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かくりよの乙女〜千年恋唄〜  作者: 桜並木
第一章 巡り逢い
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13.意外な人の意外な一面

「ホンマに勘弁してや!いきなり来られたら心臓に悪い言うとるやないですか!」



暫くして帰って来た梓拍だが、一人では無かった。

何故か尚樹ともう一人知らない男性を一緒に連れて来た。



「尚樹君!?なんで梓拍と一緒に?それに一緒にいる方は?」


「あ!桜花ちゃん、有紗聞いてやー!若ってばホンマ酷いんやで!俺ら家でまったりしとったのに、急に来て理由も話さんと一緒に来い言うて連れてこられたんやで!」


「ご、ごめんね?梓拍、謝りなよ」


そう言って梓拍を見たが、梓拍は既にもう一人の男性と祖父母と四人で何かを話し合っている。


「若と一緒におるん俺の親父や。親父来んなら俺来んでもよかったんちゃうん?俺まだ半人前やのに…」


そう尚樹はぶつぶつ文句を言っていた。

尚樹の家は神社だと以前聞いたのを思い出し、神主である尚樹の父親に協力を仰いだのだと桜花は思ったが…。


(ん?尚樹君はどうして梓拍の事を若って呼んでるんだろ?)


「ねぇ、なんでアンタは梓拍さんの事若って呼んでんの?」


ふと疑問に思った桜花の心情を知ってか知らずか、代わりに有紗が質問をした。


「あ〜…それなんやけど…なんつったらええんやろ…」


「今更隠す必要ないだろ。コイツらは妖狐だ。コイツの母親は白面金毛九尾の狐と言って、妖の中でもトップクラスの強さを誇る妖だ」


尚樹は言いにくそうにしていると話し終えた梓拍達がやって来てびっくり発言をした。

九尾の狐は誰だって聞いた事がある名前だ。


「き、九尾の狐って栃木県の殺生石になったって有名なヤツじゃん!?尚樹アンタ何歳なのよ」


「俺はホンマに16や!確かにあちこちで悪さしよったオカンが石になった言われてんけど、オカンピンピンしとんで?そもそも、石になっとったら俺おらんやん」


「いや、そうだけど、伝説上では倒されて石になって今も毒を吐いてるって言われてたから…いきなりのカミングアウトに驚くでしょ普通」


「話すと長いんやけどな?オカンが倒されたあの日ーーー」


「あ、長いなら話さなくていいわ」


「自分から聞いたんやん!最後まで聞けやぁ!」


尚樹曰く、九尾は殺生石になったのでは無く、元々そこにあった石の影に隠れ、石を扉にして隠世に逃げ帰ったのだそう。

しかし現世で悪さをしていたのは事実らしく、現世に余計な混乱を招いたとして、罰として100年間現世を護る様言い渡され、再び現世に来る事になってしまったそうだ。

そして、たまたま降り立った稲荷神社に、既に神主として現世に移り住んでいた妖狐の尚樹の父親と出会い恋に落ちたのだそうだ。

ちなみにその神社は縁結びで有名で、参拝客が絶えない。


「俺と母さんの運命の出会いを端折るな」


尚樹の父親が後ろから声をかけて来た。

子持ちの父親とは思えないほど若くてイケメン美人な父親だ。

尚樹の説明が不満だったのだろう。尚樹の父親が更に出会いやら馴れ初めやらを話そうとしたが…。


「お前が妻を愛しているのはよく分かっているから、惚気は後にしてくれないか」


梓拍がそれを止めた。ナイスアシストである。


「今は先程の話を桜花達に聞かせてやってくれ」


「そうでしたね。とんだ失礼を。先ずはこの度は若と姫に多大なご迷惑をおかけした事をお詫び申し上げる」


そう言って尚樹の父親は桜花に深々と頭を下げる。

それにならって尚樹も頭を下げた。


「ひ、姫?どうして尚樹君のお父さんが謝るんですか?それに尚樹君まで…」


「実は、姫の妹君に取り憑いているのは我ら妖狐一族の眷属の者なのです。名を餓儖童(がらんどう)と言いましてな。やつは妖狐の中でも異質です」


「異質…ですか?」


「餓儖童は異常な程に欲が強いのです。アレも欲しいこれも欲しいと目に入るもの全てを欲しがり留まるところを知らない。言うなればブラックホールの様になんでも吸い込んでしまう。妹君の、姫の才能が欲しいと言う感情に呼び寄せられ、そのまま取り憑いてしまったのです。取り憑かれた妹君は欲望を抑える事が出来なくなり、なんでも自分の物にしないと気が収まらなくなってしまっているでしょう…。今はまだ妹君に精霊を分け与えている様ですが、妹君は長い間取り憑かれている様子。このまま放置していては全てを吸い付くし終いには妹君の命も吸い取られてしまいます」


まさか楊花が狐に取り憑かれているなど、なんとも信じ難い話だが、楊花の物欲の凄まじさは身に染みているため、納得するしかない。


だが、取り憑かれていたままでいるのは楊花が哀れだ。

今までの仕打ちを考えると同情の余地など無いが、やはり家族の情はある。


なんとか楊花を助けられないかと考えるが何も浮かばない。


「俺が妹助けてやるから、お前は心配するな」


と梓拍が桜花の頭を優しく撫でる。




(もちろん心配なんだけど…)




桜花は何か嫌な予感がしていた。




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