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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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「キスをすると身内」

ヴァンパイアのコンベンションではない。

「でもお前王女にキスされたじゃん。」

頬に軽く挨拶として。

「でも本人が「面白そうね」て言ってたぞ。」

王女に確認済みなのか。

俺の唇を狙うのは「悪魔のような」奴らではない。

そいつらと組んだヴァンパイア。

おそらくロゼ家と繋がりのある一族。

橘佳純に対して反抗的な俺を焚き付けて利用しようと思わせる作戦。

それで俺は具体的にどうしたら。

「どうもしなくていいよ。」

「種は蒔いた。」

「多分、7月どうのこうのの話も方針転換されてターゲットはお前になる。」

そのあたりは心配していません。俺に接触しに来る奴への応対です。

「お前に任せる。」

この人達はどうして簡単に俺なんかを信じてしまうのだろう。

俺はこの街の出身ではない。

南室家とは元々何の縁も無い。

名前も知らない父親。その男とその夜限りの関係を持った母親。

中途半端な出処不明のヴァンパイア。

かつてセンドゥ・ロゼがそうしたように

俺が橘佳純を利用してその地位を確立する気になったら。

的な事は微塵も考えていないようだ。

どれほど呑気なのだろう。

違うな。

この人達は俺を脅威とは思っていない。

俺が橘佳純を裏切るかもしれない。なんてことは想定内なんだ。

そうなっても俺一人どうとでも始末できると確信している。


ほぼ日替わりで誰かに指導される日常は変わらない。

当初予定されていたのは

月、水は小室絢

木、金は市野萱友維

土、日を南室綴(室道場を間借り)

だったのだが

唯一の休養日だった火曜日に滝沢伊紀の指導を受ける。

何の例えでもなく、本当に「吐き気」を催し、意識が飛びそうになる。

何度滝沢伊紀の「ここまでにしましょう」を聞き、それを拒否しだろうか。

水曜の朝はいつも辛かった。夕方小室道場に向かうまでに

学校で休養を取り、体調を整える。

それでも道場で汗を流すと体が疲れて何も考えずに眠れる。

翌日の市野萱友維からの「魔法の指導」は気分良く受けられた。

俺にとっては、「フィクション」で「ファンタジー」な魔法を教わるのは楽しかった。

「私人に教えるの苦手なんだよな。」

「本当は読んで見て聞いて考えて感じながら覚えるんだからな。」

読む?

「ちょっと来い。」

と呼ばれたのは三原家の裏庭にある「工房」と呼ばれる小屋。

中に入るのは始めてだ。

化学の実験器具の数々。まるで漫画や映画のようなフラスコやビーカーに試験管。

ホワイトボードには数式やら回路図のような。

「この書棚見てみ。特に下の方。」

絵本?

「それ全部魔法の教科書だから。」

絵本だけで数十冊。50冊くらいはあるだろうか。

棚の上に昇るほど厚くて立派な本になる。

「理緒の奴は小さい頃からそれを読み続けていたんだ。」

「確か中3でここに越してきて高校2年になる頃にはその書棚の本は全部読んだってよ。」

これ、全部?

4段ある棚に、それぞれ50冊あるとして200冊。

「一冊出してみ。」

え?はい。

言われるままそうすると奥にも本がある。単純に倍。

御厨理緒が「最強の魔女」と呼ばれる理由。

「の、一端。」

俺はここまで望んでいない。最強の魔女と張り合うつもりは無い。

居候している頃から教わっている「命令形」の魔法と

何か実践的な魔法を一つ。

「実戦向きねぇ。」

市野萱友維が俺を品定めする。

「ホント見るほどマッチ棒だな。」

一歩離れて「ニヤリ」とする。

「飛んで見るか。」


生き埋めにされるでも小指を切り落とすでもない。

師匠に見捨てられもしないので絶望もしない。

それでも飛べる?

「何それ。」

飛ぶって、飛ぶ?空を?Fly?

「何で英語。」

いやあの、この人は何を言っているのだろうと思って。

「たいていの魔女なら飛べるぞ。」

「見てろ。」

市野萱友維は手袋?を填めた。

「グローブだ。」

そして何やらブツブツ言うと

浮いた。

地面からほんの数センチだが、確かに浮いている。

「ふぅ。」

と、息を吐きながら降りる。

「お前軽そうだからちゃんと飛べるかもな。」


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