表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
96/112

096

結局朝まで飲み明かし、そのまま寒い道場でウトウトしていると

少し片付けようと現れた小室絢に揃ってこっぴどく説教を受ける。

サーラ・プナイリンナは

「もうそれくらいで。」と言うのだが

「甘いっ。」

「サーラはコイツ(エリク)にだけは本当に甘い。」

「しっかり躾けないとダメだ。」

「何よ。アンタもそのうちワタシみたいになるからっ。」

「なっ。」

「オイオイノロケてるだけかーっ。」

「黙れ化け猫っ。この大男しっかり躾けておけっ。」

「姫もだぞっ。いつまでもフラフラさせとくなっ」

「八つ当たりだわ。」

「ちょっと待てっ。何でアタシがこのワン公を」

「今更何言ってるんだよー。」

話が逸れて来た。

と、小室絢の婚約者がくしゃみをする。

「ったく。皆居間に来い。温かいスープ入れるから。」

ムチとアメだ。

綴さんは

「ワタシ達は失礼しましょう。父も母ももう起きているでしょうから。」

判りました。と小室家を後にした。

そして午後、再び小室家へ。

子供達のクリスマス会が行われる。

驚いた事に、昨夜参加したほぼ全員が再び集結し

さらに子供達に多くのプレゼントを与えていた。

ルーだけは翌日試合なので慌てて帰国。

そして何故か真壁絆を拐うように連れて行った。

(その理由は後日判明するがこの件で橘結はしばらく不機嫌だった)

エリクとサーラ王女、ニコラの母親は今日の夜帰国する。

御厨理緒は三原紹実と市野萱友維を連れ、

グレタの故郷チェコでそれぞれの家族と合流し新年を迎えるらしい。

それ以外は久々に日本で正月を迎えようとそのまま残るそうだ。

クリスマスが終わるとすぐにその準備に取り掛かる。

ニコラはこの行事をとても興味深く「観察」しようと決めていた。

彼女はサーラ王女から「新年を日本で過ごすなら小室家に行きなさい。」と言われていた。

同時にサーラ・プナイリンナは小室絢に、「ニコラに私と同じようにしてあげて。」と頼んでいた。

境内での掃除から始まり、

お守りの作成を賑やかにこなし、

そして小室家でのお節作りに取り掛かる。

早めの年越しそばを食べ終えるといよいよ本番だ。

今回巫女になるのは

小室絢、南室綴。

滝沢伊紀、宮田柚、敷島楓、箱田佐代。そしてニコラ・ルナプリア。

藤沢藍と「どうして私まで」と渋り続けながら毎年参加する宮田桃。

神巫女の装束を纏う橘姉妹が別室から現れると

全員が息を飲んだのが判った。

境内には例年になく大人数の巫女が登場し少々邪魔ですらあった。

察した箱田佐代と敷島楓、宮田柚がその格好のまま階段を通らず迂回し現れ

プラカードを持って佇む俺を焚き火越しに冷やかしている。

寒そうにしているので3人分のコートを取りに神社に向かうと

その先から滝沢伊紀がそれぞれのコートを持って現れた。

「おおっありがとうっ。」

「いえ。私も抜け出したかったので。」

どうして?

「橘姉妹もそうなのですがニコラ様は反則ですね。」

反則?

「ありゃダメだ。比べたらダメだ。」

「外国の方というだけで目立ちますのにあのお美しさはズルいです。」

「それに絢様と綴様。あのお二方も何というか風格があって。」

「皆様それぞれにこの装束がとてもお似合いで。」

「あの場にいると何とも惨めな気持ちになるのです。」

そうなのか?俺にはよく判らないが

お前達の巫女装束も悪くは無いと思う。

「何だよもう。アタシに惚れてるの隠すのに他の奴らまで褒めなくていいんだよ。」

「うそっ柚ちゃんいつそうなったのっ。」

敷島楓の誤解は本気ではないと確信が持てるので問題はないが

箱田佐代の

「本当に手当たり次第ね。」

は否定しなければならない。

突然足元から俺を呼ぶ声が聞こえた。

ノトさん。

三原家が留守になるのでと橘家で預かっていた黒猫のノト。

今までも魔女達が留守になると預かっいたので神社での勝手も知っているはずだ。

こんな寒い中に来なくても。

足元で身体をなすり付けてくるのでしゃがみ抱きかかえようとすると

彼女から飛び付いて来た。

仕方無い。コートの前を開け中に入れよう。

焚き火にあたる巫女達からは黒猫のノトさんは確認出来無かったのか

突然しゃがみこんだ俺に驚いたようだった。

「どうした。調子悪いんか?」

「疲れたなら上で休み何それ。」

お腹の中にしまったノトさんがよじ登り襟元から顔を出す。

「うわっ何だノト介かよっ。」

「本当に手当たり次第ね。」

「猫にヤキモチとか重症だね。」

そのうち飽きて家に戻るだろう。

だがノトさんは俺に抱かれたまま眠ってしまう。

気付くと年越しのカウントダウンが何処からともなく聞こえ、

今回も多くの参拝客と共に新年を迎えた。

しばらくすると宮田杏がバイクに乗って現れ

甘酒の差し入れをしてくれた。

宮田柚が連絡をしていたようだ。

「姉ちゃんも上行って巫女装束着ればいいのに。」

「冗談だろ。現役の頃だって態々避けてたのに今更着られるかっ。」

どうして避けていたのですか?

「本職と並んで立ってられるかよ。」

「お前らが今ここにいるのだってそうなんだろ?」

お見通しだ。

橘佳純から連絡が入る。

「何してんのよっ。早く戻って手伝ってよっ。」

「だってさ。」

「じゃあボチボチ戻るか。」

済まない。誰かノトさんを頼む。

「あいよ。任せろ。」

宮田柚に預ける。彼女なら適任か。

「じゃあ綸君もうちょっと頑張ってね。」

「何かあったらすぐにお呼びくださいね。」

判った。お前達も無理はするなよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ