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記憶の音

作者: タマネギ

地下鉄の駅のホームで、

親子を見かけた。

若い母親と小さな男の子が、

出口に向かって歩いてゆく。


キュッ、キュッ、キュッ、キュッ。


男の子が歩く度に音が鳴っていた。

懐かしい、もう長いこと

目にしていない、

ピヨピヨサンダルが見えた。


男の子はその音を、

誇らしげに鳴らして歩いていた。

今でも、今でもあったんだ。

ふと、幼い日のことを思い出す。


初詣だったろうか。

神社に向かって、靴を鳴らした。

境内で鳩を追いかけては、

キュッ、キュッの音で

逃げられていた気がする。


あのとき、母は笑ったろうか。


ピヨピヨザンダルは、

時代が進む度に、うるさがられた。

その音で眠れない人もいた。

何年も前に作られなくなったと

何かで読んだことがある。


位置を示す装置が普及して、

正確に子供の居場所がわかる今、

運動会がうるさいと叱られる今、

キュッ、キュッの音は、

記憶でしかいらなくなった。


ライブ帰り、親子の背中を見ながら、

音のしない靴で、電車に乗った。

当たり障りなく、暮らさなきゃ、

静かな自分で、動かなきゃ、

明日もまた、心を語るだけなら。

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