15.過去の自分にサヨナラを
「ただいまー」
予定より少し遅く帰って来た為、怒られてしまうかも知れない、ついでにヒイとスイが見えていた場合何と説明しようかと思った桜花はビクビクしながらリビングに向かう。
リビングには両親がいて、テレビを見ていた。
全く気にもしていない。
やはり両親にヒイとスイは見えていない様だ。
「おかえり。遅かったわね」
「楊花がお前と誕生日ケーキを食べるって言ってずっと待ってたんだぞ。楊花に謝って来なさい」
「…分かった」
何故こうも楊花の事しか考えてくれないのだろうか。
遅くなった事を咎められるとは思っていたが、まさか楊花を待たせた事を咎められるとは思っていなかった。
心配すらしてくれないのは親としてどうなのだろうか。
重い足取りで二階の自分の部屋へと向かう。
荷物を置いたら楊花の部屋に行かなければならない。
行きたくないが、行かなかったら後から面倒になるだけだ。
部屋を開けようとした桜花をヒイが止める。
「ヒイちゃん?どうしたの?…スイちゃんまで」
ヒイとスイが桜花の部屋に向かって威嚇している。
部屋に何かいるのだろうか?まさか楊花?
桜花は恐る恐る部屋の扉を開けるが、何もいない。
しかし、部屋のあちこちに黒いモヤの様な物が見える。
このモヤが餓儖童なのだろうか?
部屋に入って大丈夫なのか悩んでいると、ヒイが部屋に入り、モヤをパクパクと食べ始めた。
「ヒイちゃん!?ダメだよそんなの食べて!」
家族がいる為小声でしかヒイに注意が出来ない。
そんなのお構いなしにヒイはモヤを食べ尽くしてしまった。
しかし、ヒイがモヤを食べてくれたからか、部屋の空気が綺麗になった気がする。
(お腹壊さないといいけど…)
ヒイの心配をしつつ、部屋に入って桜花は気付く。
(あれ!?梓拍から貰った御守りがない!?机の上に置いておいたはずなのになんで!?)
桜花は慌てて机の下や、ゴミ箱など思い付く場所を全て探すが見つからない。
ヒイとスイも一緒に探してくれるが、それらしい物はどこにも無かった。
「探してるのはコレ?」
不意に部屋の入り口から声がして慌てて振り返ると、そこにはこれ見よがしに御守りをぶら下げた楊花が立っていた。
「それ!なんで楊花が持ってるの!?返して!」
「あは!必死になるって事はやっぱり彼氏とかにあげるやつなんだ?地味桜花のくせに生意気」
楊花の周りには黒いモヤが纏わりついていて、ヒイとスイがそれに向かって牙を剥き出しにして唸っていた。
きっと餓儖童の本体なのだ。
何が起こるかわからない為、怖くて仕方ないが、ヒイとスイが付いてる。何より梓拍から貰った御守りは何としても取り戻さなければならない。
「彼氏にあげるとかそんなんじゃない。それは御守りに貰った物。返して」
「え〜?コレどう見ても男物じゃん。彼氏じゃ無いなら友達?アンタと同じクラスの狐坂君?彼はダメだよ?私のキープだから♪」
「そんなのどうでもいいの。それを返しなさい!」
今まで楊花に強く出た事は無かったが、梓拍から貰った大切な御守りなのだ。桜花は何と言われようが取り戻したい一心だった。
「な、何よ?私にそんな口聞いていいとーー」
「楊花こそ何様のつもり?人の物を勝手に取っていいと思ってるの?私の双子の妹はいつから泥棒になったんだろうね?警察に通報して欲しいのならしてあげるけど?」
楊花は、今までずっと桜花は言いなりになっていたから、今回も何も言い返せないで終わると思っていた。なのに堂々と言い返して来ただけじゃなく、説教じみた事まで言ってきた。
楊花には気に入らない事だらけだ。
「何よ!要らないわよこんな地味なネックレス!アンタのその態度お父さん達に言い付けてやるから!」
そう吐き捨てて、楊花は下に降りて行った。
桜花は急いで御守りを拾うと首から下げる。
思った通り、楊花がまた話を歪曲して告げ口したのだろう。父親が凄い形相で部屋に入って来て桜花の頬を叩いた。
「お前!楊花を待たせた事を謝りもしないで泥棒扱いしたそうだな!?何様のつもりなんだ!」
なるほど、御守りを拾っただけなのに…と泣き付いた様だ。
楊花と両親に怒りが湧くがそれよりも呆れてしまう。
ヒイもスイも父親に対して怒りを露わにしているが、父親には見えていない。
「楊花の言葉だけ鵜呑みにして、私の話は聞かないんだね?楊花が嘘付いてるって思わないの?」
「楊花が私たちに嘘をつく筈無いだろ!」
「私もお父さん達の娘なんだよね?自分達の娘に対する態度はおかしいとか思わないの?いつもいつも楊花楊花って言って、私は後回し。私の話をしっかりと目を見て聞いてくれた事あった!?楊花ばっかり贔屓されて、私がどんな気持ちで毎日過ごしてたか少しでも考えてくれた事あった!?」
桜花も今までずっと我慢して来たものが爆発した。
一度爆発してしまった不満は簡単には収まらない。
今まで言えなかった事、言いたかった事を全て吐き出していた。
「親に向かってなんだその口の利き方は!」
「親らしい事なんて何一つしてくれた事無いじゃない!」
「ぐ…で、出て行け!お前なんか娘でも何でも無い!今すぐ出て行け!」
「そうやって出て行けって言えば今まで通り言う事聞くとでも思ってるの?自分達の都合の良い事しか耳に入らないなんて羨ましい耳だね?じゃあ私も、私の都合の良い事しか聞かない様にさせて貰うからさっさと部屋から出てってくれない?寝るから邪魔」
そう言うと、桜花は父親を押し退けて部屋の扉を閉めようとする。
「こ…のガキが!!」
父親は桜花の髪を鷲掴みにすると部屋から引き摺り出して一階に行こうとするが、階段前に来て桜花がもがいた為手を離してしまった。
(あ…階段から落ちちゃう…痛いのかな…?)
そう思いながら桜花は階段から落ちた。
だが思っていた痛みは来なかった。
逆に、安心出来る様な温もりに包まれていた。
桜花が目を開けると、桜花を庇う様に抱きしめた梓拍が身体中から怒りを露わにして父親を睨み付けていた。
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