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かくりよの乙女〜千年恋唄〜  作者: 桜並木
第一章 巡り逢い
11/24

10.お庭に行ったらそこは絵本の世界でした


「思ったより遅かったじゃん。朝一で来ると思ってたのに。何かあった?」


何事も無く有紗の家に着いた桜花に有紗はそう言った。

時刻は朝9時、充分朝一と言える時間だ。


「何時に来ると思ってたの?」


「ん〜…7時半くらい」


「そんなに早く来る訳ないじゃん!有紗の家族にご迷惑になるよ」


「大丈夫だって。むしろ私よりお母さんがソワソワしてたよ。「桜花ちゃんはまだ!?何かあったんじゃないの!?」ってさ。朝ごはん食べた?お母さんが桜花の分も作ってくれてるよ」


「本当!?実はお腹空いてる」


有紗のお母さんは桜花を幼い頃からとても可愛がってくれていた。

母親同士が幼馴染だった事もあり、昔はよく家族ぐるみで出かけたりしていたが、中学生になる頃から楊花の事で頭がいっぱいになった母親のせいで一緒に出かける事も無くなっていた。

それでも有紗のお母さんは変わらずに桜花を可愛がり心配してくれている。

桜花にとって数少ない頼れる人物だ。


「よし、じゃ桜花がご飯食べたら出かけよ!おじいちゃんの家行くんでしょ?」


「うん、ありがとう有紗」


お言葉に甘えて朝食をご馳走になる。

有紗のお母さんはかなり気合を入れて作ってくれたのだろう、かなりの量の料理が並べられた。

まるでホテルの朝食バイキングの様だ。


「いっぱい食べてね桜花ちゃん」


「ありがとうございます。すっごく美味しいです!」


有紗のお母さんの料理を堪能してから有紗と一緒に祖父達の家に向かった。


「よく来たな桜花!有紗ちゃんもよく来た!」


祖父達の家に着くと、早速祖父が出迎えてくれた。

祖母は台所でケーキを準備してくれているらしく、甘い香りが漂って来る。

祖母はお菓子作りが得意なので、毎年の誕生日はケーキを手作りしてくれていた。

今年はチーズケーキの様だ。


「いい匂い♪流石おばあちゃんだね!」


「ホントだ!めっちゃいい匂いする!」


「今年は特に張り切って作っとったぞ」


祖母のチーズケーキは絶品だ。

出来上がりを楽しみにしながら桜花達は祖父との会話を楽しんだ。

途中から祖母も混ざり話をしていたが、両親と楊花の事を聞かれた為、桜花は言葉に詰まりながらも最近の事を洗いざらい話した。

祖父母は桜花の話を聞いて大激怒し、今すぐ乗り込んで行きそうな勢いで、宥めるのに苦労した。


会話をしている間にケーキが出来上がった様で、祖母は台所に戻り、桜花は手伝いをするために台所へと行くと、既にお皿が準備されていたが、桜花は違和感を覚える。


「おばあちゃん、誰かお客さんでもいるの?お皿が五枚あるよ?それにこっちの小皿は何に使うの?」


この家には今祖父母と有紗、桜花の四人しかいないはず。


「あぁ、いいんだよ。みんなで食べた方が美味しいからね」


「みんな?」


「家の庭にいるみんなの事だよ。桜花にはまだ見えないのねぇ。そのお皿、全部持って来てくれるかい?」


庭に動物でも飼い始めたのだろうか?

祖母の言う通りにお皿を全部持って行く。

桜花が居間に戻ると既にケーキには蝋燭が立てられ、準備万端に整っていた。


「「桜花、お誕生日おめでとう」」


「おめでとう桜花!」


祖父母と有紗から祝いの言葉を貰い、嬉しさで泣きそうになる。

蝋燭の火を吹き消し、ケーキを切り分けて行く。

祖母はケーキを五つ切り分けてから、小皿に乗せる分を器用に小さく切って行く。


「さぁさ、天気もいいからお庭の方で食べようね」


そう言うと、祖母は小皿を持って庭の方へ行く。

桜花達も庭へ行くが、動物がいると思っていた庭には何もおらず、花壇に沢山の種類の綺麗な花が咲いているだけだった。


「みんな〜!一緒にケーキを食べましょう」


祖母がそう庭に向かって言った途端、花壇の花から一斉にホタルの様な光が飛び出して来た。

その光は祖母の周りを嬉しそうに飛び回っている。

有紗にも見える様でかなり驚いている。


「な、何この光!?ホタル!?」


「分かんない。おばあちゃん、この光何!?」


「この子達はね、みーんな植物の精霊なんだよ」


精霊なんだよと言われても理解が追いつかない。

絵本の中に出てくる想像上のモノだと思っていたから、まさか目の前に現れるとは思っていなかった。


「桜花達は初めて見るものね。私もおじいさんも昔からこの子達は見えていたの」


どうやら祖父母は神社の家系らしく、幼い頃から精霊達は見えていて、いつも一緒に遊んでいたらしい。

精霊は気に入った人間に加護を与えて、その人間の身体能力を上げたり、才能を伸ばしたりしてくれる存在だそうだ。

祖父母も結婚する前は色々な加護を貰っていたらしく、祖母のお菓子作りの才能も加護によるものだった。

本来精霊は住む場所が決まっているが、祖父母が結婚してこの家に住む様になったら精霊達も着いて来たらしい。


「でもね、桜花達が産まれた後から少しずつ数が減っていってるの。この子達に聞いても怯えて話してくれないし…。いなくなった子達はどうしちゃったのかしらねぇ…」


祖母の言葉に今まで黙っていた梓拍が急に口を開いた。







『理由はおそらくーーーーーー』




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