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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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何が目的なのか判らないが

この神社に驚くほどの参拝客が訪れる。

しかもその全てが「この街の住人以外」。

この街の者は3日にならないと現れないらしい。

大晦日の夜。年明けまでにはまだ時間があるのに

「右側通行」と看板を掲げないと混乱してしまいそうな行列。

やがて年が明けて、朝、昼、夕となってもその列は途切れない。

「綸君少し休んで。替わるよ。」

いや小室母。俺なら問題ない。

「問題ないってアナタ昨日の昼から寝てないでしょ。」

まだ30時間程度だ。2,3日眠らなくても問題ない。

俺はただ立っているだけだ。疲れもしていない。

俺の目には貴女の方がよほど疲れているように見える。

「まったく。紹実ちゃんに関ると皆変な子になるわね。」

変な事を言ったつもりは

「ほめたのよ。」

そうか。ありがとうございます。

「ちゃんとお礼は言えるのね。」

南室家の教えの一つです。

「そうだったわね。それじゃお言葉に甘えて私は少し休むわ。」

「綸君も人の流れを見て行列がなくなったら上がって休みなさい。」

判りました。

「あ、ねえ。私にもお姉様って付けてよ。」

判りましたお姉様。

1月1日もそろそろ終わろうとする時刻、ようやく行列はなくなった。

それでも疎らに参拝客は訪れる。

拝殿と社務所は24時間体制交代勤務のようだ。

俺に出来る事があれば手伝うが。

「今度こそ少し休みなさい。」

判りましたお姉様。

「ぶはっ。お姉様って何だよっ。」

「いーでしょ。絢も付けてもらったら?」

「やめろイイ歳してっ。」

俺はどうしたら

「呼ぶなっ。」

「呼んで。」

それでは小室絢さんがいない場所では呼ぶようにしましょう。

「ったく好きにしろっ。」

「結構気を遣うのね。感心するけど心配だわ。」

心配?

「綸君ちゃんと我儘言える?」

「欲しいものは欲しいって言える?」

「昨日も気を遣って言ったんじゃない?」

いや。昨日も本心だ。

気遣っているのは事実だが俺に問題がある場合は

事が大きくなる前に報告する。

欲しいものがどうのと言うが

今は必要なものはいつも目の前にある。

今回の件もそうだ。食事も飲み物も俺が欲しいと思うタイミングで

いつも誰かが用意してくれている。これ以上欲しいものなどない。

「今は、か。」

「綴がお前を気にいるわけだよ。」

「ホントよねー。息子にしたいって聞いた時は驚いたけどね。」

「だよなー。6つか7つしか違わないのに息子ってな。」

「でも今なら判る気がするわ。」

「うん。」

小室親子は何を納得しているのだろうか。


俺がつい笑ってしまったのは

1月2日、少々遅めの朝食の後境内に出ると

神巫女の他に

祈祷師と、猫娘と、飛縁魔と、吸血鬼が巫女装束を纏い

焚火にあたりながら何とも長閑な雰囲気を醸し出していたから。

「ちがっ。これは佳純様がっ。佳純様が着ろとおっしゃるから。」

判っている滝沢伊紀。

「何言ってやがる。鏡見ながらニヤニヤしてたの知ってるぞ。」

「ひぃっ。」

「綸君お参りしたの?」

いや。まだだ。

「じゃ皆でしましょう。」

両脇に巫女が並ぶ初詣。

おかしな街だな。

「おかしなとは失礼な。佳純はその親分だぞ。」

「宮田様こそ。佳純様を親分呼ばわりとは失礼な。」

「いや。誰が何と言おうと佳純はオカシな奴らの親分だ。」

「柚ちゃんが言うと説得力あるな。」

「そうだろって、どんな意味だこの野郎。」

橘佳純には親分としての重圧はないのか?

「親分て言うなっ。」

「柚ちゃんが変こというから綸君まで。」

「今年からお前は親分だ。」

「今度親分呼ばわりしたら口きかないから。」

「小学生かよ。」

「まあ私がこの神社継いだわけじゃないからプレッシャーなんて無いよ。」

「今回だってただの代理だからねー。」

「あー、だからそっちの意味でのプレッシャーはあったかな。」

橘結の代役。

「そ、でも皆が助けてくれたから。軽くなったよ。」

「やめろよー照れるぜぇ。」

「柚ちゃんは殆ど寝てたじゃないっ。」

「楓こそお節食い尽くして何を言うかっ。」

「綸なんて黒豆と昆布巻きしか食べてないんだぞ。」

「うっゴメンなさい。」

気にするな。どちらも美味しかった。


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