080
目を覚ますと魔女達がいた。
すみません。どれくらい寝てましたか。
「3日も目を覚まさなかったのよ。」
そんなに
「止めろ蓮。お前前にもそんな事言ってなかったか?」
「言ってみたいじゃない。」
え?何?
「二時間も寝てないよ。」
なんだと
「頭痛とか吐き気はどうだ?」
もう大丈夫です。ただちょっと息苦しいと言うか胸が重い。
「ああ、それな。」
三原紹実が黒猫のノトを抱き上げた。
「あとでちゃんと貢いでおけよ。ノトがずっと看病してくれたんだから。」
判りました。ありがとうございますノトさん。
「ほれ、一度身体起こしてこれ飲め。」
三原紹実がハーブティを淹れてくれた。
「苦いけど効くぞ。」
渡良瀬葵が請け負った。
マリ・エル・ハヤセから話を聞き出そうと結構な時間「命令」していた。
さらに滝沢伊紀から教わった技術を用いた。
「その場で倒れてもおかしくない」と呆れられた。
「やっぱりお前は魔女の資質あるよ。」
それは褒め言葉なのだろうか。
俺はマリ・エル・ハヤセとの会話を全て語った。
「全くあの野郎。」
案の定センドゥ・ロゼへの批判が主な感想となる。
方法はともかく、俺はあの人を批判できない。
彼は一人の少女に真実を教えただけだ。
道を選んだのはその少女自身。
「だとしてもせめて靴くらい履かせてやれってんだ。」
「友維ちゃんちょっと何言ってるのか判らない。」
「つか私達に先にそれ教えておいてくれればこんな」
市野萱友維がブツブツ言い出した。
「アイツがそんな親切な事するかよ。しかも魔女相手に。」
「いやっ。アイツ綸がこうなるって判って黙ってたに違いない。」
それは考え過ぎでしょう。俺が魔女である事なんて知らないのだし
「いいんですよ綸君。言わせてあげてください。」
「そうそう。ただの八つ当たりだから。」
「八つ当たりと違うわっ。」
「綸君が心配ならそう言えばいいんですよ。全く面倒くさい。」
「これ以上無茶な事をするのは止めてって。」
「だーっ煩いっ。体調治ったんならとっとと帰れよっ。」
市野萱友維は怒って部屋から出ていった。
一体何なんだ。
「照れているだけですよ。」
「だな。」
「本当面倒臭い子ね。」
「私達3人共いい迷惑ですよ。」
「紹実さんだけで治せたでしょ?」
「まあな。ただの疲労だし。」
「凄かったのよ。必死で。電話で何言ってるのかよく判らなくて。」
「慌てて来たら紹実ちゃんが「寝てるだけだ」って。」
それは申し訳ありません。
「私だって呼ばなくてイイって言ったのに。」
「友維が「なんかあったらどうすんだよっ」て聞かなくて。」
「それだけ心配なのよ。」
「愛されてますね。」
「愛されてるな。」
「いやーん。愛されてるわ。紹実ちゃん先こさ」
「うるさいだまれ。」
魔女が集まっているのは俺の話を聞くためだけではない。
俺が倒れ、「自分が役に立つのではないか」と考え馳せた。
魔女の仲間意識の強さを感じる。
「いやいや。相手によるよ?イヤな魔女なら行かないよ?」
そうしておきます。
「身体起こせるなら友維ちゃんのとこ行ってお礼言いなさい。」
神流川蓮に促され市野萱友維の部屋に行くと
彼女は少し目を赤く腫らしていた。
大丈夫ですか?
「お前が言うな。」
すみません。ご心配お掛けしました。
「全くだ。心配するって言っただろうっ。」
もう少し簡単に事が運ぶと思っていました。
本当にすみません。
「もういいよ。無事に帰ってきたからな。」
「無事に帰って来なかったらボコホコにしてたぞ。」
無事でないのにさらに痛めつけるつもりかこの人。
「こ、いや、あー」
市野萱友維は背を向けてしまった。
「なんだその。これからも無事に帰って来いよ。」
判りましたお姉様。
「いやもうそれいいから。友維でいいよ。」
判りました。友維さん。
「ひゃーっ」
「もうヤメテこっちが恥ずかしくなるわっ」
「本当にイヤラシイ。」
背後に魔女達がいた。
いつから居た。どこから現れた。




