表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
17/112

017

3日後の夕方。

この3日、登下校は1人。学校でもなるべく1人で過ごしていた。

津久田伴も箱田佐代もあれから何も言わない。

きっと橘佳純が「事態の収束」を上手いこと説明してくれたのだろう。

その橘佳純も俺を放っておいてくれる。

有難い。

だがサーラ・プナイリンナだけが何かと俺に話しかける。

同族とでも思ってくれているのだろうか。

「違うわよ。いえ同族なのはそうだけど。」

それじゃあどうして。貴女の見張るべき対象は橘佳純。

「見張っているように感じた?ゴメンなさい。そんなつもりはないのよ。」

彼女は微笑んで言った。

「貴方キズナに、ユイの夫に似ているのよ。」

結婚はしていない筈だ。橘結の恋人。

何度か会った事はあるがとても似ているとは思えない。

「姿形じゃなくて、その正体と言うか。」

正体?

「あれ?私言葉間違ってる?中の人?って言うの?」

何ですかそれ。

「女の子達に囲まれているくせにいつも1人でいたの。」

「勝手に1人で悩んで。勝手に1人で背負い込んで。」

「いつも1人で傷ついていた。」

「年長者として一言だけ。」

なんでしょう。

「死なない程度にね。」


冗談か。笑えばイイのか。

ヴァンパイア相手にヴァンパイアが「死ぬな」。

死なない程度

俺の死なない程度ってどの程度なのだろうか。

傷の治りが速い程度の認識しか無かったが実際どうなのだろうか。

生憎自傷趣味は無いので確かめようが無い。

ただの冗談。

あの王女様はきっとそう言うだろう。

「怖っ。お前の笑顔怖いよ。」

何だ。何で俺は津久田伴と一緒に下校している。

「怖いって失礼な。綸君も怒っていいんじゃない。」

橘佳純まで。

(つまり滝沢伊紀もいる)

「いや怖いって。何か企んでるだろ。」

「企んでるって言うか思い出し笑いじゃん。イヤラシイ。」

敷島楓も。

「あーあの王女様の事だろ。うちの杏姉ちゃんとも親友なんだぜ。」

宮田柚。

「まあ確かにキレイだよなぁ。」

「伴までニヤニしちゃってこれだから男子は。」

箱田佐代。

「綸に言え。こいつ普段笑わないから余計怖いつーの。」

津久田伴のコレはただの冗談だ。本心に違いないがただの冗談だ。

それでも

忘れたいあの場面が思い浮かぶ。

俺を産んだ女性のあの顔。

俺が自分を知ったあの日、特別な存在なのだと知り、笑い、母親に捨てられた。

俺はあの日から笑わなくなったんだ。

「私は綸君の笑った顔好きだよ。」

橘佳純。

「おう。アタシも好きだ。」

「私も。」

「まあ悪くは無いわね。」

「だからもっと笑え。」

頬を引っ張るな。


橘佳純の危機は無くなったのだと思っていた。

先日の一件で俺は勝手に事が済んだと勘違いしていた。

フィンランドから天使のような吸血鬼の王女様が現れたり

滝沢伊紀が未だに橘家に留まっている事も

それが「何も終わっていない」と証明しているのに

俺は自分の願望からか、物語は終わったのだと勝手に決めていた。

秋分の日が間近なその日も手伝いに駆り出されていた。

屋台の設営準備には宮田柚と敷島楓もいる。

橘佳純が差し入れを持ってくる。

滝沢伊紀もこのお祭りの雰囲気を楽しもうとしているようだ。

それは何とも穏やかな一コマ。

暑さの残る夕方。

日も暮れ、それぞれが帰路に。

一人になった俺の目の前に現れたのは

あの日橘佳純を狙った男。俺の腕を極めたあの男。

悪魔のような。

「待てっ。ちょっと待て。俺は奴らの仲間じゃないぞ。」

何?

彼は慌て、そして気さくに笑い説明した。

「俺は奴らに雇われただけだ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ