076
ニコラ・ルナプリアも魔女の作戦には驚いていた。
呆気にとられていた。と言って差し支えない表情だ。
サーラ・プナイリンナはその話を魔女から聞かされた時に
「面白そうね。やりましょう。」と即答していたらしい。
当事者である筈の俺やニコラ・ルナプリアの意思は介していない。
「全部任せたって言ったじゃん。」
任せろって言ったからですよ。
実況証拠はある。どうやって本人にそれを認めさせるか。
罠にかける。が何より手っ取り早い。しかしノーリスクとは言えない。
当事者と関係者が揃って和やかに打ち合わせしているが
これはリスクではない。裏切り者はこの中にはいない。
俺が危惧しているのはそんな事ではない。
「お前の言いたい事は判るから口にするな。」
三原紹実は忠告した。
「そうならないように私達がここにいるんだ。」
「約束したでしょ。ハッピーエンドにするって。」
サーラ・プナイリンも俺の考えている事を把握している。
「リスクマネジメントは年長者の仕事だ。」
「若い連中は好き勝手に動いてくれればいい。」
「絢ちゃんからリスクマネジメントなんて言葉が出るなんて驚きだわ。」
「そう言う綴や私達が子供の頃好き勝手やってたのって」
「紹実ちゃん達大人がしっかりしてくれてたんだなって最近になって判ってさ。」
「いやいや。私何もしてないから。」
「そうよ。紹実ちゃんじゃなくて私がしっかりしてたからよ。」
綴さんも一緒になって軽口に参加する。
「綸。慎重なのもいいけれど度を越すとただの臆病よ。」
「言ったはずよ。思いっきりやれって。」
「それともここにいる私達じゃまだ物足りない?」
橘結。南室綴。小室絢。
サーラ・プナイリンナ。
三原紹実。
これ以上頼り甲斐のある大人はいないでしょうね。
「おうっ私はよっ。」
市野萱友維。貴女は大人と呼ぶにはまだ若い。
「私達は老けてるって言いたいの?」
あ、いやそんなつもりは
「ほらニコラ。アナタのamant(恋人)が困ってるわよ。」
「ええっ。ああそうですね。皆さん私の大事な人を困らせないでください。」
サーラ・プナイリンナはニコラ・ルナプリアに何を言わせている。
翌朝、通学路で皆にそれを暴露する橘佳純は何を考えている。
「えー。言わなきゃ判ってもらえないじゃん。」
言うなら全部説明しろ。
「綸君とニコラが昨日キスして恋人になったんだよ。」
だけで終わらせるな。
「ちょっと私がいながらどーゆー事よっ。」
箱田佐代も何の説明を求めている。
いや俺に凄まれても筋違いだ。
橘佳純はどうしてニヤニヤしているだけで説明しない。
「マジ?マジでチューしたん?ファーストチューはどんな味だったんだ?」
確認する箇所が違うぞ宮田柚。
「佳純様もお人が悪い。これでは綸様からキスしたように聞こえますよ。」
ニコラ・ルナプリアからされたわけでもないぞ滝沢伊紀。
お前はその場にいただろう。
「リンは突然私を抱き寄せて無理矢理私の唇を奪いました。」
ニコラ・ルナプリアは何を言っている
「お前最低だな。」
その話を信じる津久田伴はどうかしている。
そもそも設定的にはニコラ・ルナプリアが俺の唇を
橘佳純。泣くほど笑っていないでしっかり説明してくれ。
「はーっはーっ。お腹痛い。」
「大丈夫だよ。皆ちゃんと判ってるから。」
「誂ってるだけだよ。」
なんだと?
実際こいつらは、橘佳純の最初の一言だけで全て把握していた。
「だって綸がそんな簡単にキスするはず無いじゃない。」
「マジだったら佳純がこんなニヤニヤしてねぇって。」
「つーかお前も気付けよ。」
全く簡単に言ってくれる。
あまり俺とは関わらないようにしなければならないのに。
これからは一層そうしろよ。
「は?何でよ。」
いつ誰がどんな方法で俺に接触してくるか判らない。
俺と仲良しだと思われたらお前達も
「判った。お前バカだろ。」
「お前が危ないってのに黙ってられるか。」
こんな時敷島楓がいてくれたら宮田柚を黙らせてくれるのに。
箱田佐代が代役に
「嫌よ。何でこんなジャジャ猫の面倒。」
「ジャジャ猫って何だコウモリ野郎。」
人の気苦労も知らずに勝手な事を
「絢姉ちゃん言ってたじゃん。好き勝手やれって。」
捉え方が違うような気がする。
「違わないよ。私達がどうこうすべきなら最初からそう言うって。」
どうかな。相手は魔女だからな。
「うわっ酷い。でもその通りなんだよなー。」
「あの人達って肝心な事言わないで困ってる私達見てニヤニヤするよね。」
今まさに橘佳純が同じことをしていると思うのだが。




