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アイゼツ物語

「無理無理無理無理!!」アイは眼前に広がる光景を前に思わず漏らしてしまった。それとほぼ同時に他にも色々漏れていることに気づくが、羞恥に頬を赤らめる余裕など無い。


恐怖や絶望を遥かに凌駕し、もはや諦観の境地である。

異形の徒が隊列を組み、行進曲を奏でながら迫りくる姿は神々ささえあり、ただただ圧倒されるばかりだ。


軍団はアイの目前で行進を止めるや、左右に分かれて整列。そういえば昔、母から異世界には海を割るという奇跡を披露した人がいるという話を聞いたのを漠然と思い出し、これが俗に言う走馬灯ではないかと頭をよぎった。


「我ラが主!魔族の頂点にして絶対にシテ真なる魔王!!ゼツ様の御目見得!御目見得!ミナのモノ平伏セヨ!」

どこからか聞こえてきた言葉を合図に異形の軍団が一斉に平伏し、辺りは静まり返った。


すると、低い唸り声の後に地鳴りと車輪の音が聞こえてくる。

2体の大型魔獣が引いているそれは俗な言い方をすればパレードカーで、私にとっては動く玉座だった。


これが、私と魔王ゼツとの出会いだ。

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