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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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002

GW。4月五穀豊穣 5月端午の節句と行事が重なる。

それ以外にも観光客が多く訪れるらしく、俺はその手伝いに狩り出される。

「綸。もうちょっと愛想のいい顔しろよ。」

無茶な注文をするのは小室道場の次期当主、小室絢(コムロ アヤ)

この人は初対面から「馴れ馴れしく」俺に接した。

「綴の子なんて世界一幸せで同情するよ。」

南室綴に引き取られた俺が二番目に紹介された人。

南室綴は俺を「私の息子にするの」と紹介した。

正直、この人は何を言っているのだろう。としか思えなかった。

小室絢は俺に「公園で人手欲しがっていたから助けてやれ」と送り出した。

神社の長い石段の途中から聞こえてくる祭り準備の賑わい。

助けって誰の。何の。

とりあえず近くの露天で尋ねると

「そこに射的があるだろ?そこのオッサンに聞いてごらん。」

と言われると同時に

「あれ?もしかして君が南室さんのとこの子?」

はい。

「そうか。もう高校生か。うんうん。頑張ってな。」

この人はどの程度俺を知っている?

射的に行くと何ともこの場に似合わない高そうな白いスーツに身を包んだ男性が準備をしていた。

「おう。話は聞いてる。早速だがそこの焼きそばの屋台の手伝い頼む。」

「1人風邪で寝込んで人手が足りないんだ。」

わかりました。

「風邪?違うよ。遊び行ってんだよっ。」

そう言って迎えたのは宮田柚の姉、宮田桃だった。

「まったくアイツら。」

ブツブツ言っているが何の事やら。

それで何をすれば

「アタシの隣に立って真似してみろ。」

と、いきなり焼きそば作りをやらされた。

肉を炒めて、キャベツを炒めて、端に寄せて、麺を炒めて

「麺も具材もをあらかじめ蒸しておくのがコツだ。」

具と絡めて、ソースを掛けて

注意するのはソースの量くらいか。

それにしてもいきなり売り物を作らされるとかいいのか?

「その下にパックがあるから。」

「お前中々勘がイイな。料理とかするんか?」

少し。

施設では基本自炊。

南室の実家では「何があっても生きられる」ような手解きの一環として料理を教わった。

今の家でも綴さんは俺に料理をさせようとする。

「料理はしとけ。モテるぞ。」

そんな話をしながらも匂いに釣られたのか

まだ午前中なのにお客が数名。

揃いも揃って馴染みらしい。

と、小さい子を7~8人引き連れた女性。何者だこの人。

「はい。せーの。」と言うと子供達が一斉に

「くーだーさーいーなー。」

「おうっいらっしゃい。」

「杏さんも柚ちゃんもいないの?何やってるのあの2人。」

「あれ?君誰。桃ちゃんの弟じゃないわっ。」

「気付くの遅せぇっ。」

「もしかして綴さんとこの?」

はい。

自己紹介をする前に

「綸。そっちに小さいパックあるから人数分取ってくれ。」

はい。

通常の半分の量を詰めると宮田桃は店の前に回り込み

1人ずつ目線を合わせるよにしゃがんで渡している。

「まさかこんなに子供の相手が似合うとは思わなかったよ。」

「桃ちゃんこそ馴染みすぎでしょ。」

「実習っていつまで?」

「講義が無い日はなるべく出られるようにしてもらったの。」

「何だもう就職先決まってるのかよ。」

「そうなるように今からこの子達を虜にするのよ。」

「相変わらずだな。」

結局マトモな挨拶も出来ないまま彼女は子供達を引き連れ縁日を回る。

「昼から混むから先に食事してこい。」

はい。300円ですよね。

「え?この焼きそば買うつもり?」

ダメなんですか?

「ダメだよ。奢らせろよ。」

それでは有難く。

お昼前から作り置きが間に合わなくなる。

鉄板の湯気。撥ねる油。

なるほどタオルを巻いているのは汗が落ちないようになのか。

15時を過ぎた頃ようやく客足が落ち着く。

麺も野菜もキレイに無くなっていた。

「それパックに詰めたら終わっていいぞ。」

片付けは?

「明日もあるからな。今日は掃除して終わり。あとはアタシ1人で出来るよ。」

そうですか。

「上行って佳純の様子とか見てきたら。」

あ、いや。

「柚から聞いたよ。」

一緒にいるけど一緒にいない。

「学校でもそうなのか?あ、いやそれより、佳純は学校でどうなんだ?」

どうって。

「アイツ、トモダチとかいるのか?」

「他のクラスメイトともちゃんと話をしてるか?」

さあ。ずっと見張っているわけではありませんから。

「まあアタシ何か、いやアタシが口を挟めるような事じゃないのは判っているんだけどな。」

「あ、お前トモダチになってやれよ。」

この人は何を言っている。


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