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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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「紹実ちゃんが貴方の事を気に入った理由が判りましたよ。」

藤沢藍からの教えを終えた後、彼女はそう言って俺を褒めた。

「魔女としての資質は理緒君よりありますね。」

御厨理緒。現在最強の魔女。

「まったくあの人は僕は魔女じゃないからとか言い続けてたくせに。」

俺はどうやら愚痴を聞かされている。

昼食を挟み、渡良瀬葵からの教えを受ける。

三原紹実の言う「仕上げ」とは

覚えた魔法を実戦でより「効果的」に使う方法。

同時に、その教えとは矛盾する魔法としての本質。

「結界」も「命令」も、その本質は同じ。

「結界」は、自らとその周囲を「守る」魔法。

「命令」は、医療目的での利用から生まれた魔法。

「病は気から。て言うだろ?あれは本当なんだ。」

「この魔法は元々、患者の「生きたい」って意志を高めるためのものなんだ。」

映画で見たことがある。あとは本人の生きたいと願う力次第です。とかなんとか。

「魔女の魔法は、決して他者を傷付ける目的で使ってはならない。」

「私らが言っても説得力無いけどな。」

噂だけは伺っています。学生の頃に相当暴れまわったとか。

「暴れたのは主に友維だけどな。」

渡良瀬葵は心療内科、精神科、脳神経科を学び

それぞれを自らの「魔法」とリンクさせ「医療」として役立てようとしている。

説得力が無い筈はない。

リビングに戻る早々、その渡良瀬葵が三原紹実に詰め寄った。

「この子、どうするつもりなんですか。」

「とうするって何だよ突然。」

「紹実さんはこの子を何者にしたいのかって聞いているんです。」

「そんなの私が知るかよ。魔法を教えてくれって言ったのはコイツなんだぞ。」

「うそ。」

驚いたのは藤沢藍も同様だった。

「なあ友維。私達が強要した事なんて一度だって無いよな。」

「無いよ。二人共随分と綸の事心配してるけど私達を責めるのはお門違いだな。」

そうです。強要はありませんが勧められてそうしました。

「どうしてそんな馬鹿な事。」

強くなりたいから。それ以外の目的はありません。

「いやそうじゃなくて、どうしてよりにもよってこんな2人に。」

「こんなって何だこの野郎。」

帰り際、2人に改めてお礼を伝えるが

「判っているでしょうからもう二度と言いません。目的と手段を間違えないでくださいね。」

魔女は他者を傷付ける存在ではない。

「お前らが言っても何の説得力も無いな。」

「貴女が言わないでください。」

「全くだ。」

判りました。約束します。2人の名を汚すような真似はしません。

「なるほど。」

「な。」

2人は何に納得したんだ?

「それから友維ちゃんと仲良くしてくださいね。」

「粗野で乱暴で意地っ張りで面倒くさいけど根はイイ奴だからな。」

この人達は何を言っているのだろう。


そして高2の夏が終わる。

何かをしたようで何もしていない。

ただ日常の繰り返し。

「タイミング的に留学生が来るわ。」

箱田佐代は言い切った。その根拠は?

「毎年ではないようだけど受け入れているのよ。」

二年生は行事が多い。受験の負担もまだそれほどでもない。

例の奴らがこの状況を利用しないとは限らない。

教室に入り、橘佳純達にもその話をした。

「プナイリンナ王女もそうよ。」

「あと友維ちゃんの知り合いの魔女も来たって言ってた。」

なるほど有り得ない展開ではない。

本当に留学生が来たなら要注意だろうな。

「でもそうしたら教室でも佳純とはあまり話せなくなるわね。」

「あからさまに敵意を見せる必要もありませんよ。」

滝沢伊紀が続ける。

「わざとらしいと翻って怪しまれますよ。」

「そうね。元々綸君から話しかける事なんて滅多に無いし。」

「ホント少しは気を使いなさいよ。」

「言われ放題だな。」

推測通り留学生は現れた。

「ニコラ・ルナプリア(Nicola Lunăpliă)」

「ペンシルバニアから来ました。」

本名はオルロックだったりしないだろうな。

ルーマニアと言わないのは俺へのメッセージと捉えるべきか。

どうやら思慮深い。学校でどうこうは無さそうだ。

と思ったのが甘かった。

「リン・ナムロ。」

彼女の隣にはまだ教師がいる。

クラス全員の目線が彼女に注がれていた。

その彼女が俺の名を呼んだ。

当然、視線は俺に集まる。

「貴方の唇を奪いに来ましたですよ。」

一瞬静まり返り、そして森の中で風が舞ったような音が教室内で広まった。

「なんでだっ」

津久田伴が態々立ち上がって叫んだ。

「なんでこいつばっかり。こいつばっかりーっ。」

こいつばっかりって何だ。

「箱田も敷島もっ。滝沢だって宮田だっ」

「うるせえっ勘違いされるような事叫ぶなっ。」

教室がザワつく。

「違うぞっ。他の奴らはともかくアタシはコイツと何も無いからっ。」

「私だって無いわよっ。」

「津久田様っ。誤解を招くような発言は控えてくださいっ。」

「伴ってめぇまた泣かすぞっ。」

「またって言うなっ。」

この騒動に、ニコラ・ルナプリアが俺を睨む。そして橘佳純に向かって

「カスミ・タチバナ。貴女の純血は私がお守りするだです。」

「なんですと?」



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