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3話 商人と吸血鬼になった事実


 整備を始めて一週間が経過した。

 その結果100メートル四方の範囲の木々が伐採され、木の根も【土操作】で掘り起こして素材となった。

 住処は木材置き場と同じように【土壁】と【硬化】で作った四角い小屋の様な物に窓となる穴を作った物で、家具は【土操作】で形を作り【硬化】した物なので、見た目はあまり良くなく、寝具には魔物の毛皮で代用している。


 そして食事はそれなりに改善していて、調味料となる植物がそれなりにあったので、採取して食事によく使っている。

 ......最も塩が無いので味が極端だったりするが。


そんな感じで、今私は世界樹の精霊の元で商人の男を待っている。


「おっ、来たようじゃの」


 世界樹の精霊がそう言うと何もない所の空間が歪み、紫色をした扉の様な空間が生成され、そこから一人の人物が出てくる。

 黒髪黒目で中性的な姿をした男である。


「お久しぶりと言うべきでしょうか、ヘンザン商会のロック・ヘンザンにございます」

「久しいの、商人の」

「ええ、精霊様もお変わりない様で......それと良く到達できたものですよアヴィニア様」

「ええ、少しでも希望があったのですから何が何でも叶えようとした結果です」


 そんな風に久しぶりに再会したので、少し会話をして本題に入ることにした。


「さて、精霊様とアヴィニア様の要件はある程度予想できますから長くなりそうなアヴィニア様の要件から聞きましょうか」

「わかったわ。いくつか聞きたいことがあるけれど、まず一つ目は私が吸血鬼になったことについて聞きたいわ」

「了解しました。では図で説明しましょう」


 そう言ってロックは指を弾くと空間にスクリーンの様な物を出現させた。


「さて、まず初めにですけれど、アヴィニア様は吸血鬼になる条件をご存じですか?」

「ええ、知っているわ」


 一つ目が吸血鬼の血を飲み契約を行う事で通常の吸血鬼となる方法。

 二つ目が吸血鬼に血を吸われる事でなる簡易的な従属吸血鬼になる方法。

 三つ目が初めから吸血鬼であったが覚醒した。


「うん、世間一般的な吸血鬼になる条件としては正しいですけ」

「世間一般的?」

「そうですね。アヴィニア様はどちらかと言えばその三つの条件でなる吸血鬼と違い、始祖(オリジン)と呼ばれる吸血鬼に該当します」

「始祖?聞いたことないけれど」

「でしょうね。始祖がいたのは今から千年近く前になりますから」


 そんな風に言ってロックは始祖について話した。

 始祖はこの世で初めて吸血鬼になった存在で、一般的には原初の魔王ヴァリエルとして知られる存在。

 原初の魔王ヴァリエルは昔話としては神話に次ぐ古い話で、【勇魔大戦】と呼ばれる人族と多くの魔物の軍勢との生存をかけた戦いの話に出てきて最強の魔王として知られる存在として書かれていた。

 曰く、その魔王は不死身の存在で、首を切って心臓を貫いても再生し、魔法で爆砕させても血液から再生し、最終的には勇者の同行者であった聖女の命と引き換えに【神の浄化】と言う最上位の浄化魔法を使いようやく討伐した存在。


「当時の勇者が聖女を生き返らせる為に神水を使用したってのも事実だし、何なら神水の入手先がここだからな」

「ああ、確かに神代が終わってから初めて会った人族だったからな。覚えておるぞ」


 そんな歴史の事実に私は驚愕すると同時に疑問が浮かぶ。


「それだと何が原因で始祖なんて伝説の存在になったのですか?」

「うーん、始祖になる条件って簡単に言えば偶然の出来事が重なった結果の産物だからね」


 ロック曰く、始祖の条件は闇属性の魔法が使える。

 【闇の呪い】と言う一部の強力な魔物の呪いを受けてそれに適応する。


 この二つでそこまで難しい物ではないが、実際はかなり条件が厳しい事である。

 まず闇属性の魔法が使える、つまり闇属性の魔法適性が無ければ使用できないのだが、闇属性の魔法適性を持つ人族はかなり珍しく、使うのは魔族やダークエルフなどの亜人が多く、人族では千人に一人いるかと言うレベルで、実戦で使える者で言えば、そこから更に絞られるので国で数人使える者がいる程度でしかない。

 私の場合は魔力が多く闇属性の魔法が使えたので宮廷魔導士に推薦されたがカルムとの生活の為に受けなかった過去がある。


 そして【闇の呪い】は基本はリッチやダークドラゴンなどの上位の魔物や悪魔を使うかの手段でなければまず受けることがない。

 加えてダークドラゴンは希少な魔物の一種とされていて、ほぼ目撃情報がなく、リッチはダンジョン以外では人為的な要因でもなければ現れることはまずない。

 悪魔に関しても同じことが言えて、悪魔は基本的に魔界と呼ばれる世界の住人で人為的な要因でもなければこちらの世界に現れることがないし、そもそも悪魔を呼び出す【悪魔召喚】は教会や国から禁忌指定されている闇属性の魔法であるから使う人も少ないのである。

 なので、【闇の呪い】を受ける以前に合うこと自体が難しいのである。


「だけど私【闇の呪い】を受けた記憶が無いのだけど」

「それに関してはダークドラゴンのブレスだね。あれ個体次第で効果が変わるし、アヴィニア様が戦ったダークドラゴンは毒と呪いに特化した個体であり、討伐後に長い間ブレスの汚染が残った地にいたから感染して【闇の呪い】が発症したと俺は思うけどな」

「それを知っていたなら、何故あの時教えてくれなかった?」


 つまりロックは私が【闇の呪い】がかかっていることを知っていたのにそれを言わなかった事になる。


「うーん、それは単純に呪いの事を知っていたと思ったからだよ。普通に考えてポーションなどで治らなければ呪いの類も疑うと思うし、【闇の呪い】は一応高位の神官さんが使う浄化を使えば解呪可能だからね。まぁ、解呪する前に旦那さんであるカルム様の蘇生情報で即座に行動開始したアヴィニア様にも問題があったと思いますけどね」

「......」


 ロックの言葉に私は反論できなかった。

 確かにカルムの死者蘇生が出来るという情報を聞いてから私は即座に行動して、ネメシスの森に向かう準備をしていたからである。


「つまり、私が吸血鬼になったのは......」

「偶然とアヴィニア様の暴走が原因だね」


 私は吸血鬼になった原因を聞いて少し頭を抱えたのであった。

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