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花は咲かず砕け散る  作者: 枝垂れ桜
18/21

滑稽無様

桜には、決してバレてはいけない。


これは亮が憑依してからずっと思っていることだった。だから、この世界の主人公である亮を桜の前で演じてきた。


全ては、桜の幸を願って……




「小鳥遊!今にうちに早く逃げるよ!」


硬直状態で、お互いを睨み合ってる中、百合草がチャンスとばかりに亮の手を引っ張り、逃げ出そうとする。


(は?なんでこいつがこんなとこにいるんんだ?)


距離をとって逃げているか、もはや見捨てたとばかり思っていた亮は、隣にいきなり現れた百合草に気を取られ、がしゃどくろから気を逸らしてしまった。


その瞬間、がしゃどくろから耳障りな音が聞こえ始める。


「kyaaaauaaaaaaaaaaaaaannnnnnnnnnn」



すぐに視線を戻すも、手遅れであることを知る。


ドリルで硬いものを削っているような不協和音が辺りへと響き渡る。それと同じくして、光を発し始めていた。



(この発光は…まさか、魔素か!まずい!)


亮はすぐに、がしゃどくろの周囲の魔素が励起されて、光を放っていたことに気づいた。


そして、励起されてた魔素が瞬間的に収束する。


サイズはビー玉くらいの大きさでまるで太陽のように辺りを明るく照らしている。


中心温度1500万度という超高温で引き起こされる核融合が起こっていた。その圧縮したエネルギ―をより攻撃力を上げるため一方向に定めて放出する。


亮は百合草を背中に隠して庇うが、当の本人は鋭い光に包まれるとともに、体が高温にさらされて、皮膚が焼けただれていく。


亮に当たった熱射線は太陽に近づいてくる彗星のように長い尾を引く。


顔の頬は熱で焼けただれ、全身は大やけどを負っていく。




永遠のように感じられた、熱放射がやっと終了するが、


「こひゅー、はひゅー、かはっ」


亮は、全身やけどに加え、高熱の空気を吸ったことで器官が焼けて、息がうまく吸い込むことができなくなっていしまった。


「あ、あんた、大丈夫なの?!!」


涙でにじんでいる視界に心配そうに駆け寄ってきた百合草が慌てふためいている姿が見える。


「はあ、ああ、だ、ぃじょ…ぶ」


視線を正面に向けてみると、がしゃどくろは歯をカチカチと音を立てながらケラケラと嗤っている。ウザいやつが痛い目を見たかのようにあざ笑っていた。


(あ~あ…だっさいな~俺…本当にダサすぎる…)


余裕をこいて、百合草がいることを忘れ、それを逆手に取られて、重体になるのはあまりにも滑稽だ。


(俺がしっかりやらないら、俺が天才でないから…俺が、この世界の《《主人公》》でないから、こんな無様で、滑稽で…


息が、段々と浅くなって、視界の端からどんどんと白い世界が広がり始めてくるし体がもう限界だと悲鳴を上げている。


(俺は、勝たなくてはいけない、桜 彩に降りかかる不幸を振り払わなければいけない。)


腹の中心にとても小さな火種ができる。それは、フツフツと周りへと広がって大きくなっていく。


全能感に包まれたような感覚ではない。怖くて、辛くて、しんどい。だからと言って、恨みという負の感情へと昇格することもできない。


しかし、認められない、そうあってはならない、不愉快、嫌い、嫌。何故俺の思い通りにならない、どうしてこんなことが出来ない。


ただひたすらに、自己嫌悪の気持ちが膨れていく。故に、だから……


亮の中にある何かが焼け切れた。


「きひっ、あはっはあああはははははははははっはああああ!!」


亮が、何かに取り憑かれたように笑い始めた。百合草はこの時初めて何かが大事なものがぶっ壊れた人間を見てしまった。


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