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1月5日。
帰省していた者、渡欧していた者達が帰宅する。
三原紹実と市野萱友維が新年の挨拶とノトを預けた礼に橘家へ赴く。
それでどうして俺が三原宅に呼び出される。
「荷物運び手伝ってよ。」
何ですかこの箱。
「車に積んでくれ。もう集まってるって。」
集まる?
橘家には綴さんと小室絢が呼び出されている。
魔女達の年越しはチェコで行われた。
御厨理緒の親友である魔女のグレタは彼の姉妹、
三原紹実と市野萱友維姉妹を誘い、
「よろしければご家族もご一緒に。」
と、オランダとベルギーに滞在していたそれぞれの身内を呼び寄せた。
するとそれを聞きつけた他の魔女が
「今回の魔女の年越しはチェコで行われる」
と勘違いしたのか、魔女が魔女を誘い気付くととても大きな集会になった。
(勘違いなどではなく、碓氷薫が意図的にその情報を流したとこっそり教えてくれた)
御厨理緒は、今回の「自身の勝手」で始めた喧嘩が治まった報告の機会とし
「罰として」出席させたヴァレンティナ・ルナプリアを魔女達に紹介した。
そして魔女達はティナに今後の協力を約束したのだった。
「凄いだろ私の弟。」
「何だよ。自慢したくて呼び出したのかよ。」
「まあまあそういきり立つな。」
「綸。さっきの箱持ってきて。」
持って来いって。あれ全部ですか?
「魔法使えよもう。友維。」
「何だよもう。何のために呼んだか判らん。」
無闇に使うなと言っておいて何なんだ。
俺が1つ。市野萱友維は結界を使用して2つの木箱。
「何で魔法使わないの。」
数学はあまり得意ではないので。
「数学と魔法って何か関係あるの?」
空間に仕切りを付けるのに座標を指定して三次元関数で
「レクチャーは後でゆっくりしてくれ。そこ置いて。」
「何なの?」
「お土産だよ。」
みかん箱より二回りほど大きな木箱3つ
「殆どは綸。お前にだ。」
はい?
誰がどう吹いて回ったのか知らないが
今回の騒ぎの件に決着を付けたのは
日本の魔女、リン・ナムロ(ヴァンパイア)。
「プリンセスを守った英雄だってよ。」
「残念ながら今回のプリンセスは佳純だぞ結。」
「残念て何よ。」
「そこじゃ無いっ。私がプリンセスって何。」
「何って王子様のお嫁さんだからプリンセスだろ。」
「ちょっと何言ってるか判らない。」
「お前は私と友維の義理の妹て意味。」
「ええっ佳純ちゃんいつ?いつそうなったの?何で言わないの。」
「ちょっ。結姉落ち着けっ。私は何も知らないっ。」
「知らなくても魔女達はもうそう思ってるよ。」
「なんだと。」
当たり前だろ。
俺の女に手を出すなって喧嘩売りまくっていたの知らないわけじゃあるまい。
「「当たり前だろ」とか涼しい顔でキメてんじゃねぇっ。」
何を今更。
「だよなー。まんざらでも無いくせによー。」
「いやそりゃまあそのー。」
「チッ。」
舌打ちしたのは誰なのか触れるのは止めよう。
木箱の中には「いかにも」な魔女の装束やら
何故か大量のにんにくが入っている。
「それがさあ。綸がヴァンパイアなの話しててさ。」
誰かが「それじゃあにんにくと十字架は避けよう」と言い出す。
それを聞いた市野萱友維が「アイツはどっちも平気だよ。」と答える。
それが何故か「リン・ナムロの好物はにんにくだ」とすり替わった。
魔女の魔法道具をいただいても置き場所が
「理緒の工房で預かるよ。」
よろしいのですか?
「よろしいも何もアイツがそうしたらどうかって言ってた。」
「紹実さんもその方が嬉しいでしょ。て言われたのを何故隠す。」
「黙ってろっ。」
俺としてもそうしていただけると助かります。
「お前、覚悟した方がいいぞ。」
何の?
「お前の存在がちょっとヤバイくらい崇められてる。」
何の話ですか。
「理緒の代役として活躍したのが1つ。」
「プナイリンナ王女がお前の命令に従って」
命令って。お願いをしただけですよ。
「待て待て。続きがある。」
「プナイリンナの王女様は綸の振る舞いに相応の礼を返すって息巻いている。」
「てとこまでがワンセット。」
脅迫じゃないか。
命令云々は王女自身が言い出したに違いない。
あの人は俺に何をさせたいんだ。
綴さんを見ると笑いだした。
「止めて。そんな捨てられた子犬みたいな目でワタシを見ないで。」
俺はこれからどうなるのだろう。




