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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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翌日の登校中、二人の事をニコラ・ルナプリアに確認するが

「いえ、ハーゲン家ヴァンパイアは聞いたことがないです。」

もう一人、マリ・エル・ハヤセは

「フィリピン系かと思われます。」

答えた滝沢伊紀は何か心当たりがあるのか。

「マリエルはフィリピンではポピュラーな名前です。」

「それにアスワンとかアスワングと呼ばれるヴァンパイアの神話があります。」

なるほど。それを理由に「イジメ」を受けても不思議ではない。

だが信用するにはまだ情報が足りない。

もう少し話しておくべきだったか。

「リン。ワタシ、ずっと気にしていた。」

ニコラ・ルナプリアが確認する。

「リンはどうして私を信用したですか。」

「リンの昨日の二人は信用していない。私と何が違うか不明。」

俺の信じている人がお前を信じているからだ。

俺は橘結を信じ、彼女はエーリッキ・プナイリンナを信じている。

それ以上の理由は無い。

だが今回の二人は違う。

2人は突然目の前に現れた。王女から紹介されたわけではない。

2人は「王女を信じている」と言ったが俺は王女から何も聞いていない。

ニコラ・ルナプリアの事はエーリッキ・プナイリンナから直接話しを聞いた。

それに、もう一つ話を聴いて思ったんだ。

どうして俺が一人になるのを待ったのか。

橘佳純に直接促すべきじゃないのか。

俺達がどの程度の情報を掴んでいるのか判らないのなら

「南室綸が橘佳純を裏切る」可能性を第三者が知り得ている現状で

橘佳純本人がそれに気付かないと考えるのは不可解で理屈に合わない。

「言われてみるとそうね。」

当の橘佳純も納得した。

おそらくあの二人は「実物を確かめに来た」程度なのだろう。

「ただこのままだと綸のファーストチューが風前の灯火だな。」

宮田柚は何を言っている。

「儀式的なモンはまだ有効なんだろ?」

儀式って何だ。

「お前とチューしたらあの王女味方に付くんだろ?」

「あ、ねえ。それずっと気になってたんだけど。」

箱田佐代は当初からこの奇妙な儀式を疑問視していた。

「綸とキスしたらどうのこうのって話と佳純の代理って話が繋がらないんだけど。」

俺もずっとおかしいとは思っていた。

俺が橘佳純の「替りの囮」になるのは

俺が橘佳純の近くにいて、いつでも手に入れられるから。

奴らが直接橘佳純に手を出して御厨理緒率いる魔女軍団を敵に回したくない。

俺を間に入れることで「失敗」しても奴らにダメージは無い。

「うん。囮の件はそれで納得できるわ。でもキスの件は?」

最初は不思議だった。だが相手がヴァンパイアだと聞いて納得したよ。

俺にキスすることでプナイリンナ家が後ろに付く。

橘結と親友であるプナイリンナ王女の脅威を無視できるって事だ。

俺がどっちに転ぼうともプナイリンナ家との繋がりは確保できる。

同時に、俺にも「プナイリンナ王女がそうしたように」と印象付ける。

ただの挨拶のキスを

ヴァンパイア同士の「契約」のような意味を持たせる事で

他の連中に対して俺と王女との関係に信憑性を持たせてしまった。

ニコラ・ルナプリア。

「はい?」

俺とキスをすると呪いが解けるような説明を受けただろう?

あれは多分、ルナプリア家にロゼの分家が接触する可能性を考慮したからだ。

「そうですね。私もその結論に至りました。」

「よく判らないわ。だいたい綸にキスする動機が違うじゃない。」

元々ルナプリア家はプナイリンナ家と親しいのだろう?

「はい。親交古い長いです。」

だから動機は関係無いんだ。むしろプナイリンナ家を守ろうと動いてくれれば

プナイリンナ家がロゼの分家と組んだとしてもそれを正義と信じて付いてくるだろう。

王子が「王女の悪戯」だと説明したのも含め、

プナイリンナ家がどう動こうとも

「ルナプリア家は正義に徹した」と他者に知らしめる事ができる。

カオルンが恐ろしいのは

相手にそれを信じさせてしまう状況を相手自身に作らせてしまう事にある。

相手を「そうしなければならない状況」に追い込むのではなく

「そうすることが何より得だ」と思い込ませる。

選択肢を削るのではなく、より太い選択肢にする事で

「誘導されている」懸念を消してしまう。

「あー。多分半分は正解だけどもう半分は違うと思うなー。」

橘佳純はニヤニヤしながら言った。

その半分って何だ。

「最初から言ってたじゃん。面白そうだからって。」


俺の予想はほぼ正解だった。

マリ・エル・ハヤセとトーネ・ハーゲンは

「悪魔のような」奴らそのものだった。

二人は俺の真意がどちらを向いているのかを確認しに来ているだけだった。

二度目の接触は翌土曜日。同じ場所、時間。

その内容は俺自身の動機の確認。

「どうしてリン・ナムロはカスミ・タチバナに叛意を抱くのか。」

どうして俺が仕えなければならない。その理由が無いからだ。

今の俺の居場所は俺の意志とは関係ない。

俺は自分の生きたいように生きる。

そして生きやすいように生きるには橘佳純の力は魅力的だ。

邪魔をするならお前達もそれなりの覚悟をしておけ。

「臭いっ」

市野萱友維から教わった通りに言っただけです。

「で、信じたのか?」

確認はしていません。その台詞を言い残して帰れって言われていたのでそうしましたから。

「まあいいや。信じようと信じまいと餌には食いついた。」

どうやって釣り上げるつもりですか?


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