの正体と先輩の敗北
「シイサさん、考えはまとまった?」
「まとまってないけど、少し良い?」
「分かりました。みんなは、戻っててね。」
ガチャッ
「風壁、土壁、氷壁。」
「それでどうしたんですか?」
「話し方を変えて頂けないでしょうか?」
「こんな感じでいいか?」
「はい。ありがとうございます。陛下。」
「さっきの言葉で気づいたのか?」
「はい。それまでの事は今考えると、分かりそうなところもありましたが私には分かりませんでした。」
「まぁ、あからさまに言ったのはさっきが初めてだからな。仕方ない。」
「ありがとうございます。そして、今までの不敬、申し訳ありません。」
「問題ない。俺が隠してたんだからな。他の者の前では、さっきまでのように振る舞え。完全には無理でもいい。」
「承知しました。」
「それで何を話したいんだ?」
「陛下が何故ここに居るのでしょうか?」
「何故か。今の国の状況は分かっているな?」
「はい。」
「その状況で王位継承者が固まっているのは危険だからな。」
「パートム閣下がいらっしゃるのでは無いのですか?」
「パートムは少し前まで居なかったんだ。」
「数年前に隊長が変わってらっしゃいましたね。その時なのですか?」
「あぁ。他に何かあるか?」
「さっきの獣人がマシというのは本当なのですか?」
「実際に見たわけでは無いが本当だろうな。ただ、俺はあの扱いを間違っているとは思えない。シイサは詳細な記録を見た事があるか?」
「いえ。」
「それなら仕方ないな。俺の関わったことで言うなら…サマリージョ伯は知ってるな?」
「はい。」
「あそこの娘が襲われていたな。他で言うとセンストに会ったよな?」
「はい。」
「センストの親は初日の攻撃で死んだ。」
「………」
「土壁 フュンフツィヒ。これは誰にも言うな。良いか?」
「承知しました。」
「俺の親は暗殺された。相手は決定しては無いがな。」
「っ!」
「俺は大丈夫だが街だと数千いや、被害なら数万単位で出ている。恨みを全く持っていない人の方が少ないだろうな。こちらの攻撃などによる被害で建物が壊れた人もたくさんいる。獣人が攻めて来なければそんなことは無かった、だから獣人に恨みを向ける人が多い。あれでもおそらく戦えない中では最上位に良い扱いだろう。」
「…分かりました。」
「あぁ。それに何かが違えば、この街には獣人が誰1人としていなかったかもしれないな。」
「どう言う意味でしょうか?」
「パートムは俺の親に忠誠を誓っていた。そして、パートムが本気で潰そうと思えば、誰1人として生きられなかっただろうな。」
「…そうですね。」
「他に何かあるか?」
「あの、シルバードちゃん?との関係はどのようなものなのでしょうか。」
「シルか。いろいろあったんだが簡単に言うと、義理の妹だ。隠れるために俺が向こうの家に入った感じだな。」
「なんとなく分かりました。」
「あぁ、それでいい。」
「陛下、教室で助けていただきありがとうございます。」
「あぁ、なんとかなった気はするが感謝は受け取ろう。それよりも、タルクは面倒になったな。」
「そうですね。あそこまで正反対の人が居るとは思わなかったです。」
「そうだな。俺も努力の発言をした時に俺に来ると思ってたが、あんな事になるとは思わなかったな。それとシイサはいつもあんな感じなのか?」
「途中まではそうですね。」
「大変だな。」
「陛下よりはだいぶ楽ですよ。」
「今の俺は政治をしていないからな。そこまで大変でも無いな。そう言えば、シイサは呼び方を変えてもいいか?」
「はい。大丈夫です。」
「それなら、シイでいいか?」
「はい。」
「俺の事は普段はソルでいいぞ。呼び捨てでもいいぞ。」
「いえ!さっきまで君をつけていたのでそれで問題ありませんか?」
「あぁ。大丈夫だ。そろそろ戻るか。」
「分かりました。」
「頑張って普段通りを意識せよ。」
「承知しました。」
「シイ、上級魔法は2つだよね?」
「そうで、そうだよ。」
「風と火だよね?」
「は、うん。その2つだね。」
「頑張ってね。」
「う、ん。」
「おかえり!」
「ただいま。」
「ソル、なんであんなに急に変えたの?」
「あれはそもそもあの5人とは契約をしてるじゃないですか?」
「そうだね!」
「戦力になれば一方的に従えることが出来るんです。そのために強くさせようとしたんですよ。それで俺を憎ませようとしてたんです。さっきサンと話してみんなに相談しようと思ったんです。どうやったら強い目標を持てるかを。まぁ、急に変えたのは面倒過ぎるってのが大きいですが。」
「ソルらしいね!!」
「どういう意味ですか?」
「気まぐれなところだよ!!」
「水落」(幻影縄 付与 麻痺毒)
「風壁!やった!防げっ」
「水落」
「セン!防げたの?!」
「……凄いね……防いで……麻痺するの」
「喋れないセンに言うのね。」
「まぁ、あんな事を言ったら仕方ないね!」




