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かくりよの乙女〜千年恋唄〜  作者: 桜並木
第一章 巡り逢い
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14.可愛い子達をもらいました!

気付けばあっという間に時間は過ぎるもので、外は夕焼け空になっていた。


「あら大変!夕飯の支度をしないとね。みんな夕飯食べてから帰りなさいな」


祖母がそう言って大張り切りで台所へと向かう。

桜花も手伝おうと後を追って台所へと向かった。

居間に取り残された有紗は尚樹に桜花と梓拍の事を洗いざらい吐かせていた。


「って言う訳やねん。ええ加減離しぃ!俺の首が絞まっとる!」


「あぁ、ごめんごめん。うわぁ〜まさか桜花が龍の花嫁とはねぇ〜。教科書に載ってた物語って本当にあった事だったんだね」


桜花達が暮らすこの街には龍の伝説が数多くある。

その中でも国語の教科書に載るほど有名な話が龍と人間の恋の話なのである。

平安時代の物語なので徒然草や御伽草子の様に架空を混じえた話だと思っている人もいる。


「俺ん家にちゃんと作者の文献あるで?博物館に寄贈しろってしつこく言われとるけどな」


平安時代の文献なら博物館が欲しいと言うのは当然だろう。

しかし代々守って来た文献なので寄贈する気は更々無いらしい。


「ご飯が出来ましたよ〜。精霊達も一緒に食べましょうね〜。」


だいぶ時間が経っていた様だ。

祖母と桜花が沢山の夕食を運んで来た。

精霊達もお手伝いをしてくれた様で、各々小皿やら醤油やら箸やらをせっせと運んでくれていて、可愛い限りだ。

尚樹と父親は遠慮して帰ろうとしたが、祖母に押し切られ、一緒に食べる事になった。

みんなで夕飯を食べながらこれからの事を話す。


「桜花、このまま家に帰って大丈夫なの?楊花に何かされたらどうするの?」


有紗の言葉に桜花は迷う。


(今家に帰って、楊花が何もして来ないとは限らないもんね…かと言っておじいちゃん家に泊まるわけにもいかないし…)


うーん…と考えていると、尚樹が口を開く。


「そういや若は姫さんに式付けへんの?護衛にもなるしええんやないの?」


「それは俺も考えていた。もう少し後でと思っていたが…今の方がいいだろう。桜花、こっちに来てくれ」


桜花が梓拍の傍に行くと、梓拍は赤、青、黄、緑等色とりどりの綺麗な石を出してきた。


「この中から好きな色の石を選んでくれ」


桜花は赤と青の石を選ぶ。

梓拍は選んだ石を両手に持つと、何やら呪文を唱え始める。

すると、石が光を放ち形を変えていく。

光が収まる頃には石だったはずの物が二匹の小さな龍に姿を変えていた。


「ピィー!」

「キュー!」


赤い龍はトカゲの様な体にコウモリの様な小さな羽が生えていて、青い龍は腕が翼になっている様で、一生懸命羽ばたいていた。


「か、可愛いぃ〜!」


二匹ともとても可愛らしい姿をしていた。

二匹は桜花へ近寄ると周りをクルクル飛び回り、赤は右肩、青は左肩へ乗った。どうやらベストポジションが決まった様だ。


「お前達二匹は今日から桜花の護衛だ。俺が近くに居ない間しっかり護れ。分かったな」


梓拍がそう言うと、二匹は元気よく「キュー!」と鳴いた。


「この子達、名前はなんて言うの?」


「桜花が付けてくれ。コイツらはもう桜花の物だ」


「いいの?…じゃあ、赤い子はヒイちゃんで、青い子はスイちゃんにする!よろしくねヒイちゃんスイちゃん」


「「ピィー!!」」


可愛頼もしい二匹を護衛に付けてもらい、桜花は素敵なプレゼントを貰ったと内心ウキウキしていた。

そして、夕飯を食べ終わった桜花達は祖父母に別れを告げ、それぞれの家へと帰って行った。

有紗は尚樹が送って行くと言い出したので、お願いする事にした。

去り際、尚樹と梓拍が目線で会話をしていた事に桜花は気付いていなかった。


「桜花。さっきも言ったが帰ったら必ず守りは身に付けるんだぞ」


「分かってるよ。梓拍って心配性なんだね」


何故こんなにも心配するのか桜花はまだ知らない…。

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