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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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「ロマニア(ルーマニア)ではプレゼント交換するですよ。お花もチョコも。」

「家族恋人トモダチ。お食事に行くの人もいるです」

「ロマニアの人チョコ好きだです。お祭りもあるだですよ。」

「駅の中でチョコ売ってます。チョコだけ売ってるお店あるだです。」

「ROM酷い事しました。パッケージUSAにした。」

「おおうっニコラがまた興奮してるぞ。」

そんなわけでニコラに何か用意したいのですが

「やめとけ」

しかしニコラはホワイトデーの前に留学期間が終わる。

「だとしてもバレンタインデー当日はやめろ。」

何か理由でも?

「黒板が吹っ飛ぶ。」

市野萱友維は何を言っている。

「その昔理緒の奴が当日に練り切りを作って持ってきたら大惨事になったんだ。」

バレンタインデーに練り切り?大惨事?

「黒板ふっ飛ばしたのはお前が原因だろうが。」

「そもそも友維に聞くなよ。こいつ料理ダメなの知っているだろ。」

「失礼な。だがその通り。私は食べる専門だ。って姉ちゃんもそうだろうがよ。」

だからこそ市販の美味しい何かをと。

「カナちゃんか、いや絢さんに聞いてみ。」

小室絢に?

「あの人あれでスゥイーツ大好き怪獣だから。」

なんですかそれ。

「お前は甘い物平気なんか?」

問題ありません。

土曜日に稽古ついでに聞いてみるか。

「ナニソレ。お前ニコラとそーゆー関係なの?」

はい?

「バレンタインデーに贈り物するって事は愛の告白って事じゃないのかよ。」

いや違います。

ニコラには何かと世話になった。

留学期間が終わってしまうのでお礼です。

「ツマンネー奴。」

小室絢は何を言っている。

「まあいいや。何贈るんだ?あ、それを相談に来たのか。」

そうです。

「そっかーバレンタインなー。」

「キズナはマカロン作ってきたな。」

マカロン手作りとか何者なんだ。

「お前も料理できるんだよな?」

少し。

「じゃあクッキー焼いたら。私も子供達に配る分あるし。」

「数があるから手伝ってくれ。」

判りました。

たかがクッキーと高をくくっていた。

甘いのはクッキーだけでいい。

「バレンタインの贈り物なんだからチョコは当然使う。」

何だか面倒な事を言い出したな。やはり市販のお勧めを

「黙れ。作れ。」

薄力粉とココアパウダーにチョコと。バターと砂糖ってこんなに使うのか。

ホワイトチョコで顔を作る?

クッキーにチョコチップ混ぜて焼く程度で

「子供達に配る用だって言ってるだろ。」

つまりこの野菜は栄養バランス考えてですか?

「最初は色付け目的で使ってみたんだよ。」

「そしたら食べた子の親から連絡あってさ。」

「うちの子が人参食べただとかほうれん草食べただとか。」

成型と言われても

「見本作ってやるから。ホラ。」

「アレンジして好きなの作ってみ。」

「アイシングも教えてやる。コルネの作り方も。」

手早いな。巧いな。何なんだこの女子力。無敵か。

市販レベルのクッキーとか望んでいないのだが。

「ラッピングもちゃんとしろよ。」

ポリ袋に入れて紙袋に入れてで済まそうかと考えているのを察したようだ。


「日本の父母にはパパナシ作りますだです。」

「トモダチにはママのチョコレートケーキ作りたいですが。」

ニコラは日本での材料の入手が可能かと

ケーキを作るにはホームステイ先の台所では足りない物がある。と。

とても深刻に相談した。

ケーキの材料に詳しく、道具も持ち合わせている人。

それなら心当たりがある。

鏑木華奈にはクリスマスケースを依頼する際に確認済みだ。

ルーマニア(全国的か一部の地方なのかは知らないが)では

農業が盛んな事もあり、各家庭には当たり前のように「受け継がれるレシピ」があるそうだ。

その中には当然デザートも含まれる。

ニコラは幼い頃から母から多くのレシピを受け継いでいる。

鏑木華奈は協力する代償としてそのレシピの数点(本人は「1つ2つで良いから」と言った)の公開を求めた。

「ワタシの知っているお菓子全部教えますですよ。」

両者の利益がそれぞれ満たされ交渉成立。

ニコラは連日鏑木家を訪れそれぞれの約束を果たす。

「フランス来たら連絡するだですよ。ワタシの国も案内するです。」

「フランスに負けない美味しいお菓子たくさんあるですよ。」

クールで澄ました印象しか無かったが

「甘い物」の事になると人が変わったように熱くなる。

もうすぐ留学期間が終わるこんな時期になってようやく気付いた。

俺はトモダチの事を何も知らない。

知ろうともしなかった。興味を持たなかった。

俺は目の前の相手との「対話」の瞬間だけの関係を築いていた。

それで構わないと思っていた。

余計な情報は余計な感情の要因になる。

最低限で最小限の情報こそが物事を素早く効率的に判断する材料となる。

もしかしたらそれは誤りだったのかも知れない。

俺が放課後クラスメイトの誰とも付き合わずにいる中で

ニコラ達は「トモダチ」としてその場所や時間を共有していた。

互いが互いを知り、理解を深め、

その人にとって何が重要なのかを判断する。

俺はいつもその場限りの思いつきでそうしていたんだ。


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