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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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006

その日の夕方。落ち込む伴を見兼ねた宮田桃が声をかける。

「伴は何で剣道やってるんだ?」

「強くなりたいからっス。」

「お前は充分強いよ。」

「桃さんにはともかく素手の綸にも勝てないって。」

「アタシも偉そうに言えるほど詳しくは無いんだけどさ。」

「剣道やら空手やらって、結局人を殴って倒す技術だろ?」

「そうっすね。」

「お前はそれをやっているんだよ。」

「はい?」

「でもこの道場に通ってるとな、そういう奴らに勝つ方法が判るんだ。」

「よく判らないっス。」

「うーん。勝つ事と殺す事は違う。って事かな。アタシにもよく判らん。」

翌日。この訳の分からない会話をどうして俺に聞かせるのか。

判ったのは「宮田桃にも判らない」事だけ。

「で、綸。お前は絢先生に何を教わっているんだ?必殺技とか習ったんか?」

いや何かを教わっている覚えはない。毎回ボコボコにされているだけだ。

「吸血鬼とか狼男ボコボコにするとか恐ろしい人だよな。」

そうだな。

「じゃあ何でだ。だいたい道場通いは高校入ってからだろ。」

いや、この街に来る前まで別のとこで少し。

「練習なら俺もたくさんしている。ゲロ吐くまで竹刀振ってる。」

「なのに何であんなに簡単にお前のが強いって言い切ったんだ?」

俺が知るか。

小室絢と敷島楓にボコボコにされ続ける自分が強いなんてとても思えない。

津久田伴の身体能力の高さも体育の時間を見て知っている。

上背もある。ヒョロい俺と違い線も太い。パッと見高校1年生には見えない。

本気で殴り合いのケンカをしたら「負け」は無いだろうが「勝てる」気もしない。

それから「益々」と言っていい。津久田伴は俺を見張るようになった。

剣道の稽古が休みの日でも態々道場に現れ俺が殴られているのを眺めている。

「秘密の特訓をしている」とでも思ったらしく

道場終わりで橘佳純を送り届けた後、家に帰るまで着いてくる。

綴さんは面白がって伴を家の中に招き入れ夕食まで振る舞う。

これじゃあ本当にトモダチみたいじゃないか。


その津久田伴が何かと俺に話しかけるようになった事で

他のクラスメイト達とも僅かではあるが話すようになってしまった。

その一点には感謝している。

津久田伴が俺の近くに居なければ誰も俺に近寄らない。

本当に有難い。

「どうした?ニヤニヤして。」

敷島楓。彼女は俺が一人でいると話しかけてくる。

どうもしない。

「イヤラシイ奴だ。言えない事なんだな?」

敷島楓は何を言っている。

ちょうどイイだけだ。

「何?何がちょうどイイの。」

クラスメイトとの距離。

「んーーっ。聞くの怖いからもういいや。」

勘がイイな。

「で、伴ちゃんとはその後どうよ。」

何が聞きたい?

「伴ちゃんから恋の相談とか受けてないのかね?」

何だそれは。

「いやいやホラ、伴ちゃんが桃姉ちゃん好きなのは知ってるな?」

俺に協力しろって言ったからな。

「おっ。それそれ。そーゆーの頂戴。」

「で、何かしてんの?」

今のところは何も。

宮田桃とは週末に道場で会う程度の関係(しかも毎週ではない)。

その場でいちいち「伴はイイ奴ですよ。」とでも言えと?

「それもそうだ。」

敷島楓は思慮深い。思慮深いくせに結構しつこく質問をぶつけてくる。

その質問で傷つかないとは限らない。そんな事も承知で聞いて来る。

俺が敷島楓を尊敬するのは、

彼女はその傷を癒そうとして、その相手の傷口を見付けているからだ。

宮田柚が殆ど何も考えずに行動するのは

きっと敷島楓が隣にいるからだろう。

「まったく伴ちゃんも大変だよなー。」

相手が宮田桃だからな。

「で、綸には何か無いのかね?このテの話。」

無いな。

「即答かよ。」

俺は、いや、敷島楓に聞きたかった事がある。

「うん?」

お前は俺が怖くはないのか?

「怖いってなんで。」

俺は吸血鬼だ。

「佐代ちゃんだってそうじゃん。私なんて飛縁魔だぞ。」

「それに比べたらヴァンパイヤなんてクールじゃん。」

クール?

「柚ちゃんなんか猫娘だもんな。イイよなぁ。」

いいのか?

「少なくともこの街で綸君が吸血鬼だからって理由で」

「他人から疎まれるような事はないよ。」

そうなのか?

「私の知り合いの魔女なんてその昔吸血鬼燃やしてるからな。」

は?

「それもこれもあのお姫様が私達を守ってくれているから。」

敷島楓はこの街で生まれ育った。

津久田伴もそうだ。

宮田姉妹も。

「綸君もそうだったら良かったのにな。」

南室綴はどうして俺を拾ったのだろう。


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