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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
31/112

031

「お姉様って呼んでるの?」

呼んではいない。返事の時にそう言えと言われただけだ。

「呼んでるじゃなくて呼ばされてるんだろ。」

「んー、じゃあ私の事佐代ちゃんて呼んでって言ったら呼ぶ?」

「うわっ。じゃあ私の事は楓ちゃんて呼べよっ。」

いや、敬称を付けろと言うなら「さん」にする。

「佳純様の事は佳純様とお呼びくださいと何度も申している筈ですが。」

橘佳純がそれを望んでいない。

「そうなんですか?」

「そうだよ。イヤだよトモダチから佳純様なんて呼ばれるの。」

「アタシは柚様って呼んでもらいたい。呼んでもいいぞ?呼ばれてやるぞ?」

「宮田様の冗談はさておき、それでは私が佳純様とお呼びするのも。」

「本当はイヤだよ。でも伊紀の立場とかも判ってるから。」

橘結がトモダチに「姫」と呼ばれている事を享受しているるように。

「宮田様はそれで佳純様を呼び捨てにするのですか?」

「違うよ?姫って呼ばせないから仕方なくだよ。」

「もっとイヤよ。姫は結姉だけで充分。」

「綸はどうしてフルネームで呼ぶんだ?」

宮田だけでは杏さんも桃さんもいるだろう。

他の皆にも同姓がいるかもしれない。

「でもお前年上年下関係なくフルネーム呼び捨てはちょっとアレだぞ?」

あれ?

「失礼な感じがしますね。」

たが俺にはその人が年上か年下なのか

そうかまず年齢を聞けばいいのか。

「ダメよそんな事しちゃ。」

「女性にはそれこそ失礼ですよ。」

一体どろうしろと?

「全員にさん付けたらよろしいだけです。」

そうか。滝沢伊紀は賢いな。

「あ、でも私は呼び捨てでいいよ。」

判った。

「私も別に気にしない。」

「アタシも。」

「私も個人的には全く意に介しておりません。」

判った。

橘佳純。滝沢伊紀。箱田佐代。敷島楓。宮田柚。

これからこの5人以外には全員「さん」を付けて呼ぶ。

「伴はいいんじゃ,ね?」

「ああ、アイツは呼び捨てでいい。」

そうなのか?

「そうよ。トモダチでしょ。」

そうだったな。

「忘れてやるなよ。」


作業は賑やかだったが「喧しい」とは感じなかった。

心地よいとは言わないが不快にも思わない。

この連中は俺を「他の誰とも違わない」目で見る。

箱田佐代も、少々遠いながらも敷島楓も吸血鬼だからそれは理解できる。

猫娘の宮田柚も立場的には似たような存在だ。

だが橘佳純と滝沢伊紀は

明らかに「異なる側」に立っている。

特に滝沢伊紀は俺のような存在と敵対しているのではないか。

「何を仰りたいのかわかります。」

「ですから簡単に説明します。」

滝沢伊紀は言葉を選びつつ教えてくれた。

「例えば今回私達が相手にしているのは悪魔のような人間です。」

「人種や種族によってのみ対象が決まるのではありません。」

「その行為によってのみ私共は対象を決めるのです。」

歴史や過去の行為による決定はしないと?

「いえ。残念ながらそうは言い切れません。」

「綸様やプナイリンナ王女には申し上げにく事実ですが。」

「脅威の対象と成り得る存在については監視の対象となります。」

滝沢伊紀。無理に言わなくてもいい。

俺は気にしていない。

「あ、いえ。その。良い機会ですので真意をお話します。」

「可能性の問題なのです。」

「仮に敵対した場合、脅威となる存在なのです。」

判っている。ヴァンパイアが普通の人間と敵対する事になれば

それは普通の人間に対処しきれる問題ではない。

「えーっと。その。少々異なります。」

「ヴァンパイアと呼ばれる方にもその出生は様々です。」

「例えばプナイリンナ家は、脅威となった場合最大級の対処がとられますが。」

「驚異となる可能性そのものはとても低い状態です。」

個人やその団体の資質による。と?

「そうです。失礼な話ですがランク付けがなされております。」

「例えば魔女の方々。」

「つい数年前まではとても不確定な対象でした。」

「ですが御厨理緒様の出現により、脅威の可能性はとても低くなったのです。」

だからと言って監視を止めるわけにはいかない。

「その通りです。」

なるほど。でもサーラ・プナイリンナであったり、御厨理緒であったり

その人達が率いていたり所属している団体はともかく

俺のようなイレギュラーはどうなる?

「個人の場合は殆ど対象外となっております。」

取るに足らない存在。と言うべきか。

いや、一般人と同じ扱いと捉えるべきだろうな。


俺はこの時、少々捻くれた想像をした。

この街は、もしかしたら俺のような存在や

「継ぐ者」達を「より監視、管理しやすくするため」に

何者かの意志により、意図的に作られたのかもしれない。

橘家は、その何者かにより偶像化されただけの存在かもしれない。

我ながら恐ろしくなってこの妄想はこれで切り捨てた。


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