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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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075

「紹実ちゃんはニコラの事を案じているの。」

相談に行くと橘結は教えてくれた。

フロレンティナ・プリマヴァラの正体が「ルナプリア」である事実。

夫(ニコラの父)はどこまで把握していたのか。何も知らなかったのか。

どちらにしてもその身内はどのような処分が下るのか。

サーラ・プナイリンナの裁量次第なのでしょうか。

「最終的な判断はサーラが下すでしょうね。」

「ただね、日本にいる私達には知らされていないけど」

「向こうではイロイロあったのよ。」

プナイリンナ家とその親しい一族に対する「嫌がらせ」。

地位を貶めようと多くの策略と陰謀が張り巡らされていた。

「サーラがニコラの母親を許しても他の一族が許さないかも知れない。」

橘結はサーラ・プナイリンナの苦悩を思い馳せている。

橘結は過去にセンドゥ・ロゼからその身を狙われた。

それも元を正せばティナの入れ知恵による。

センドゥ・ロゼは自分が利用されている事実をも利用していた。

彼の目的が他にあったとしても、それに乗った時点で同罪だ。

「でも私は皆が守ってくれたから。」

真壁絆

「そうね。キズナ君もその1人。でもそれだけじゃ無いよ。」

「この街の皆が私達橘家を守ってくれているの。」

「ずっとずーっと昔から。」

サーラ・プナイリンナと橘結の立場は似ている。

ノブレス・オブリージュ

「うん。理緒君はもう少しくだけてロールモデルって言ってたかな。」

それは御厨理緒が魔女だからでしょうね。

「もっと身近に言うならギブアンドテイクね。」

「私としてはこっちのがいいな。」

しかしサーラ・プナイリンナは彼女を慕うヴァンパイアに対してその態度を示さなければならない。

それが義務であり、プナイリンナ家を守る手段でもある。

「直接話してみたら?」

はい?


連絡先を教えてもらえるのだと思っていた。

メールアドレスなり電話番号なり。

だが彼女は態々俺に会いに来た。

橘結のその言葉の翌日の夜には出発し、翌朝には橘家に到着した。

「何か私に意見があるそうね。」

橘結は何を言ったんだ。

意見とかそんなつもりはありません。

「私もアナタと話たいと思っていたのよ。」

どうして俺と?

「何言ってるの。一番の当事者でしょ。」

はい?

「もしかして何も聞いていないの?」

聞いていないって、何を?

「全く魔女らしいわね。」

サーラ・プナイリンナはとても楽しそうに(嬉しそうに見える)教えてくれた。

俺はもう一度「餌」にされている。

フロレンティナ・プリマヴァラを白日の下に晒すには相応の手段が必要となる。

「リン・ナムロはニコラ・ルナプリアのキスを受け入れたの。」

この人は何を

「ちょっと聞きなさい。」

「元々ルナプリア家とプナイリンナ家は親しい間柄だからそれ自体に問題は無いの。」

「でもね、ここでリン・ナムロがとうとう本性を現すの。」

本性?

「カスミ・タチバナを人質にタチバナの力を手に入れた。」

「判るわね?この状況をティナが見逃す筈は無い。」

その状況は判りますが俺とニコラ・ルナプリアがどうのこうのとか

本性を現すとか全く聞いていません。

「仕方無いわよ。魔女が考えたんだから。」

理由になっていない。

「それで?」

はい?

「ワタシに言いたい事があるのでしょ?ホラ言いなさい。」

意見ではなくお願いです。

「大抵の事は聞いてあげるわよ。」

ニコラ・ルナプリアが悲しまないようにして欲しい。

それを聞いたサーラ・プナイリンナは無言で俺の目をじっと覗き込んだ。

「リンはメニューに無い料理を注文するのが趣味なの?」

そんな趣味はありません。

でも俺にそんな趣味があったとしても

その料理人が作れないような料理は頼みません。

ヴァンパイアの王女様相手に俺は随分と生意気な口を聞いている。

「いいわ。約束してあげる。ニコラ・ルナプリアが笑顔になるエンディングにするわ。」

あっさりと言い切った。

この人ならそうできる。

俺は何の疑いも抱くことなくそれを信じられる。

「リンのキスの相手ですものね。」

してませんよ。


その後魔女を含めた関係者が呼ばれた。

三原紹実と市野萱友維はずっとニヤニヤしている。

俺はともかくニコラ・ルナプリアに事情を説明するべきかと。

「そんな事したら折角得たかも知れない信用をまた落とすじゃないか。」

本人がそれを言いますか。

「よく判らない。ワタシはリンがそうしろと言うならそうする。」

「おおうっもう恋人気取りか。」

「気にしないでねニコラ。魔女って基本こんなんだから。」

「こんなんって何だ。魔女の彼氏がいるくせに。」

魔女が加わるとすぐに話しが逸れる。

とにかくニコラ・ルナプリアには魔女である貴女達から事情を話してください。

「お前は人でなしかっ。」

ヴァンパイアですから。


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