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第4話 第一兵器(下僕その2)

「病院……?」


 目を開ける前に亮二がそう感じたのは、消毒用のアルコールが漂う病院独特の臭いのせいだった。

 

  (誰かが助けてくれたのか、良かった……)


 安堵して目を開けると、そこには想像していたモノとはまるで違う風景が広がっている。


 両手両足を硬いベッドに固定され、仰向けに寝かされた亮二の目に入って来たのは、青くて高い……空だった。

 大きな雲が風に流され、その前を気持ち良さそうに鳥が複数飛んでいる――。

 首を横に向ければ風になびく草花が一面に広がっていて、その遥か遠くには優雅に食事をしている馬や牛が見えた。 

 

 (どうなっているんだ?)


 ずいぶんとのどかで平和な光景を見た亮二の頭は、かなり混乱した。

 

 そんな理解に苦しむ視界の隅に、音もなく白衣を着た男性が現れる。

 

 50代半ば位の、やや疲れが顔に出ている男性が身に纏う白衣には「峯岸みねぎしひさし」と書いてあるネームプレートが付けられていた。

 

「よう……」


 峯岸は非常に短い挨拶を済ませた後、拘束を解いた亮二の手首を掴んで軽く脈を計ってから、持っていたタブレットを指先で数回叩く。

 彼は少し唸ると、今度は自身の白髪混じりの角刈り頭を手のひらで数回叩き、暗殺者の様な鋭い目を更に細めて眉間にシワを寄せた。

 

「脈がまだ正常じゃないな……それに瞳も随分と青い……やはりまだ、拒否反応を起こしているのか?」 


 ブツブツと呟きながら、峯岸は亮二の顔を覗き込む。

 

「大佐が迎えに来るとは……災難だったな。これぐらいの怪我で済んで良かった方だ」

 

「あの……此処はドコですか?」 

 

 混乱中の亮二には、精一杯の質問だった。


 

『やっと起きたか……直ぐに私の部屋まで来い』


 部屋全体に、聞き覚えのある若い声が響く。

 亮二は空を睨みつけた。

 

「そう恐い顔をするな。お前は奴に逆らえない……従うしかないのさ。さあ、行った行った! 大佐がお待ちだ」 

 

『廊下をひたすら歩け』そう部屋の外へ追い出された亮二は、仕方なく廊下を歩き始める。


 壁も天井も淡い灰色の廊下は無機質に感じたが、全体が発光しているようでじわりと明るい。

 その為視界は良好で、この廊下が遥か遠くまで続いている事が分かった。


 数分進んだ後、唐突に「No.0」と書かれた黒く大きな文字が何もない廊下の壁に浮かび上がる。

 

 文字の前で立ち止まる、亮二。

「NO.0」の文字は消えてなくなり、代わりに自動ドアが現れた――。 

次回、第5話 第一兵器(下僕その3)





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