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第7話 話し合い

「さてレナン、あとは誰も来ない。ゆっくり話し合おう」

エリックから話を切り出された。


「この度は多大なご迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした。本当は手紙を渡したらすぐに帰るつもりだったのです、それがこのような騒ぎになってしまって」

きゅっと服を握りしめ、頭を下げる。


「そうではない、今後の事だ」


「今後?」


「危険な目に会うとわかっていても想いを伝えに来てくれたのは、俺のことが好きだからだよな?」

改めて言葉にされると恥ずかしい。


「はい」


「実はあの日助けに来てくれたレナンが凄く綺麗で忘れられなかった。許されるならばこれからも側にいて欲しい。ずっと」

覚えていてくれたのかという感激と、告白されたという衝撃で言葉が出ない。


身分違いの恋だともわかっているため、即答はしない。


そこまで盲目ではない。


「申し訳ありません、わたくしは愛妾になるのは嫌です」

婚約者もいるし、身分的にはそうなるだろう。


「そうではないのだが、少しゆっくり話そう」

体を震わせ怖がっているレナンを見て、焦り過ぎてしまったと反省する。


「まず誤解を与えて申し訳ないが、愛妾にするつもりはない。俺は何人もの人を愛せるほど器用ではないから」


「でも、婚約者の方が……」


「俺を助けたと嘘をつく女と生涯を共にしたくはない。俺を本当に助けてくれた君と添い遂げたいんだ」






あの船では違法な売買が行なわれていて、それに知り合いが巻き込まれたので、エリック自ら現場に乗り込んだのだ。


王太子に手を出したとあれば死罪は免れまい。


わざと挑発し、船から落とされた。


本当はすぐにニコラが助けに来る予定だったのだが、まさか死を覚悟で大規模な火炎魔法を使われるとは思ってなかった。


船は壊され爆発し、混乱が生じた。


それによりニコラもエリックを見失ってしまった。


魔法や衝撃は防御壁でふせげたものの、水は防げない。


二コラが来るのを待っていたが、さすがに息が続かなくなり、氷魔法で周囲を凍らせ、足場にでもしようかと思った頃にレナンの姿が見える。


敵の追撃かと思ったが、どうやら違うようだ。


「しっかりして!」

ぼんやりとした意識で見えたのはきれいな女性だ。


セイレーンかマーメイドか。


海辺の魔物だと思ったが、こんな美人に食われるのも悪くはないかと柄にもなく考え、魔法を使えば彼女を巻き込むかもしれないと思い使用を止めた。


だが食われる事はなく、意識を失う。


体に衝撃が走り、目を開けるとレナンの姿だ。


「ごめんなさい、わざとじゃないんです!」

そう言って走り去る後ろ姿が僅かに見えた。


どこから現実でどこから夢か。


その後マリアテーゼが朦朧とするエリックに声をかけ、直ぐ様ニコラも来てくれた。


ニコラの姿を見て、再びエリックは気を失ってしまう。





「マリアテーゼ嬢は助けてくれたお礼として城にてもてなしていただけで、婚約者ではない。世間ではあたかも婚約者のように言われているが、違う」


「そうなのですか」

それを聞いて嬉しかった。


嘘をつくような令嬢はエリックに相応しくない。


「だから本当に俺を助けてくれた君と添い遂げたい。命がけで海に飛び込んでくれたのだ、誰にも文句は言わせない。妻になってくれ」

今度はもう逃がさないと気迫を込める。


「でも」


「不法に侵入した件は不問にする。マリアテーゼ嬢に怪我をさせようしたこともな」


「うぅ……」

実家への影響を考えれば断れない。


「それとも裸で王太子の部屋に忍び込んだ令嬢として処断されたいとでも?」


「それは嫌です」

レナンは恥ずかしさと逃げられないこの状況に泣いてしまいそうだった。


「せめて家に連絡をさせてください」


「こちらに呼ぶ。どこの家なのか家名を教えてくれ」

気迫に圧され、とうとうレナンは話してしまった。






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