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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
36/112

036

朝食を済ませ、片付けが終わるとすぐに

「さてと。帰って後片付けするかっ。」

橘佳純が立ちあがる

「あ、じゃあチョットうち回って。着替え置くから。」

宮田柚は何を言っている?

「柚ちゃんチで待ってて。合流して一緒に行こう。」

敷島楓も何を言っている?

「何って佳純んトコの宴会の片付けだろう?」

そうだが。二人もするのか?

「この数年こんな感じだよねー。」

大人達が宴会中、子供達は小室家で鍋。

お昼前に戻り片付けてようやく「新年」が終わる。

判った。ちょっと待ってくれ。

ノトさんにご飯用意して水を代えてトイレを掃除して

「よしっアタシが遊んでもらっている内にとっとと済ませるんだっ。」

と、宮田柚がノトに飛び掛かり、彼女もそれに応えてジャレる。

「あーっ私もーっ。ノトーっ。」

橘佳純も加わった。

「私も手伝うよ。」

敷島楓はノトに遊んでもらわなくていいのか?

「柚ちゃんだけで充分。」

そうか。それじゃ水を変えてくれ。俺はトイレ掃除を済ませる。

「あいよ。」

ん?ノトと遊ぶのが宮田柚だけで充分なのか?

それとも敷島楓が猫の相手をするのは宮田柚だけで充分なのか?


そして俺達が橘家に着くと

そこには一人の少女が橘佳純の帰りを待っていた。

ただの参拝者ではないようだ。

橘の父親と、小室母。そして三原紹実がその少女の話を聞いていた。

「本当は結に会いに来たんだってさ。」

「うん?結姉に?」

三原紹実が少女を紹介する。

少女は立ち上がり、橘佳純に頭を下げた。

「私を人間にしてください。」

「断るっ。」

即答だった。少女の語尾が少し聞こえないくらい速かった。

唖然とする少女。

「そんな。この神社に来れば何とかなるって。せめて話だけでも。」

「ダメだ。聞いたら同情するかもしれない。」

少女は「人ならざる者」。

母親はそれを知っている。

その血は薄まり、母親は殆ど自覚をしなかった。

だが少女にはその「症状」が強かった。

母は喜び「特別なのよ」としか言ってくれない。

自分は普通がいい。特別じゃなくていい。

化物扱いされ、差別され、イジメを受ける。

「イヤ。ダメだ。逃げるな。」

「私がどれだけ辛いかなんて判らないから。」

「判る。」

「全く同じ経験をしている人を知っている。」

「その人には理解者もいなかった。たった一人で戦った。」

「あなたには母親がいる。」

「あなたの望みは、私にお母さんとの繋がりを切れと言っているのよ。」

少女はとうとう泣き出してしまった。

橘佳純は少女の手を取って言った。

「私もいる。」

「私が貴女の味方になる。だから逃げるな。」

少女が「継ぐ者」でなければ繋がる事のなかった糸。

「おうっ。」

宮田柚がその手を重ねた。

「アタシも味方になってやる。イジメられたら呼べ。」

「いつでも何処にでも駆けつけてやる。」

「その相手が二度と立てないようにボコボコにしてやる。」

「ダメだろそんな事。」

敷島楓も手を乗せる。

「私がその相手を社会的に抹殺してあげる。」

「どっちも許されませんよ。」

滝沢伊紀も加わる。

「トモダチ5人できたぞ。一人じゃないぞ。」

5人?

「お前も何か言え。」

俺が含まれているのか。

橘佳純の友人なら俺の友人だ。

「判るでしょ。この3人は皆あなたと同じ。」

少女は俺達を見まわし頷く。

「それにそこの姉ちゃんは超野蛮な魔女だし。」

「失礼なっ。」

「こんな素敵すぎる魔女他にいないっつーの。」

三原紹実は少女の前に立ち、頭に手を乗せる。

「お前は自分が傷き、その痛みを知っている。」

「だからお前はお前以外にその痛みを与えない。」

「お前にはそれが出来る力もあるのにそうしなかった。」

「私はお前を尊敬する。だから少しだけ魔法をかけてやろう。」

三原紹実がブツブツ言って手を離す。

「もうお前は自分を嫌いになんかならない。」

そんな魔法があるのだろうか。俺には判らない。

「綸。」

え?はい。

「コイツなんてヴァンパイアだぞ。」

「ヴァンパイア。」

少女は俺を見詰める。少女の鼓動が速まった。

恐怖。ではないようだが。好奇心か?

「一緒に写真撮ってやれよ。」

「あーイイなそれ。アタシも入れろ。」

「うん。私も。」

「待て待て。まずはツーショットだ。」

少女を中心に記念撮影が行われた。

「いいか?本当に困ったら呼べよ?」

「うん。いつでも駆けつけるよ。」

「よし。じゃあ素敵すぎる魔女のお姉様が送ってやる。」

何で俺と一緒の写真なんか撮ったのだろう。

「御守りじゃないかな。」

「あ、私もそう思った。」

御守り?俺との写真にどんな後利益がある?ある?


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