041
予定されていたのか
それとも好機と考えたからなのか。
この街にも雪が降り、学校が半日で終わったこの日
俺達の目の前に5人の男性。
「悪魔のような」奴らに雇われた連中だろう。
警戒の前に飛び掛かろうとした宮田柚を制し、
俺が相手をする。
「私も。」
いや。他にもいる可能性がある。滝沢伊紀はそれを警戒してくれ。
宮田柚は先生から離れるな。敷島楓は宮田柚を見張ってくれ。
1対5
恐怖はない。
「複数の相手」の対処は既に理解している。
「用事があるのは橘佳純だけだ。他の奴らは怪我をしたくなければ」
怪我をする前に降伏しろ。
「邪魔をするなら子供とい」
もう一度だけ言うぞ。怪我をする前に降伏しろ。
俺の脅しに二人戦意を失ったのが判った。
残り3人。
「引っ込んでろ小僧。」
大柄な男が俺の襟首を掴もうとした。
素人だ。
もしくは俺を舐めている。
「大柄な」だけの「力がある」だけの男。
俺はその腕を取り、投げ、躊躇する事なくその腕を折った。
(正確には腕の間接を外した)
その男の呻き声に、残りの二人も戦意を失った。
俺がそうしている間に橘佳純は市野萱友維に連絡を取り
彼女の指示で10分もしない内に渡良瀬葵と鏑木華奈が現れた。
「よくやった。」
いえ。すみません。一人怪我をさせて
一人走って逃げてしまいました。
三人は
話をしたいから来い。と言ったら素直についてきた。
「何だお前、魔法が使えるのか?」
市野萱友維さんに教わっています。まだ途中ですが。
橘佳純もサーラ・プナイリンナも無事だ。
滝沢伊紀の出番が無かったのは今回もただ「雇われた」だけの連中だから。
結構な額を提示されていた。と後に魔女が教えてくれた。
滝沢伊紀の元に連絡が入ったのは全てが片付いてからだった。
「意味ねーなー。」
「言い訳の言葉もありません。」
宮田柚の言葉ももっともだ。だが誰も滝沢伊紀を責めているつもりは無い。
今回のような事態に備えるために
俺やプナイリンナ王女が傍にいる。
「魔女もね。」
連絡が遅れたのは単純な理由だった。
滝沢家やその他の祈祷師達が
「悪魔のような」奴らの末端のさらに下請けの連中の動きまで
把握できるほどの人員がいない。
日常は皆がそれぞれの生活を営み、さらに全国的な大雪。
連絡があった事自体相当の労力の末だろう。
滝沢伊紀が責任を感じる必要も理由もない。
「お前すげぇな。」
「アタシ今ので納得しちゃったよ。」
宮田柚。
「ゴメンなー伊紀。アタシはちょっとお前を責めてた。」
「いえ、事実ですから。」
「アタシももうちょっと考えて行動しないとなー。」
「まったくだ。さっきもいきなり飛び掛かろうとして。」
敷島楓の言っている事も理解できるが、宮田柚はそれでいいと思う。
あとの事は敷島楓と橘佳純が何とかしてくれる。
宮田柚の行動原理のような意識。
「うわッ鳥肌立った。お前何なんだ。何でそんなにアタシの事が判る。」
「もしかしてアタシに惚れてるな?」
「いやいや誰でも判るって。」
「楓ちゃんがいなかったらどんな子になっていたやら。」
四人の男達は魔女達に連行された。
(逃げた一人も後日捕まった)
どんな手段を用いたのかは考えたくも無いが
彼らも「雇われた」だけなのだと白状したらしい。
仲介役の人物までは突き止めたが
結局そこまでだった。
「奴らだってそんなにバカじゃない。て事だな。」
とは言ってもこれでは「目的」は果たせそうにない。
「目的って?」
橘佳純を囮にして相手の事を探ろうとしていたんじゃないんですか?
「それは滝沢家の思惑だろ?」
魔女は違うと?
「その程度の事だったら態々理緒がアチコチ行ったりしないよ。」
?でもそれはロゼ家の事を調べて
「言い方が悪かったな。」
「佳純が囮になったのは滝沢家の意向だけど。」
「魔女達は理緒の個人的な感情で動いているだけ。」
個人的な感情
「佳純の安全。」
「本当は理緒がお前の代わりを務めたいんだ。」
「だけどアイツはもっと効果的にそれを知らしめる手段を取っている。」
「態々ヨーロッパに行って吸血鬼達と喧嘩になるかもしれないような状況で。」
「それでもアイツが表立って先頭に立っているのは」
「御厨理緒と魔女は橘佳純を守る。と世界中に知らしめるためだよ。」
「相手が何者だろうと関係ない。」
「態々囮にしておびき寄せる必要もない。」
「アイツはソッチの世界で脅迫しに廻ってるんだ。」




