表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かくりよの乙女〜千年恋唄〜  作者: 桜並木
第一章 巡り逢い
18/24

17.父親同士の対面


「梓拍が隠世とこの街を繋ぐ門を開けてくれたから来る事が出来たんだけどさ、まさかこんな事になってるとはねぇ…」


突然現れたこの男、梓拍と似た服装をしている。しかし頭に角はなく、髪色も梓拍と違い金髪だった。

梓拍の父親らしい男性は桜花の両親達を一瞥した後、桜花に近付きマジマジと見る。


「ふむふむ…なるほど。今はこういう色なのか…良い色だね」


「あの…?」


「あぁ、すまないね。私の名前は紫水(しすい)と言う。梓拍の父親だ。よろしく頼むね。君の魂の色を見させてもらったよ。コイツらのせいで若干の澱みはあるが梓拍と暮らせば元に戻るだろうから大した問題じゃない。穢れの無い綺麗な色をしている」


魂に色などあるのだろうか?

桜花にはなんの事だかさっぱり分からない。だが、目の前の紫水からは梓拍と同じ様に安心出来る雰囲気が漂っている。


「貴様ら!こんな事してタダで済むと思うなよ!」


父親が吊し上げられた状態で騒いでいる。


(あ、お父さんの事忘れてた…)


「おや、すっかり忘れてしまっていたよ。うるさいからそのまま聞いていると良い。其方らの様な人間でも龍と姫の話くらいは知っておろう?この娘、桜花は我が息子梓拍の、龍の花嫁として迎え入れる故こうして我が直々に迎えに来た。今より桜花は我等と隠世へ帰り、共に暮らすと心得よ」


紫水のさっきまでの穏やかな顔付きが急に冷たい印象に変わったと思ったら、威圧感が部屋中を満たす。

紫水の言葉に、唾を撒き散らしながら騒いでいた父親が騒ぐのをやめ、青ざめ始めた。


「龍の…花嫁…?桜花が?そんなハズが無い…何かの間違いだ…そうだ…きっと楊花と間違えたに違いない。顔だけはそっくりだもんな…そうだ…きっとそうだ」


父親はブツブツと喋っているが、桜花には聞こえていなかった。

紫水は父親の様子に不快感を露わにし、父親を冷たい目で見つめている。

そんな紫水に気付かない父親は訴えかける。


「龍神様!花嫁は桜花では無く楊花の筈です!」


「ほう…何故そう思う」


紫水が話に乗ってきたと勘違いした父親は気分良く話し始める。


「桜花と違い楊花は才能豊かで器量も良い娘です!双子だから間違われたのでしょう!楊花ならきっと素晴らしい花嫁になれる筈です!」


父親は楊花の押し売りを始めた。

よくもまぁ自分の娘をここまで贔屓出来たものだと梓拍も紫水も呆れてしまう。


「其方何か勘違いしておろう?我等は花嫁を器量などで選びはしない。魂を見るのだ。其方が薦めるその娘、魂が穢れておる。それに…狐に憑かれておったな?魂が既に半分程喰われておるな」


「へ…き、つね?魂…?」


父親は紫水の話を半分も理解できていないだろう。ポカンとした顔をしている。


「龍の花嫁はとうの昔に桜花と決まっておる。通達はされたはずなのだが?其方の強欲な娘が桜花から精霊を奪わなければもっと早くに迎え入れられたものを…龍の花嫁は本来嫁ぐまで生家で大事に囲われて育てられなければならない。それを其方らは放棄した。相応の災いが起こると覚悟せよ」


「そ、そん…な」


紫水の言う通り、伝説の通り龍の花嫁となる者が現れた場合、家に神社から通達が入る。そして花嫁は全ての災いから遠ざけられ、夫となる龍に渡すまで大切に大切に育てられなければならないのだ。

大切に育てた度合いによって、花嫁が嫁いだ後、生家や住んでいる街に訪れる幸運も変わる。

逆に虐げて育てたら、その分の不幸が訪れるのだ。

この街に住む大人達は全員知っている事だ。

桜花の両親は、通達が来た時選ばれたのは楊花だと思い込み、確認をしなかった。


「その娘が桜花から全てを奪ったせいで我等は花嫁の所在を掴めなくなり、桜花は辛い日々を過ごさねばならなくなった。この責は重いと知れ」


紫水が冷たく言い放つ。

父親は自分達が間違っていたとは認めはしないだろう。しかしこの街の人間にとって龍の言葉は絶対。

父親は崩れ落ちるしか無かった。


「桜花、これから三人で隠世に帰る事になる。大まかな物は後で持って来させるし、隠世でも品は揃えられるけど、大切な物や今必要な物があるならまとめて持っておいで」


紫水は先程と同じ人物とは思えない程穏やかな顔で桜花にそう話かけて来た。


「わ、分かりました!急いで取って来ます!」


桜花がそう言って部屋へ向かい、荷物をまとめ始めた。


(あ、制服…どうしよう?学校へは行けなくなるのかな…?)


桜花は最後まで悩んだが、一応制服は持って行く事にした。

荷物を持って下に行き、待っていた紫水、梓拍と共に玄関へと向かう。

するとーーー。












「……行かせない」



目の前に包丁を持った楊花が立ち塞がっていた。

面白い!続きが気になる!って方はいいねお願いします。

誤字脱字等ありましたらご指摘下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ