2話 簡易的な周辺整備と食料確保
とりあえず、一週間待つことになった私は周辺で生活できるように湖の周囲を整備していいかを世界樹の精霊に聞く。
「精霊様、一週間待つことになったので周辺を整備していいですか?」
「いいぞ、湖の内側以外なら自由に木を切り倒そうが地形を変えようが何も文句は言わぬ」
「わかりました。では整備しますので、また後日話しましょう」
「そうじゃの、ただし死ぬなよ?」
「そこは善処します」
そう言って私は世界樹の精霊の元を少し離れて湖の周辺を整備することを始めた。
「まずは周辺の整備を行わないといけないから【集土・砂鉄】」
【集土】は魔法で土を集める土属性魔法で、今使った魔法はそれの発展であり砂鉄を集める魔法。
「次【簡易錬成・精錬】」
次に使った【簡易錬成】は錬金術で、本格的な錬金術には劣る物のそこそこの物であればどこでも使えるので野外だとそれなりに重宝する錬金術で、【簡易錬成・精錬】は精錬する錬金術で砂鉄をしてインゴット状に精錬させる。
「次【簡易錬成・形状変化】」
次に使った【簡易錬成・形状変化】は対象の物を形状変化させる錬金術で、対象が生物以外(死体は別)であれば形を素材の範囲内で自由に変形させることが可能である。
そして砂鉄をインゴット状にした物の形状を変化させ斧に形を変える。
「ふう、流石に魔力を消費しすぎたかな」
先ほどの錬金術には明確にメリットとデメリットが存在し、メリットは錬金術で再現できない事はである事。
デメリットは魔力の消費量がとんでもない点である。
例えば私の魔力で言えば一万程であるが、先ほど使っていた【簡易錬成】に消費した魔力は精錬で約四千、形状変化で約三千五百と合計で約七千五百の消費である。
そもそもの話、私の魔力一万程は人族としては多い方で、人族の魔導士が持つ魔力の平均は五千から八千で、私の知る限り王宮魔導士長の一万七千が最大で、今回の魔力消費は一般人が行えば最悪気絶するか出来ないの二択である。
なら錬金術とはゴミとも思えるが、ちゃんとした設備で【簡易錬成】ではなく普通の【錬成】を行えば消費する魔力が十分の一に抑えることが出来るので、【簡易錬成】はそれなりに魔力がある人なら便利であるが、通常の人からしたら緊急用と言う感じである。
とりあえず、消費した魔力を回復させるために湖の水が使えるかを確認する。
「【鑑定】」
【鑑定】は対象の情報を調べる無属性魔法で、領地経営をしている際や商人との取引でよく使っていた魔法である。
ただ【鑑定】にも種類があって普通の【鑑定】で分かるのは大体の情報である為隠蔽された毒物などを調べるには適していないが、今の場合は魔力の回復使えるか使えないかだけなので、そこまで細かく知る必要はない。
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名前 劣化した神水
効果 怪我、魔力、病を特殊な物を除けば回復に使えるが、魔物
アンデット、吸血鬼には脅威でしかない毒物。
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「......うん、使ったら終わりだけど......あれ?」
劣化した神水に先ほどまで浸かっていたけれど、問題なかったがどう考えても吸血鬼になっている私からしたら毒の泉に浸かっていたという事になる。
「......まぁ、大丈夫!多分」
いつかは調べることだし、何より付近の水源となる場所を知らないため、実験を兼ねて私は湖に手を入れて劣化した神水を飲む。
「......普通の水?」
湖の水を飲んだが、ポーションの様に回復している感じは無く、味もただの水でしかない。
「まあ、水源が確保できたと思っておこう」
ポジティブに考えて次の作業を行う事にした。
「さてと、まずは邪魔な木を伐採しますか。【身体強化】はっ!!」
【身体強化】は無属性魔法で魔力を用いて身体能力を上げる魔法で、私は【身体強化】をして木を伐採していく。
感覚的には約一分に一本から二本の割合で。
「ふう、とりあえずこれだけあれば十分かな」
伐採して三十分程経ち、木材を伐採し終わる。
「次は板状に加工と【身体強化】」
再び身体強化を行い伐採した木を斧で切断して一本の木に対して二十一枚から二十八枚ほど作っていく。
「さて、かなり時間かかったけれど、とりあえずは問題なく出来たわ」
約三時間かけて全部の木材を加工したので、一時的に木材を乾燥して置いとく場所を土属性魔法で建てる。
「【土壁】【圧縮】」
【土壁】は土属性魔法としては普通の魔法で、文字通り土の壁を作る魔法で、これで木材を置いている場所の四方向と天井に壁を作り、次にやった【圧縮】は土属性魔法の一つで地面を固めたり、先ほどの【アースウォール】の土の密度を上げるために圧縮し、硬化させて丈夫な壁とする魔法である。
これによって見た目は超シンプルだが木材置き場の完成である。
「次は食料の確保をしないとね」
流石に世界樹の精霊に食事をずっと用意してもらうのも悪いと思い、私は先ほど伐採に使用した斧を片手に森を散策し始めた。
「【魔力探知】」
【魔力探知】は対象を探知する無属性魔法で、対象の持つ魔力を探知して位置を知る魔法。
そして魔力を探知して魔物を討伐して今晩の晩飯にする予定でいる。
「(まぁ、ゴブリンなどのマズい魔物でなければいいかな)」
そう思いながら探知しているとちょうど良さそうな魔物の魔力を探知して、隠密で行動し近づき、大きな角をした体長2メートル以上の鹿がそこにいた。
「(うん、やっぱり大角鹿だ)」
大角鹿、本名バトルホーンディア。
バトルホーンディアはとんでもないレベルで凶暴で、一度戦闘状態に入れば視界にいる限り対象を殺すか、自身が死ぬまで、自身の持つ大きな角による一突き、鉄板を貫通させる蹴りと踏みつけで攻撃してくるので危険な存在でる。
『ピュェェェェェ!!』
大角鹿の前に私が姿を出すと叫び声を上げて物凄い勢いで突進して来るので、それを回避して木に衝突させる。
そして木に大角鹿が衝突すると衝突箇所に罅が入りメキメキと音を立てて木を倒す。
『ピュェェェェェ!!』
再度大角鹿は叫び声を上げて突進して来るが、最初の衝突よりかは威力は劣る。
理由は単純に木に衝突した際に軽い脳震盪を受けているのが原因だ。
「【身体強化】、はぁっ!!」
そんな大角鹿を【身体強化】で身体能力を上げて、大角鹿の突進を紙一重で躱し通り抜けながら持っていた斧で大角鹿の首を斬り、そのまま大角鹿は力を失い滑り込むように倒れる。
「ふう、問題無く狩れたわね。とりあえず血抜きしますか」
狩った大角鹿の足に付近で生えていた蔦で簡易的に作ったロープを括り付けて、付近の木に吊るして血抜きを行う。
「その間に火でも起こしときますか」
火を起こしておかないと夜間の森の中では視界不良で魔物の夜襲に合う危険があるから明るいうちに火を起こした方がいいのである。
ただし、作業的には少し面倒ではある。
まず、木の枝を集めて、その内の数本を斧でささがき状に切って小さな山を作る。
「【集土・砂鉄】」
次に砂鉄を砂鉄を集めて指に擦り付ける。
「【身体強化】」
そして【身体強化】を行い、先ほど作った小さな山の付近で高速で指を鳴らし、火打石の様に火種を作り、小さな山に火を灯す。
そこからは火種が消えない様に先ほど拾った木の枝に火をつけて消えない様に木の枝を継ぎ足して、三十分ほどで焚火が出来上がった。
「さて、ある程度血抜きも終えた頃だし戻りますか【土操作】【圧縮】」
それから一時間程経ち、大角鹿の血抜きを終えたので土を操作する土属性魔法の【土操作】で棒状にし【圧縮】でそれを硬化させる。
それに先ほど血抜きをした大角鹿の足を蔦のロープで結ぶ。
次に待っている間に作った松明に焚火の火を付ける。
「【身体強化】......よっと」
そして大角鹿を括り付けた棒を右手で持ちながら右肩に掛け、左手に松明を持ち、整備中の場所に戻った。
ちなみに戻ってから大角鹿の解体を行い、その後シンプルに焼いて食べたが味付けは無く、かなり野性味のする味であった。
「(調味料が欲しい......)」
指弾きで火を起こす考えはト○コであった指弾きで煙草?に火を起こしたあれです。