表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
51/112

051

学校の行事もイロイロとあった筈だ。

だが殆ど覚えていない。

俺の日常の全ては学校が終わってからに詰まっている。

あの日以降も俺の立ち位置は何も変わっていない。

南室家の者として橘家の者に仕える。

残りの連中は少々方針の変更をしたようだ。

「仕えられる」側の心境も変化していた。

「南室綸の唇は私達が守る」

何だそれは。

「面白そうだから。」

宮田柚が即答した。

「だってお前まだなんだろ?」

まだ?

「ファーストチュー。」

まだだが。それが理由なのか?

「だって可哀想じゃんそんなの。」

可哀想?言っている意味がよく判らない。

「もしかして自分がどうして唇狙われているのかよくわかって無いんじゃないの?」

何かの「例え」とか冗談じゃないのか?

「やっぱり。」

南室綸にキスをするとプナイリンナ家の庇護が受けられる。

いやしかしそれはオカシイ。

王女と橘結は親友だ。それではまるで

「それも聞いて無かったの?」

プナイリンナ王女が「面白そう」と言ったのは

南室綸の橘家に対する反抗的な態度を受け入れた事の証明。

つまり俺がそうすればプナイリンナ家も橘家と敵対する。て事か?

「判った?」

これはかなり深刻な状況だ。

俺はただ俺が「焚き付けられ」たり「煽てられ }たりする程度だと思っていた。

だが俺とキスをした者(またはその一族)は

欧州の、吸血貴族に限らず政界や社交界において

絶大な影響力をもつプナイリンナ家の「同門」となれる。

「揺さぶりだよねー。」

おそらく敷島楓の指摘が正しいのだろう。

「だとしても綸様の唇を弄ぶような作戦には品が無いというか。」

「いやいやあのお姫様を下品呼ばわりとか伊紀は何様なんだよ。」

下品かどうかはともかく確かに有効な案だと思う。

「でも王女様は単純に面白そうだって理由しか無いと思う。」

橘佳純が言い切る根拠は?

「何となくよ。私だって見たいもん。」

見たい?何を?

「綸君の困った顔。」


6月に入ってすぐの平日。

放課後、三原家で市野萱友維の教えを受け

夕食の準備をしているときだった。

「綸。急で悪いけど魔女二人追加な。」

全部で8人分か。

「は?来るの二人だけど?」

魔女の食事は一人で二人前の計算しているので。

碓氷(うすい) (かおる)

利根(とね) 芳乃(よしの)

二人共隣の街の女子校の教諭。

「んで恋人同士。」

「ちょっソレ関係ないでしょ。」

「大丈夫だよ。コイツ何でも受け入れるから。」

話は食ってからだ。と先ずは食事。

食事中の会話は日常的なやりとり。

だからこの時は知り合いの魔女が遊びに来た程度だと思っていた。

食後、紅茶を淹れてくつろいでいる間に俺は片付け。

それが終わると帰宅する。のだが

「綸も座れ。」

と片付け終わりの俺を呼ぶ。

「前に言っただろ。諸々の作戦を考えてる魔女の頭脳。」

策士と呼ばれている魔女。

「いくつか情報が入ったから友維と摺合せしようと思ってね。」

それでどうして俺も?

「お前当事者だろうが。」

俺にとって「当事者」とは常に橘佳純だ。

「え?何。この子も佳純を狙ってるの?」

その設定にしたのは貴女だと聞きましたが。

「いやそうじゃなくて」

「あー違うよカオルン。コイツはこーゆー奴だから話進めて。」

「カオルンて言うな。」

何の話をしているのか判らない。

碓氷薫と、御厨理緒経由で情報を集める市野萱友維との話し合い。

結果

「どうやらお前の唇を狙う連中は近日中に現れる。」

欧州での魔女による「根回し」が予想以上に効果的だった。

「悪魔のような」奴らが単細胞なのではなく

プナイリンナ家の後盾の魅力がそれほど大きいのだと捉えるべきだ。

それにしても。

「うん?」

どうしてキスなんですか?

「カオルンの趣味じゃない。」

「趣味違うわっ。」

「ヴァンパイアのお姫様がお前を迎え入れるのにキスをしたから。」

「ソレ以外に理由なんて無いっ。」

「嘘だ。」

「ウソだね。」

「そうね嘘よね。」

カオルン嘘つきなのか。大丈夫なのかこの人に任せて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ