20.やって来ました隠世!
ここから第二章です。
今しばらくお付き合い頂けると幸いです。
丸障子を潜り抜けた先は不思議な空間だった。
前後左右が捻れたような道が続いている。
平衡感覚が狂わされる様な感覚になる。
「親父殿…出口設定ミスってねぇ?」
「う〜ん…間違えちゃったみたいだね。ごめんね☆」
「ごめんねじゃねーよ…桜花大丈夫か?」
「大丈夫…頭グルグルしそうだけど…」
出だしからこんな状態で大丈夫なのだろうか…前途多難である。
この空間は隠世の歪みが集まる場所らしく、一歩進む毎に重力や磁場が変わるらしい。なのでヒイとスイに乗れないため歩くしか無い。
少し歩くと別の出口に着いた。
出口を抜けると、目の前には一面のオレンジ色が広がっていた。
「わぁ…すごく綺麗…」
「この隠世は一年中ずっと紅葉が紅葉している」
「一年中?桜とかは咲かないの?雪とか」
「もちろん四季折々の草花が咲いていた。春になったらこの紅葉達は全て桜の木に変わり、一面桜が満開に咲き、冬には雪も降った。だがそれも千年も前の話だ。隠世は時が止まっているんだ」
梓拍は眼下に広がる紅葉を眺めながら寂しそうに言った。
「千年も…時間が止まった原因とか分からないの?」
「大凡の見当は付いているが、確証は無いな」
「でも、桜花が来た事で何か変わるかもね」
紫水が意味深な言葉を言う。
桜花は自分に関わる事なのだろうかと首を傾げるが、紫水も梓拍もそれ以上は教えてはくれなかった。
「ナイスタイミングで迎えが来た様だね」
紫水の言葉に上を見上げると、御伽噺に出て来る様な雲に乗った輦が降りて来ていた。
輦は紫水の前に降りると、自動で扉が開いた。中には誰も乗ってはいないのにどうやって動かしているのか謎である。
紫水は気にせず乗り込み。
「私は一足先に本邸に戻るよ。二人は梓拍の屋敷へ行くのだろう?梓拍、母上への桜花の披露目は落ち着いてから来るといい。ではな桜花、また会おう」
梓拍が頭を下げたのを見て、桜花も慌てて頭を下げる。
紫水は微笑むと、そのまま去って行った。
桜花は輦が見えなくなるまで見送っていた。
本当にあんな乗り物があったのかと見入ってしまう。
「輦が珍しいか?まぁ、確かに俺達龍族しか乗れないからな。欲しいなら桜花専用の輦も手配しておく」
「え!?ち、違うの!御伽噺とかでしか見た事ないから、凄いなぁ…って思っただけ!」
梓拍がまたとんでもない事を言い始める。龍しか乗れないと言う事は神様しか乗れない代物だ。そんな物まで贈られるわけにはいかないと桜花は必死に言い訳をするが…。
「どのみち桜花は俺と夫婦になるから必要になる。好きな模様や色は後で職人と話して決めよう」
既に決定事項だった。諦めるしかない。
「俺達もそろそろ行くぞ。本邸はこの近くだが、俺の屋敷は少し離れた場所にある。早く桜花を連れて行かないと屋敷の連中にドヤされる」
(ドヤされるって…神様に怒れる人達ってどんな感じなんだろ…怖いのかな…)
そんな事を悶々と考えていると、ヒイとスイが喧嘩を始めてしまった。
お互いピーピー鳴いて言い合ってる様に見える。
「ど、どうしたの!?喧嘩はダメだよ」
「大丈夫だ。コイツらはどっちが桜花を乗せて飛ぶかで言い争ってるだけだ」
なんとも可愛らしい喧嘩につい頬が緩んでしまう。
言い合いの結果、今回はスイに軍配が上がった様だ。スイが大きくなり、桜花が乗りやすい様にしてくれる。
だが流石に一人で乗るのは不安なので、梓拍にも一緒に乗ってもらう。
「朝餉に間に合う様に行くからな?ヒイよりスイの方が早く飛べるから早く着くかもな。スイ、少し飛ばして飛べ」
梓拍の言葉に、スイは任せろ!と言わんばかりに鳴き飛び始める。
ヒイに乗れば良かったと後悔するが時すでに遅し…。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!スピード落としてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
桜花の悲鳴が紅葉の森に木霊していた。
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