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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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059

公園で箱田佐代と宮田柚と合流。

ニコラ・ルナプリアは箱田佐代を見るなり声をかけた。

「昨日話しを出来ませんでした。アナタもヴァンパイアですね。」

「一応ね。」

「知っていました。日本にもヴァンパイアの一族いるだです。」

「日本では吸血鬼って呼ばれているわ。血を飲まないのに。」

「気にしないですよ。ヴァンパイア、その言葉は誰かが勝手に始めた。」

「貴女は自分がヴァンパイアであるって事に誇りを持っているのね。」

「少し異なります。」

ニコラ・ルナプリアは自分の胸に手を当て、思いを馳せ目を伏せ続けた。

「私、ヴァンパイア。及び、私、ルナプリア家に産まれた。」

種族にではなく、その家(家族かも)に誇りを抱いている。

滝沢伊紀も似たような事を言っていた。

「継ぐ者」とはつまり、この事を指すのだろう。

「あー。」

宮田柚が少々不服そうな、それでいて少々呆れて言った。

「アタシは宮田家に産まれてまあ良かったとは思うけど猫娘とか無いなー。」

「ネコムスメ?」

「直訳するとキャットガール?」

「やっぱりっ。」

ニコラ・ルナプリアの目が輝いた。

「アナタpisică(猫)。そうですなのねっ。」

彼女は満面の笑みで宮田柚に駆け寄り顔に触れようと手を伸ばすが

「噛みますか?」

「噛むかっ。」

途中津久田伴の合流を待ち、今の状況を全員に説明する事になった。

橘佳純が狙われた。

対象を俺に替えさせようとしている。

「で、私達がそれを守る。と。」

違うだろ。

皆は橘佳純を守り続ける。俺は橘佳純を狙うフリをしている。

「ちょっと待て。留学生は何処まで事情知ってるんだ?」

津久田伴の指摘はもっともだ。

その説明を宮田柚が試みるが

「よく判らん。」

「楓がいたらなぁ。」

と、敷島楓の不在を嘆くだけになってしまった。

代わりに全ての事情を知る滝沢伊紀が恙無く説明をしてくれたので助かる。

気になるのは昨日からその滝沢伊紀の口数が少ない事。

元々お喋りではないが、それでも俺が気付くほどだ。

体調不良なら無理せず休ませるべきだと思うが。

橘佳純に確認すると

「んー。私も気になったんだけど本人が大丈夫って言うからねー。」

「それに体調どうのこうのじゃないみたいなの。」

様子がおかしいと気付いたのは昨日。

「彼女が来た事と関係あるのかもしれないわね。」

「それとなく聞いてみるから。」


放課後、揃って橘家に向かった。

津久田伴、宮田柚、箱田佐代がそれぞれ帰宅しようとしたが

「今更関係無いとか言わせないわよ。」

橘佳純がそれを認めなかった。

公園を抜け、長い階段を昇ると

境内には橘結と、エーリッキ・プナイリンナ。そしてもう2人。

「姉ちゃん。」

真っ先に声を出したのは宮田柚。

「おう。おかえり。」

宮田桃ではなかった。

アメリカで友人の柏木梢と会社を立ち上げた

宮田家三姉妹の長女、宮田杏。

そしてその隣の大男は誰だ。

「うおっ。マジかよっ。ルードスロットだぜおい。」

聞いた事のあるような名前だ。

「アメフトの選手だよっ。すげぇ本物だよおいっ。」

と、その大男は大きな口を開けながら駆け寄り

「オーウ子猫ちゃ~ん。ユーがユズちゃんねー。」

いきなり馴れ馴れしく宮田柚に抱きつく。

「ギニャっ。」

宮田柚はおかしな悲鳴を上げて振り払う。

「なっ何だお前っ。姉ちゃん誰この不審者っ。」

「不審者呼ばわりされてるぞ。」

「フシンシャって何ねー。ワタシアナタのお姉さんの大事な男よー。」

「大事な人って何だっ。誤解されるような事言うなワン公。」

この大男こそ、グンデ・ルードスロット。

エーリッキ・プナイリンと真壁絆の親友で、狼男。


中には三原紹実と市野萱友維がいるのだと思っていた。

少なくともどちらか一人。

だが魔女はこの場にいない。

座り、お茶を飲み、人心地がつき

「じゃあ主役の綸君。質問をどうぞ。」

主役?主役は貴女と橘佳純では

「いいからほら。聞きたいことあるでしょ。」

それでは。

ニコラ・ルナプリアの来日の目的。

「そこ?」

他に何が。彼女は事情も判らなず俺の唇を奪おうとはるばる現れた。

事情は知るべきかと。

「まあそうね。混乱しているのは彼女ね。」

橘結は最初から判りやすく、全てを説明してくれた。

前提として

プナイリンナ家とタチバナ家はとても親密な間柄である。

リン・ナムロはタチバナ家に仕えている。

リン・ナムロはタチバナ家の次女の力を狙っている。

それはサーラ・プナイリンナの「キス」による些細な悪戯の結果である。

ニコラ・ルナプリアはエーリッキ・プナイリンナのお願いにより

その「悪戯」に上書きすべくリン・ナムロの唇を奪う。

留学はこのミッションの口実にすぎない。


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