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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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004

中学3年生の正月。

俺は綴さんに連れられ神社に行った。

橘家の関係者に初めて顔合わせする重要な日。

橘佳純はずっとソイツの傍にいた。

時折、とても親しそうにソイツの頭を撫でていた。

別にどうって事のない奴に見えた。冴えない感じだった。

中学生の俺でも勝てる。

諸々話が終わって、

ソイツが直接俺に話しかけてきた。

橘佳純を頼む。とかそんな事だったが覚えていない。

彼は中学生の俺に頭を下げた。

そして同時に、どうしてだろう

俺は「勝てない」とハッキリと理解した。

怖いのではない。だが恐怖に近い何かだ。

ソイツが顔を上げると、俺は無意識に判りましたと答えていた。

家に帰り、綴さんに聞いても要領を得なかった。

「魔女よ。多分世界最強の。」

男なのに。


橘佳純の事が知りたいなら直接聞け。

「いいのか?」

俺は橘佳純のプライベートに関与しない。

俺がコイツの正体をを知っていて、さほど警戒しないのは

既に綴さんに確認しているから。

同じクラスの狼男。

「津久田さんとこの子でしょ?伴君って言ったかな。」

知っている人?

「知り合いって程度。あの子の事は心配しなくていいわ。」

根拠は?

「この街の子だから。」

つまり俺が警戒すべきは余所者。

津久田伴は橘佳純に話しかける。橘佳純は何の抵抗も無く受け答える。

一緒にいる宮田柚と敷島楓とも同じ事をする。

それだけではない。

津久田伴は誰とでも話す。橘佳純はその内の1人でしかないようだ。

津久田伴はよく笑う。声が大きい。耳障りだな。


5月の中旬。日常の、いつもの金曜日。

道場に行ってボコボにされての帰り道。

途中、橘佳純が立ち止まった。

「綸君。」

俺に用事があるから止まったのか。

「イヤなら辞めていいよ。」

何?

それだけ言って走り去ってしまった。

帰って綴さんにその話をした。

「綸は辞めたい?」

辞めたいとは思わない。

「ワタシに言われたから仕方なく?」

仕方なくとも思っていない。そうするものなのは判るから。

「うーん。姫は、いや佳純のお姉さんはそれを止めさせたいのよね。」

「佳純もそれを聞いているから。」

「綸が義務感でそうしているのを勘付いたんじゃないかな。」

義務以外に何がある。

「ねえ綸。」

「イヤならそう言いなさい。」

「アナタが佳純の護衛を辞めたからって、南室家から追い出したりはしないから。」

この人は、俺を理解しくれてている。

でも

でもそれじゃあどうしてこの人は俺を拾ったのだろう。


土曜、日曜日は道場で自主練習と神社の掃除(祭事があれば手伝い)

いつものように橘佳純は姉の橘結と道場に現れる。

橘結は俺に気付くと笑顔で手を振ってくる。

会釈だけして逃げよう。あの人は苦手だ。

苦手なのに、呼ばれた。練習があるからと言うと

「絢ちゃん。ちょっと綸君借りるわよ。」

「おう。ホレ行ってこい。」

小室絢に背中を押されてしまう。

「ゴメンね忙しいのに。どうしても綸君に言っておきたい事があったの。」

昨日の夜、帰宅した橘佳純との会話。

「綸君を辞めさせるわけにいかないの?」

「うん?どうしたの?綸君に何かされたの?」

「何もされてないよ。どうしてもそうしないとダメなの?」

「え?ダメじゃないけど?」

「へ?」

「私は綴ちゃんから頼まれたからそうしているだけだよ。」

「なんだと?」

綴さんが?橘家の仕来りじゃないのか?

「お母さんて言いなさいよ。」

あ、いや。

橘佳純も俺と同じ疑問を抱いた。

「でもどうして。」

「さあ?綸君とトモダチになって欲しいと思ったんじゃない?」

トモダチ?俺と橘佳純が?

綴さんは何を考えている?

「って佳純ちゃんには言っておいたわ。」

え?何?え?

「綸君。佳純ちゃんと仲良くしてね。」

何?ちょっと待て。一体何を

俺がこの人を苦手なのは、この人が何でも見透かしているようだから。

過去も、現在も、未来でさえも。

橘結は嘘を吐かない。

この人は決して人を騙したりはしない。そんな事が出来ない人。

そのくせこうやって人を煙に巻く。

まるで悪戯っ子のようにそうする。


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